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「自閉症の人は共感できない」という誤解。子ども期の研究整理

time 2026/02/10

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

「自閉症の人は共感できない」という誤解。子ども期の研究整理

この記事が含む Q&A

自閉症のある子どもや青年は「共感がない」という見方は正しいですか?
回答:感情的共感は保たれることが多く、認知的共感の理解・読み取りが難しい場合がある、というのが要点です。
思春期だけに焦点を当てた研究では共感の困難が強く出ることがあるのですか?
回答:年齢・発達段階で差があり、思春期では認知的共感の困難がやや強く見られることがあります。
共感を支援する際に重要な視点は何ですか?
回答:相手の感情をどう整理し表現するかを手助けする支援が効果的とされます。

自閉症のある子どもや若者について、「人の気持ちがわからない」「共感が苦手」というイメージを持っている人は少なくありません。
学校生活やメディアでの描かれ方を通して、そうした印象が長く広まってきました。
しかし、それは本当に正確な理解なのでしょうか。

近年、この問いをあらためて見直そうとする研究が増えています。
その中で行われたのが、自閉症のある子どもや青年における「共感」のあり方を、これまでの研究結果をまとめて検討した系統的レビューです。
この整理は、ポルトガルの大学研究チームによって行われ、ヨーロッパを中心とした複数の国で実施された研究成果が幅広く検討されています。

この研究が注目したのは、「共感」という言葉が、実は一つの単純な能力ではないという点です。
共感には、少なくとも二つの異なる側面があると考えられています。

一つは、他人の感情に心が動く力です。
誰かが悲しんでいるのを見ると胸が痛くなり、嬉しそうな姿を見ると一緒に温かい気持ちになる。
このように感情が自然に響き合う働きは、「感情的共感」と呼ばれます。

もう一つは、相手が何を感じているのかを理解し、表情や言葉、状況から推測する力です。
これは「認知的共感」と呼ばれ、相手の立場に立って考える力とも重なります。

これまでの自閉症研究では、このうち認知的共感ばかりが重視されてきました。
その結果、「自閉症の人は共感が弱い」「他人の気持ちがわからない」という結論が、半ば当然のものとして語られてきた経緯があります。
しかし、感情的共感と認知的共感を分けて考えると、まったく違う姿が見えてきます。

今回のレビューでは、1990年代から2024年までに発表された多くの研究の中から、厳密な基準を満たした15本の研究が選ばれました。
対象はいずれも18歳未満の自閉症のある子どもや青年で、感情的共感と認知的共感の両方を評価している研究に限定されています。

その結果、最も多くの研究で共通していたのは、自閉症のある子どもや青年は、感情的共感については、定型発達の同年代と大きな差が見られないという点でした。
誰かの苦しみや悲しみに対して心が動く力そのものは、多くの場合、保たれていたのです。

一方で、相手の感情を正確に読み取ったり、状況に応じて理解したりする認知的共感については、困難が見られる研究が多く報告されていました。
つまり、感情が「ない」のではなく、感情をどう理解し、どう行動につなげるかの部分でつまずきやすい可能性が示されていたのです。

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この結果は、「自閉症=共感できない」という単純な見方を大きく見直す必要があることを示しています。
自閉症のある子どもや青年は、他人の感情に反応しない存在ではありません。
むしろ、感じ取っている気持ちをうまく整理したり、言葉や行動に結びつけたりすることが難しい場合がある、と捉える方が実態に近いと言えます。

ただし、すべての研究が同じ結論に達しているわけではありませんでした。
15本のうち一部の研究では、感情的共感と認知的共感の両方に困難が見られるという結果も報告されています。
とくに、思春期のみに焦点を当てた研究では、その傾向がやや強く示されていました。

この点について研究者たちは、年齢による違いの可能性を指摘しています。
共感のあり方は、幼児期、学童期、思春期といった発達段階によって変化します。
そのため、子どもと青年をまとめて扱うのではなく、年齢ごとに丁寧に見ていく必要があると考えられています。

また、共感の測り方が研究ごとに異なることも、結果のばらつきにつながっていました。
質問紙で評価する研究もあれば、映像を見せて反応を調べる研究、脳活動を測定する研究もあります。
何をもって「共感」とするのかという定義の違いが、結論に影響している可能性も否定できません。

それでも全体として見ると、多くの研究が共通して示しているのは、自閉症のある子どもや青年が「共感そのものを欠いている存在ではない」という点です。
とくに感情的共感が保たれているという結果は、これまで広く信じられてきたイメージを修正する重要な手がかりになります。

この理解は、支援や関わり方にも影響を与えます。
相手の気持ちを感じ取れないのではなく、感じ取った気持ちをどう整理し、どう表現すればよいかが難しいとすれば、必要なのは「心を持たせる訓練」ではありません。
状況の読み取り方や、感情を行動につなげる手助けをすることが、より現実的な支援になります。

このレビューは、自閉症のある子どもや青年を一面的に捉えるのではなく、共感の中身を丁寧に分けて理解することの大切さを示しています。
そして、「できない」と決めつけるのではなく、「どこでつまずいているのか」を見極める視点の重要性を教えてくれています。

(出典:Review Journal of Autism and Developmental Disorders DOI: 10.1007/s40489-025-00536-8)(画像:たーとるうぃず)

かかえている困難をさらに困難にしてしまうような「誤解」について、なくなることを願います。

自閉症の人の中には「過剰に共感」ハイパーエンパシーの人もいる

(チャーリー)

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