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自閉症の人どうしだと会話が楽に。VR空間での新しい人間関係

time 2026/03/14

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自閉症の人どうしだと会話が楽に。VR空間での新しい人間関係

この記事が含む Q&A

VRChatを用いた自閉症研究では、研究者が観察する代わりに自閉症の若者自身が集まり自分の経験を話し合う場をつくりましたか?
はい、仮想空間でアバターを用い自由に会話し分析する方法で行われました。
この研究で整理された四つのテーマは何ですか?
診断とアイデンティティ、人間関係、見えない努力(マスキング)、社会の仕組みの四つです。
研究から得られた主な示唆は何ですか?
環境と社会の設計が自閉症の困難に大きく影響しうること、VR空間は安全な場を提供して新たな交流を生み出す可能性があることです。

近年、自閉症の研究では大きな転換が起きています。

これまで多くの研究は、「自閉症の人はどこができないのか」「どうすれば普通の人のように振る舞えるのか」という視点から行われてきました。
つまり、自閉症の特徴を「欠点」や「問題」として理解し、それを改善することを目的とする研究が主流だったのです。

しかし、こうした考え方に対して、近年は強い疑問が投げかけられるようになっています。
自閉症の人の行動やコミュニケーションは、本当に「間違い」なのでしょうか。
それとも、社会の仕組みや環境の方が自閉症の人に合っていないだけなのでしょうか。

今回紹介する研究は、この問いに新しい方法で取り組んだものです。
この研究は、イタリアのトレント大学(University of Trento)心理学・認知科学部と観察・診断・トレーニング研究所(ODFLab)、さらにブルーノ・ケスラー財団(Fondazione Bruno Kessler)の研究者によって行われました。

 

研究の特徴は、とてもユニークです。
研究者が自閉症の人を観察するのではなく、自閉症の人たち自身が集まり、自分たちの経験について話し合う場をつくったのです。
しかも、その場所は現実の会議室ではありません。
VRChatという仮想空間でした。

仮想空間の中で、自閉症の若者たちがアバターとして集まり、自由に会話をする。
その様子を研究者が記録し、どのような経験や意味づけが語られるのかを分析する。

こうした方法で研究が行われました。

参加したのは、18歳から38歳までの自閉症の若者16人です。
すべて正式な診断を受けた人たちで、サポートの必要度が比較的低いレベルの人たちでした。
研究では、2025年の4月から5月にかけて、VRChatの中で9回のセッションが行われました。

参加者は自分の好きなアバターを選び、仮想世界の中で集まり、話し合いをしました。
会話は参加者自身がテーマを決めて進めます。研究者は基本的に内容を指示せず、技術的なサポートだけを行いました。

 

この研究の重要な特徴は、環境をできるだけ参加者にとって安心できるものにしたことです。
例えば、次のような工夫が行われました。

参加者は自分の家から参加できます。
アバターを使うため、顔や外見を見せる必要はありません。
声で話すだけでなく、チャットでも参加できます。
疲れたら途中で休憩したり、退出することもできます。

つまり、社会的なプレッシャーや感覚の負担を減らした環境が用意されたのです。
こうした環境で話し合いを行った結果、自閉症の若者たちは多くの重要なテーマについて語りました。

研究者はその内容を分析し、大きく四つのテーマに整理しました。

 

一つ目は、診断とアイデンティティです。

参加者の多くは、自閉症を「欠点」ではなく「違い」として捉えていました。
ある参加者は、仕事の中で「自分には超能力のように感じる能力がある」と語りました。
例えば、コンピューターのソフトウェアを学ぶ仕事では、同僚よりも早く理解できることがあります。

しかし一方で、受付のような対人対応の仕事では非常に難しさを感じるとも語りました。
つまり、能力がある分野と難しい分野が大きく分かれるという経験です。

また、多くの参加者にとって診断は重要な意味を持っていました。
診断によって、自分が「なぜ他の人と違うのか」を理解できるようになったからです。

ある参加者は、これまで自分は「おかしい人」だと思われていると感じていたと語りました。
しかし診断によって、それは自分の性格の問題ではなく、自閉症という特性の一部であると理解できたと言います。

