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アニメが自閉症の子に与える良い/悪い影響。国際的レビュー

time 2025/08/18

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

アニメが自閉症の子に与える良い/悪い影響。国際的レビュー

この記事が含む Q&A

アニメは自閉症の子どもに良い面もあるのでしょうか?
アニメの映像は誇張された表情や場面の手掛かりが分かりやすく、感情認識の練習や会話の練習に役立つケースが報告されています。
アニメの利用で注意すべき点は何ですか?
スクリーン時間が長くなりすぎると現実の交流が減り、現実の関係を理想化して適切な対応を難しくするリスクがあるため、家族で対面の機会とバランスを取ることが大切です。
臨床や教育の場でアニメをどう活用すべきですか?
アニメ場面を現実の練習に結びつける工夫、子どもが好きな作品を活用すること、情報リテラシーを支援者が具体的に教えることなどが有効と提案されています。

アニメは、自閉症の子どもたちにとって、ただの娯楽以上の意味を持つことがあります。

今回の研究は、ギリシャとフランスの研究者たちによる国際的な共同研究で、アニメと自閉症の子どもたちの関係をまとめたシステマティック・レビューです。
具体的には、ギリシャのアテネ大学医学部の「P. & A. Kyriakou」小児病院にある発達評価ユニットと、フランスのリヨン第2大学心理学部の研究者が協力して実施しました。
オープンアクセス学術誌『Children』に掲載されました。

研究方法は、2010年から2025年までの15年間に発表された関連論文を学術データベースから収集し、内容を系統的に整理・評価するレビューです。
最終的に23件の研究が選ばれ、アニメが自閉症の子どもたちに与える良い影響と悪い影響、男女による違い、そして臨床や教育の現場での応用方法について検討されています。
つまり、この研究は新たに子どもたちに介入を行った実験ではなく、過去の研究成果を広く集めて分析し直すことで「全体像」を明らかにすることを目的としています。

まず、アニメの「良い面」です。
アニメは表情がわかりやすく誇張され、登場人物の気持ちの流れが筋道立てて描かれることが多いです。
自閉症の子どもは、相手の気持ちを読み取ることが難しい場面がよくありますが、アニメの映像はその手がかりを明確に示してくれるため、感情の識別や会話の練習に役立ちます。
ある研究では、アニメの映像を使って感情認識を練習した結果、理解が高まったと報告されています。

さらに、アニメのキャラクターや世界観に惹かれて、イラストを描いたり、物語を創作したり、コスプレに挑戦したりと、創作活動へと広がるケースもあります。
こうした活動は自己表現の場となり、自信や達成感につながります。

また、アニメやゲームを中心にしたファンコミュニティ(ACG)に参加することで、同じ興味を持つ仲間と交流でき、学校などで孤立しやすい子どもたちにとって大切な「居場所」になることが指摘されています。

しかし一方で「注意したい面」もあります。
ひとつはスクリーン時間が長くなりすぎることです。アニメや動画、ゲームに多くの時間を費やすと、家族や同年代の子どもと直接やり取りする機会が減り、現実のコミュニケーション練習の場が少なくなります。

もうひとつはアニメの中で描かれる人間関係です。
理想化された友情や恋愛をそのまま現実に当てはめてしまうと、期待が膨らみすぎて失望したり、現実に即した関わり方が難しくなったりすることがあります。
さらに、インターネット上のコミュニティでは、誤った情報や危険な内容に巻き込まれるリスクも指摘されています。

性別による違いも見逃せません。
女の子は周囲に合わせるために自分の苦手さを隠す「カモフラージュ」をしやすいことが知られており、アニメやそのコミュニティが安心できる交流の場として機能することがあります。

興味の持ち方も、登場人物の心情や人間関係に注目する傾向が強いと報告されています。
男の子の場合、アニメの誇張された表情や動きが感情理解の教材として有効であることが示されています。

つまり男女で注目するポイントやアニメの活用のされ方は異なるものの、「現実の関わりを置きかえてしまうほど強くのめり込むことには注意が必要」という点では共通しています。

家族の役割も重要です。
親子で一緒にアニメを見ながら「このとき、この子はどんな気持ちかな」「次は何て言うと伝わるかな」と話すことで、アニメが自然に社会性の練習のきっかけになります。

ある研究では、スクリーン時間を少し減らし、その分を対面の会話や外遊びに置き換えることで、子どもの行動や家族の負担感が改善したと報告されています。
大切なのは、アニメを「禁止する」ことではなく、現実のやり取りや遊びとのバランスを工夫することだと強調されています。

臨床や教育の場でアニメを活用する方法も提案されています。
ひとつは「アニメの場面を現実の練習に結びつける」ことです。
例えば、アニメの短いシーンを見て表情と言葉の関係を確認した後、家族や支援者とロールプレイで同じ場面を試すと、現実の行動につながりやすくなります。

もうひとつは「子どもの好きな作品を活かす」ことです。好きなキャラクターや物語を題材にすることで、子どもが主体的に参加しやすくなります。
そしてもうひとつが「情報リテラシー教育」です。
インターネット上の情報を鵜呑みにせず、確かめる習慣を身につけられるよう、支援者が具体的にサポートすることが必要です。

このレビュー自体の限界もはっきり記されています。
多くの研究が小規模で、短期的な横断研究にとどまっており、自己報告に依存している場合も多いことが指摘されています。
また、文化による違いが十分に比較されていません。
今後の研究課題としては、アニメのジャンル別の効果(たとえば日常系とアクション)や、短いアニメ映像を使った感情理解や会話練習の効果を、長期的に追跡することの必要性が挙げられています。

まとめると、この国際的なレビュー研究は、アニメが自閉症の子どもたちに与える影響を「両義的」としてとらえています。
アニメは社会性の学びや感情理解、自己表現の助けとなりうる一方で、過度に依存すると現実の人間関係を避けるきっかけにもなりかねません。

重要なのは、アニメを現実の練習に橋渡しする工夫、家族や支援者の伴走、そしてバランスの取れた使い方です。
子ども一人ひとりの興味や特性に合わせて、アニメの力を現実世界につなげることが、最も効果的な道筋だと結論づけられています。

(出典:chirdren DOI:10.3390/children12081078)(画像:たーとるうぃず)

私は子どもの頃からアニメやゲームが大好きです。

まぁ、今の大人はみんなそうでしょう。

何事もハマりすぎには注意というところですね。

親子一緒に、注意もしながら、一緒に楽しんで、良い面を活用しましょう。

うちの子は、私のせいでジークアクスOPのPlazmaが大好きになりました。
ノリノリで踊っています。

コスプレをすると障害を忘れて自分を表現でき、友だちもできる

(チャーリー)


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