
この記事が含む Q&A
- 自閉症の診断の有無で、選択の仕方にはどんな違いがありますか?
- 自閉症の診断を受けた人は未知の選択を避け、高得点を得た選択を繰り返す傾向があります。
- 診断がない人の中で特性が高い人はどう違いますか?
- 条件によっては探索を増やす傾向が見られ、未知を試す探索を活用することがあります。
- 研究の意義や支援への示唆は何ですか?
- 診断の有無と特性の高さを両方考慮することで、見通しづくりや柔軟な探索を教育・職場の支援に活かせます。
人は毎日の生活の中で、数えきれないほどの選択をしています。
朝食に何を食べるか、どのテレビ番組を見るか、将来どの仕事に就くか。
そのどれもが「広大な選択肢の中からの意思決定」です。
しかし、すべての人が同じように新しい選択肢に挑戦するわけではありません。
今回ベルギーのゲント大学の研究チームが行った調査は、自閉症の診断を受けた人と、診断は受けていないが自閉症の特性が高い人とで、その選び方に違いがあることを明らかにしました。
研究に参加したのは588人で、そのうち77人が自閉症の診断を自己申告しました。
参加者は「トリュフ探しゲーム」という課題を行いました。
画面に表示された11×11のマスにはそれぞれトリュフの数が隠されており、参加者はマスをクリックして掘り出します。
隣り合うマスは似た結果が出やすいため、この情報を使って「予測」や「探索」を行うことができます。
目的はできるだけ多くのトリュフを集めることでした。
結果を見ると、自閉症の診断を受けた人は新しいマスを試すことが少なく、一度高得点を見つけるとそれを繰り返し選ぶ傾向がありました。
つまり「未知のものに挑む探索」を避け、確実に報酬が得られる「活用」に強く傾いたのです。
一方で、診断を受けていない人たちの中で特性が高い人は、探索を減らすわけではなく、条件によってはむしろ探索を増やす姿が見られました。
さらに研究チームは、探索の背景にある心の働きを数理モデルで解析しました。
探索には大きく3つの種類があります。
ひとつは「ランダムに試す」、もうひとつは「不確実なものを選んで情報を得る」、そして「既に得た情報から他の選択肢を推測する」方法です。
その結果、自閉症の診断を受けた人は「不確実なものを試す探索」が少なく、予測がつきやすい選択を繰り返す傾向があることがわかりました。
ただし「ランダムに試す」や「推測して広げる」点については、診断の有無で違いは見られませんでした。
この結果は、自閉症の診断を受けた人と、特性が高いが診断はない人とでは、同じ自閉症スペクトラムに含まれていても行動のしかたが異なることを示しています。
診断を受けた人は「予測できない状況を避ける戦略」をとりやすいのに対し、診断はない人の中には「不確実さを積極的に試して理解しようとする戦略」をとる人もいるのです。
この違いは、診断が「特性の高さ」だけではなく、それが生活に困難をもたらしているかどうかで決まるという臨床の視点ともつながります。
研究には自己申告の診断に基づいている点や、参加者が35歳以下に限られている点などの制約があります。
それでも、広大な選択肢の中での行動を詳細に調べ、診断の有無と特性の高さを同時に比べた点で大きな意義があります。
自閉症を「ひとつのまとまり」としてではなく、「診断のある人とない人で異なる行動パターンがある」と理解できる研究です。
この知見は支援にも役立ちます。
自閉症の診断を受けた人が「予測できないことを避けたい」と感じやすいなら、生活や学習で見通しを持ちやすくする工夫が助けになるでしょう。
一方で、診断はないけれど特性が高い人が見せる柔軟な探索は、強みとして活かすことができます。
人がどのように「不確実さ」に向き合うかを理解することが、教育や職場での支援や環境づくりに大切なヒントとなるのです。
(出典:Molecular Autism DOI: 10.1186/s13229-025-00679-9)(画像:たーとるうぃず)
こうして、いわば「戦略の違い」があるからこそ、人類は繁栄できたのだと私は思います。
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