さらに、参加者たちは「自閉症の人は共感ができない」という社会のイメージにも強く反論していました。
彼らは、感情がないのではなく、表現の仕方が違うだけだと語りました。

二つ目のテーマは、人間関係です。

参加者たちは、友人関係をとても大切に思っていました。
しかし同時に、人間関係には大きな不安や痛みも伴うと語りました。
新しい人間関係では、自分が誤解されるのではないかという恐れがあります。

会話のタイミングが分からない
どれくらい詳しく話せばいいのか分からない
話しすぎて嫌われるのではないか

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こうした不安を常に感じることがあるといいます。
また、学校でのいじめや孤立の経験を語る参加者も多くいました。
その経験は大人になってからも影響を残しており、人間関係への警戒心につながっていることもありました。

一方で、自閉症の人どうしの交流はとても楽だと語る人も多くいました。

目を合わせなくてもよい
姿勢が自由でもよい
体を動かしながら話してもよい

こうした違いが自然に受け入れられるからです。

三つ目のテーマは、見えない努力です。

多くの参加者は、社会の中で生きるために多くの努力をしていると語りました。
例えば、会話を事前に鏡の前で練習する人もいました。
相手にどう見えるかを常に考えながら行動することもあります。

こうした行動は「マスキング」と呼ばれます。
マスキングとは、自分の自然な行動を抑え、周囲に合わせて振る舞うことです。
この行動は時に役に立ちます。
しかし長期間続けると、強い疲労や燃え尽きの原因になることもあります。

ある参加者は、自分が周囲に合わせているときは「鎖につながれているような感じ」がすると語りました。

四つ目のテーマは、社会の仕組みです。

多くの参加者は、自分が困難を感じる原因は、自閉症そのものではなく社会の設計にあると考えていました。
とくに学校について多くの意見が語られました。
学校では、書かれていないルールを理解することが求められます。
また、集中力が変動することは「努力不足」と見なされることもあります。

しかし参加者たちは、能力がないのではなく、環境が合わないだけだと語りました。
例えば、教室の騒音や混雑は大きなストレスになります。
そのため、次のような環境が望ましいと語られました。

静かな空間
予測可能なスケジュール
ヘッドフォンの使用
自由な休憩

こうした工夫は、自閉症の人だけでなく多くの人に役立つ可能性があります。
この研究で特に注目されたのは、VR空間での交流の体験でした。
参加者の多くは、この環境を「安全な場所」と表現しました。

アバターを使うことで外見の不安が減ります。
話すタイミングを自分で調整できます。
必要なときは静かに参加できます。

その結果、参加者たちは率直な体験を共有できたと語りました。

さらに興味深いことに、研究のセッションが終わった後も、参加者どうしの交流は続きました。
Discordで会話を続けたり、再びVRChatで集まったり、実際に会う約束をした人もいました。
つまり、この研究は単なる調査ではなく、新しいコミュニティのきっかけにもなったのです。

研究者たちは、この結果から重要な結論を導きました。
自閉症の社会的な困難は、個人の能力不足だけで説明できるものではない。
むしろ、環境との「ミスマッチ」が大きな役割を持っている可能性があります。
環境が変われば、コミュニケーションのあり方も変わるかもしれません。
今回の研究は、その可能性を示しました。

また、VR空間は自閉症研究の新しい方法になる可能性もあります。

参加者が自分のペースで参加できる
感覚刺激を調整できる
アバターで自己表現できる

こうした特徴は、自閉症の人にとって参加しやすい研究環境になるからです。
研究者たちは、この方法が今後の自閉症研究にとって重要な手がかりになると考えています。
自閉症を理解するためには、当事者の声が欠かせません。
そして、その声が安心して語られる環境をつくることが、これからの研究の大きな課題なのかもしれません。
今回の研究は、その新しい方向を示した一歩と言えるでしょう。

(出典:Healthcare DOI:10.3390/healthcare14060702) (画像:たーとるうぃず)

VR空間、リアル空間に比べれば「安全な場所」にしやすいはずです。

ますます、利用されるといいですね。

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(チャーリー)

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