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自閉症の人たちには「不安」や「ざわつき」の言葉が強く響く

time 2025/11/16

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の人たちには「不安」や「ざわつき」の言葉が強く響く

この記事が含む Q&A

自閉症のある人は、言葉が身体感覚や心のざわつきと関係する語を強く感じる傾向があるのですか?
はい、身体感覚に結びつく言葉や心のざわつきと関係する言葉を強く感じる傾向があります。
ニューロティピカルな人は、どんな言葉に強く反応する傾向がありますか?
社会的・抽象的な意味を持つ言葉に強く反応する傾向があります。
支援の場面で伝え方の工夫として有効な表現は何ですか?
抽象的な表現より身体に近い感覚や具体的な出来事に結びつく表現を用いると伝わりやすいです。

言葉には、目には見えない「心の地図」があります。
ある言葉を見たとき、人によって「どんな気持ちが動くのか」は大きく変わる——そんな経験は、誰でも一度はあるのではないでしょうか。
たとえば「不安」「喜び」「静けさ」といった言葉を見たとき、自分の身体のどこが反応するのか、あるいはどれくらい“重さ”を感じるのか。
その感じ方は、人それぞれです。

今回、チリのラス・アメリカス大学、デル・デサロジョ大学らの研究チームが行った研究は、「自閉症のある人と、そうでない人(ニューロティピカルな人)では、感情にまつわる言葉の感じ方がどう違うのか」を丁寧に調べたものです。
自閉症のある人の暮らしを支えるうえで、「言葉の感じ方のちがい」はとても大切なテーマです。
なぜなら、支援や家族のコミュニケーションでは「言葉」を通して気持ちが伝わるため、その言葉そのものの“響き方”が違っていれば、すれ違いが生まれることがあるからです。

研究チームは、18〜45歳のスペイン語話者131名に協力を依頼しました。
このうち63名が自閉症、68名がニューロティピカルです。
参加者には、日常で使うスペイン語の名詞238語を見てもらい、それぞれの言葉について「どれくらい不安を感じるか」「怒りに結びつくか」「どれくらい強く心が動くか」など、6つの観点から7段階で評価してもらいました。

 

すると、興味深い違いがはっきりと見えてきました。

まず、自閉症のある人は「身体感覚に結びつく言葉」や「心のざわつきと関係する言葉」を強く感じる傾向がありました。
たとえば「不安」「ざわつき」「強い緊張」など、体の内側で起きる感覚をともなう言葉です。
それだけでなく、「シャワー」のような、一見すると感情とは無関係に思える具体的な物の名前が、自閉症のある人には“感情の強さ”として響くこともありました。

研究チームは、この特徴が「自閉症のある人の多くが、体の感覚(インターセプション)を手がかりに気持ちを理解しやすい」という考え方と一致すると述べています。
たとえば、胸がドキドキしたり、お腹がぎゅっとしたりといった身体の反応が、そのまま言葉の“重さ”として結びつきやすいのではないか、という視点です。

一方で、ニューロティピカルな参加者は、「尊敬」「失望」「孤独」「危険」といった、社会的・抽象的な意味をもつ言葉に強く反応する傾向がありました。
これらの言葉は、背景となる社会経験や文化的な理解が必要になることが多く、他者との関係性で意味が形づくられるものです。
つまり、同じ「感情にまつわる言葉」でも、自閉症のある人は体に近い感覚から、ニューロティピカルな人は社会的な文脈から“感情の意味”を拾いやすいという違いがあったのです。

また、自閉症のある参加者は「不安」「怒り」「落ち込み」といった内面のつらさに関する言葉をより強く感じる傾向が見られました。
決して「気持ちが弱い」という意味ではありません。
体の反応や感じやすい部分がちがうため、これらの言葉を見た時の“情動の揺れ”が大きくなる可能性がある、ということです。

反対に、ニューロティピカルな参加者は「明るい気持ちを表す言葉」や「ポジティブな雰囲気を持つ言葉」に高い評価をつける傾向がありました。
「幸福」「庭」「喜び」といった語です。
自閉症のある人は、こうした“社会的に前向き”とされる言葉に対しては、相対的に強く反応しませんでした。

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この結果から研究チームが強調しているのは、
「自閉症のある人は感情を理解する方法がちがう。でもそれは“できない”ではなく、“別の仕組み”で行われている。」
という点でした。

そして、この違いは支援の場面にも大きな意味をもちます。
たとえば支援者や家族が「こういう気持ち?」と尋ねるとき、抽象的すぎる言葉よりも、もう少し身体に近い感覚や、具体的な出来事に結びつく表現を使うと、伝わりやすくなることがあります。
「胸がぎゅっとする感じ?」「落ち着かなくなるとき?」といった、具体的な表現です。

逆に、当事者が言葉を選ぶときも、体の反応を手がかりにした説明のほうが相手に伝わりやすくなることがあります。
コミュニケーションのスタイルはどちらが良い・悪いというものではなく、神経のちがいによって“感情の感じ方の道筋”がちがうだけなのだと、この研究は教えてくれます。

研究の最後には、こんなメッセージが込められていました。
「自閉症のある人の感情理解は“欠けている”のではなく、独自の体系をもっている。その特徴を知ることが、誤解を減らし、より尊重に満ちたコミュニケーションにつながる。」

言葉は、だれにとっても心の地図です。
けれど、その地図は一枚ではありません。
地図のかたちが違うなら、お互いにその違いを知りながら歩いていくことが大切です。
自閉症のある人が感じる言葉の世界は、その人の体験や感覚が刻まれた、とても豊かなひとつの世界です。
その世界と言葉のあり方を尊重することこそが、支援にも日常の対話にも、やさしい道をひらいてくれるのだと思います。

(出典:Frontiers in Communication DOI: 10.3389/fcomm.2025.1655879)(画像:たーとるうぃず)

「自閉症のある人は「身体感覚に結びつく言葉」や「心のざわつきと関係する言葉」を強く感じる傾向がありました。」

これは初めて知りました。

より良いコミュニケーションや支援のためには知っておく必要がありそうです。

自閉症の実体験に基づく二重共感問題。対話の理解を深めよう

(チャーリー)

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