
この記事が含む Q&A
- 知的障害のある若者はインターネットでどのように社会とつながっていますか?
- 友人や家族とコミュニケーションを取り、自分の興味について調べたり動画を視聴したりしています。
- インターネット利用に伴う主なリスクは何ですか?
- 嫌がらせやいじめ、性的なメッセージの送信といったトラブルに巻き込まれるケースがあります。
近年、インターネットは私たちの生活に欠かせない存在になりました。
とくに若い世代にとっては、友達との交流や趣味の情報収集など、多くの時間をオンラインで過ごすことが当たり前になっています。
一方で、知的障害のある若者にとって、インターネットの世界はどのように映っているのでしょうか?
スウェーデンのイェーテボリ大学で行われた最新の研究が、その実態を明らかにしました。
イェーテボリ大学社会福祉学部のオーサ・ボルグストロームが発表した研究では、16歳から21歳の知的障害をもつ若者26人を対象にインタビューが行われました。
この研究は、若者がインターネットやソーシャルメディアをどのように利用しているかを調査したもので、そこから得られた結果は、知的障害のある若者がデジタル社会にどのように参加し、どのような課題を抱えているかを明確に示しています。
研究によると、知的障害のある若者も一般の若者と同じように、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器を日常的に使っています。
しかし、その利用方法や感じているリスクは、一般の若者とは少し異なっていました。
まず注目すべき点は、知的障害のある若者はインターネットを通じて世界と繋がることに強い喜びと意義を感じているということです。
参加者の多くは、オンライン上で友人や家族とコミュニケーションを取ることを楽しんでいました。
また、自分の興味のあるテーマについて調べたり、YouTubeで動画を見たりすることにも積極的でした。
インターネットは、彼らが社会との繋がりを持ち、自分のアイデンティティを表現する重要な場となっていたのです。
しかしその一方で、インターネットには多くのリスクも存在しています。
研究に参加した若者の中には、インターネット上で嫌がらせやいじめを受けたり、性的なメッセージを送りつけられたりするなど、深刻なトラブルに巻き込まれた経験をもつ人もいました。
とくに女性の場合、こうした問題に直面することが多く、安全にインターネットを利用するためには周囲の支援が不可欠であることが明らかになりました。
研究ではさらに、若者たちがどのようにこうしたリスクに対処しているのかも明らかにされました。
知的障害のある若者は、自分で問題を解決しようとする傾向が強く、困ったときに誰かに相談するよりも、自分で相手をブロックしたり、インターネットの使用を一時的にやめるといった方法を取ることが多かったのです。
その背景には、「自分がトラブルに巻き込まれたのは、自分が悪いからだ」と感じてしまう心理も関係していました。
また、若者たちが感じるオンラインとオフライン(現実世界)の境界線も非常に曖昧であることが分かりました。
たとえば、オンラインで起きた嫌がらせが現実の生活にも影響を与えたり、逆に学校での人間関係がインターネット上の交流に反映されたりと、双方は密接に絡み合っています。
こうした状況を踏まえて、研究では若者への適切なサポートの重要性を強調しています。
具体的には、学校や家庭でのインターネットの安全な使い方に関する教育を充実させること、また知的障害のある若者が困ったときに気軽に相談できる環境を作ることが提案されています。
研究を主導したボルグストロームは、「知的障害のある若者は決して一様ではなく、さまざまな個性や能力をもっています。彼らを一律に扱うのではなく、一人ひとりに合ったサポートを提供することが、デジタル社会で彼らが安心して暮らせる鍵となるでしょう」と語っています。
この研究成果は、今後、特別支援学校や福祉施設などの現場での取り組みに役立てられることが期待されています。
また、一般社会に対しても、知的障害のある若者のインターネット利用についての理解を深めるきっかけとなることでしょう。
知的障害のある若者たちが、オンラインの世界で安全に、そして自由に自分らしく活動できる社会を築くことが、私たち全体に求められている課題なのです。
(出典:Research Gate)(画像:たーとるうぃず)
子どもたちにも、同じことが言えると思います。
安全なネットの実現も、AIによって進むはずです。
自閉症の若者を守れ。ネット犯罪者がダークウェブから狙っている
(チャーリー)