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グリービジネスオペレーションズ社に行ってきた・前編

time 2019/10/31

この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。

グリービジネスオペレーションズ社に行ってきた・前編

たーとるうぃずではこれまでに発達障害の方が活躍しているIT企業についての記事をいくつもご紹介してきました。
マイクロソフト、アーンスト・アンド・ヤング、IBM、そして活躍されている方のほとんどが発達障害の方のオーティコンなど。

これらの記事の多くは人気で「いいね!」やリツイートをたくさん頂いています。

それらの企業の取り組みの共通項は、
発達障害の方にあわせた採用などのルール・状況、物理的環境の整備をしたうえ、
発達障害の方を他の社員に合わせようとするのではなく、違っているところをそのまま、むしろ伸ばすくらい、違う考え、違う視点を尊重し活躍してもらおうとしているところです。

そうした「個」を尊重しイノベーションを起こし続けている企業に、自分や将来の自分の子の働く姿を重ねて憧れや夢、そして社会の一員としてその成功をうれしく祝いたくなる気持ちから、記事が人気なのだと思います。
少なくとも私はそのように思っています。

そんな記事について、会社を代表する立場が明らかなアカウントで「僕は〜」「当社は〜」とリツイートを「たびたび」されていた方がいます。
嘘がない、相当な覚悟、情熱がある。そうでなければそんなことはできないはずです。
そしてその方が公開されているツイートやnote、講演資料で伝えられている考えの多くに私は共感もしました。

それがグリービジネスオペレーションズ株式会社、そして福田智史 代表取締役社長です。

この度、グリービジネスオペレーションズ社に訪問し福田さんにもインタビューする機会を頂くことができました。

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グリービジネスオペレーションズ株式会社 https://greebusinessoperations.com/

「障がい者が自身の能力を最大限に発揮でき、仕事を通じて自律的に成長し続けられる会社を創る」を企業ビジョンに掲げる、グリー社が100パーセント出資する特例子会社です。
社員数は約50名、75パーセントの方が発達障害をかかえられています。
そして、障害者雇用職場改善好事例優秀賞を平成28年に受賞しています。

初めてお邪魔しましたが、それは有名IT企業らしくやわらかで明るい感じです。
オフィスへの入り口は大きく、そして自動ドアになっていました。

「車椅子の方なども入りやすいように大きな自動扉にしてあるんです。」

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【グリービジネスオペレーションズ株式会社 経営企画室副室長 竹内稔貴 氏】

経営企画室副室長の竹内さんに働く環境などについてご案内をいただきました。

まわりが気になってしまうとき、まわりから離れて集中したいときに使える「集中スペース」、ベッドが置かれた「休憩室」なども用意されています。
ますます多くの社員が働けるようにと数ヶ月前に現在のオフィスへ移られました。

一緒に働く発達障がいの社員たちと、オフィス環境を考えたそうです。

「ここは汚れやすいことを考えると当初はフローリングにすることを考えてました。しかし、社員から足音が気になってしまうとの声があって、じゅうたんにしました。

『いろいろな方向から音が耳に入るのはつらい。』

そんな声もありました。そのために音がするもの、コピー機やシュレッダーなどはここ一箇所に集めています。」

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私も知らなかった、そうした困りごともあるのですね。一緒に取り組まなければできなかった見過ごしてしまったはずです。

そして「カウンセリングルーム」には大きなディスプレイの他に見慣れないモノが置かれていました。

「これはこの部屋での声が外からはわからないようにマスキング音を出すものです。
また、カウンセリングを受けることをまわりに知られたくないという社員からの声もあり、出入り口を2つ設けてあります。」

そしてお忙しいなか、代表取締役社長の福田さんにインタビューをさせて頂きました。

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【グリービジネスオペレーションズ株式会社 代表取締役社長 福田智史 氏】

たーとるうぃずでビジネス、ITに関わり、発達障害の子の親である。そんな私が特に興味をもつことを質問をさせて頂きました。

―― グリービジネスオペレーションズ株式会社(以下 GBO)の特徴といえば何でしょう?

「障がい者福祉、障がい者雇用を継続させるためには、特に企業であれば赤字のままではいられません。
それを私たちは克服した点でしょうか。

善意の気持ちだけでは持続できません。
そうなるには、それなりに時間はかかりましたが、もう当社に必要な費用は当社が自分できちんと稼げているんです。」

―― 新規事業なども手掛けられている福田さんが「特例子会社」の社長を兼任されているのは意外なイメージがあります。なぜ社長に?

