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発達障害の原因。17万人以上のルーマニア孤児から学べること

time 2017/05/16

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発達障害の原因。17万人以上のルーマニア孤児から学べること

発達障害については、いくつかの遺伝子やその他、環境など多くの要因によるものと考えられています。
その要因となるかもしれない、幼い頃の心理社会的な関係の不足は多くの関心を集めるものです。

心理社会的な不足というのは、親や介護者からの刺激や関心が欠けているということです。
それは特に施設で育てられた子どもたちの間ではめずらしいものではありません。
ルーマニアで幼児のころに施設で育てられた子どもたちの心理社会的な不足についての研究がされています。

これらの孤児たちは、たくさんのベビーベットが並べられた大きな白い部屋で過ごし、食事を与えられて育ちました。
食事を与えられる他にケアはありませんでした。

チャウシェスク独裁政権が1989年12月が崩壊すると、アメリカやヨーロッパのジャーナリストがルーマニアに入って、ルーマニアの国営施設に住む17万人以上の子どもたちの厳しい状況を伝えはじめました。
これらの孤児の多くは、幼いうちに養子として引きとられて行きました。

しかし、これらの養子縁組の子の10%は、コミュニケーションの困難と常同行動をかかえていました。
これらは、「疑似自閉症」と呼ばれることもあります。

これらの子どもの特徴は、幼いころの社会的な経験の欠如によるものだと考えられています。
経験は、脳が発達していくのを助けるものです。
経験がなければ、脳の発達がうまくいかない可能性があります。

ルーマニアの孤児院の子どもたちが発達障害のような症状を見せるに至ったプロセスは、発達障害の子どもたちのものとは異なる可能性が高いものです。

しかし、幼児のころに社会的な経験がなかった子どもたちが、発達障害の特徴的な症状をもつことを理解するのは、発達障害の症状を緩和する方法の役にたつはずです。
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2つの研究が早期の心理社会的な不足と発達障害との関連について取り上げています。

1990年代初めに始められた、イギリス・ルーマニア養子縁組調査では、イギリスの家庭に養子縁組された165人の2歳未満のルーマニアの孤児たちの発達を追跡しました。
生後6ヶ月を過ぎた子どもの約10%が発達障害だと診断をされていました。

別の研究、ブカレスト早期療育プロジェクトでは、ルーマニアの孤児、136人について乳幼児期から青年期までを追跡調査しました。
調査の開始時に、生後6ヶ月から30ヶ月の子どもたちの半分は、質の高い療育プログラムを受けることができました。
しかしその療育プログラムを受けたか否かにかかわらず、5%の子どもたちが発達障害とされる状況でした。

どちらの研究でも、対象となった孤児たちは、幼児期に経験と刺激を受ける機会が奪われていました。
その子どもたちは、そばのベッドにいる他の赤ちゃんの他に人を見たり、声を聞くことはありませんでした。
誰も話しかけたり、遊んだりしません、泣くことに反応をすることもありません。

外的な刺激がない幼児は、自分で行う刺激に頼るようになります。
自己刺激の一般的なものは、手をひらひらさせたり、揺らしたりする反復的な行動です。

ブカレスト早期療育プロジェクトの研究では、発達障害とは診断されていなくても、60%以上の子どもたちにこの行動が見られました。

乳児期から2歳前までに十分なケアをしてくれる家庭への養子となることは、5歳までの反復行動の劇的な減少につながっていました。
養子になることは、この子どもたちに欠けていた早い段階での社会的な相互作用、感覚刺激なのです。

このような症状の改善は、反復的な行動を起こさせる脳の回路が、特定の発達期間内に再度組み変わることを示しています。
早い段階での療育は、発達障害のこの特徴を改善するのに、特に有効と考えられます。

これとは対照的に、コミュニケーションの困難は子どもが養子になって青年期を迎えても、改善されませんでした。
分別のない社会的な行動を行います。
例えば、孤児の多くが知らない人を抱きしめたり、飛びついたりします。
人との関係において困難をかかえます。

2歳を前に孤児院を離れた子どもたちは、もっと後に離れた子どもやずっと施設に残っていた子どもたちよりも、微妙な社会的な困難を抱える傾向がありました。

いくつかの困難が残っているという事実は、社会的および感情的な面での発達において重要な時期があることを示唆しています。
子どもたちが健全な発達をしていくのには刺激が必要です。それを受けることができなかった場合には、良くなることがありません。
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ブカレスト早期療育プロジェクトの研究に参加した子どもたちの多くは、現在10代です。

2歳になる前に養子になったかどうかにかかわらず、永続的な社会的困難を抱えています。
友だちとやりとりをしたり、遊びへの招待にこたえるなどが困難です。

こういった子どもたちの先生は、他の子どもに比べて発達が遅れていると評価をします。
この長く続く困難を抱えるということは、社会的な行動に関わる脳の回路が生まれてから2年間の間に作られて、それを過ぎると変えるのが簡単ではないという考えを支持するものとなります。

ルーマニアの孤児たちに会った研究者のほとんどは、彼らの状態は通常の発達障害とは異なると考えています。
そのために、これらの孤児たちの症状に関わるメカニズムと、発達障害のメカニズムと同じであるかは明らかではありません。

それでも、これらの子供たちから学ぶことができる教訓があります。
心理社会的な不足は、子供たちを発達障害と同じような症状にさせることがあります。
しかし、この孤児たちの90%は発達障害のような症状を見せていません。

その理由はわかっていませんが、おそらく遺伝的なもので、はねのけていると考えられます。

孤児院で育った子どもの10%が発達障害のような症状をみせるようになった環境的な要因を特定することができれば、発達障害の子どもたちへの療育方法をよりよくできる可能性があります。
(出典:米The Washington Post)(画像:Pixabay

“quasi-autism” 疑似自閉症と訳されるようです。発達障害ではありません。

こういった幼児期の社会的な関わりとの断絶によっても、刺激を求めて、常同行動などが起きるのですね。

しかし、このひどい環境で育ってもルーマニアの孤児の90%は、発達障害のような症状を見せなかったそうです。
人が持つ生来の強さです。それだけが救いです。

ただ不幸な出来事として反省するだけでなく、このようによい方向へ活かそうとするのは尊いことだと思います。
ブカレスト早期療育プロジェクトの研究者も、孤児であり当事者でした。

自閉症の原因と考えられること。米コロンビア大の自閉症研究

(チャーリー)


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