「理由は3つですね。
まず1つめは、人口減少という深刻な社会課題を背景に「障がいのある方の就労機会を増やし、社会参加率をあげたい」それは個人的に強く思っていました。

そして、グリーグループとして障がい者雇用に本気で取り組むという意思があります。
『特例子会社であっても、持続可能でなければならない。』
そのためには、事業経験があってより厳格に収支管理ができる人でなければならなかったことが2つめ。

そしてさらに、グリー本社の各事業部やグループ企業の業務を理解していて、アウトソースできる仕事の切り出せる人でなければならなかったことが3つめです。

自分自身の「やる気」と、ITを活用した業務効率化、優秀な現場スタッフのサポート、これらが共存しているおかげで本社の事業部門と兼務しながら、GBOの経営を行えています。」

―― 発達障害の方たちと一緒に働いてわかったこと、学んだことなどありますか?

「障がいのある方でも、特性に配慮された環境があれば十分に能力は発揮でき、企業にとっての戦力になると実感しました。

『障がいのある方は障がいのない方に比べて仕事ができない』

それは誤解でした。今はそう言えます。

『仕事』であったから、障がい者雇用という未経験の重要課題にも向き合えたわけですが、その結果、発達障がいをかかえる方など、これまで社会的マイノリティとされてきた人たちとの繋がりができました。そのことは、自分の価値観を大きく変え成長機会を与えてくれたと思います。」

―― グリービジネスオペレーションズ社を経営するにあたってご苦労されたことは?

「障がいのある方たちへの合理的な配慮、特に、ルール作りや環境づくりといった物理的配慮は一定の投資さえすればどんな企業でもできます。

例えば、GBOではFacebookページや自身のTwitterアカウントで自社の取り組みを積極的に公開していますので、それを真似ることもできるでしょう。

難しかったのは、グリーグループ内でGBOの存在を認知してもらい、アウトソース先としてその有用性を理解してもらうことでした。GBOの売上となる受託業務をグリーグループ各社から切り出してこなければなりませんから。

大事なのは、グリー本社の事業部門やグループ各社にとって経済的メリットがある状態をつくること。グルーブ外に発注するよりも、GBOにアウトソースするほうがコストが下がる構造をつくることが重要です。それは単純に人件費が安いという話ではなく、過度に利益を追求しないこと、そして、一般的な商取引で発生する契約関連の手続きを極限まで簡略化させたり、ビジネスチャットやグループウェア等のITツールで効率化を図ることで実現しています。
そのようなグリーグループ内からの発注が面倒なく行えるような仕組みを作りました。

その上で、「外部に発注している10の業務のうち、まず3つGBOでやらせてもらえませんか。」といったコミュニケーションを積み重ねてきました。そうして、一つ一つ着実に結果を出していくことで、継続してGBOを使いたいという事業部門が増えていったのです。」

―― とはいっても、受けることができる業務はそんなに多くはないのでは?

「意外と仕事はあったんです。

例えば、GBOでは社員の能力を最大限に発揮させるために納期必達の仕事や極端に納期が短い仕事を受けないと決めていますが、それでも、グループ内に数百もある業務のすべてが納期必達であり短納期であるわけではありません。

単純な仕事でも、RPA(PCでの定型的な作業を自動化する技術)等で、すべての仕事を自動化しているわけでもありません。
そういった大量にある業務の中からGBOでも受託できる業務をいかに切り出していけるかどうかは重要ですね。」

―― 他の特例子会社さんにもしアドバイスをされるとすればどんな?

「GBOよりも、もっと多くの障がい者を雇用し、それを継続している企業はたくさんありますので、あくまで一意見でしかないのですが、
もう少し社内に広く目を向ければ、まだまだできる仕事はあるはずです。

『障がいのある方にできるのはこれくらいだろう。』という固定観念から脱し、深刻な人手不足を解消する手段のひとつとして、もっと視野を広くもって欲しいと思います。

今の社会は、障がいをかかえていない人のほうが、圧倒的に仕事の選択肢が多いじゃないですか。GBOだけでなく、多くの企業が障がい者雇用に取り組むことで障がいのある方の働く選択肢を増やしていきたいんです。」

後半へ続く
―― AIなどのIT技術の進展が発達障害の方の仕事に与える影響は?
―― 発達障害の子をもつ親へ、アドバイスを頂けるなら?
―― 今後GBO、もっと広げれば社会をどうしていきたいですか?

(チャーリー)


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