この記事が含む Q&A
- レゴブロック療法は学校でどのように実施されるのですか?
- 週1回1時間程度を12週間、3人グループで行い、大人のファシリテーターが関わります。
- 研究の結果、現場での実施はどうでしたか?
- 多くの学校で計画通り継続され、基本的なセッション構造は守られていましたが、社会的な関わりを深める点に課題がありました。
- 今後の改善点は何ですか?
- 研修時間の長さを増やすこと、実セッション映像を用いた研修、継続的なスーパービジョン、社会的やりとりの見つけ方と言語化を学ぶことが挙げられます。
レゴブロックを使った活動が、自閉症のある子どもの社会性を育てる方法として注目されてきました。
子ども同士が同じテーブルを囲み、役割を分担しながら協力して作品を作る。
その過程で、自然に会話が生まれ、相手の様子を見ながら調整し、気持ちを伝え合う。
こうした考え方にもとづく支援プログラムが、「レゴブロック療法(現在はプレイ・ブリック・セラピーと呼ばれています)」です。
今回紹介する研究は、イギリスのシェフィールド大学臨床試験研究ユニット、ケンブリッジ大学、プレイ・インクルーデッドCIC、NHS関連研究機関などの研究チームによって行われました。
学校現場でこのレゴブロック療法がどの程度きちんと実施されていたのか、そしてより良くするための改善点は何かを、大規模なランダム化比較試験のデータから詳しく検討しています。
この研究の特徴は、「効果があったかどうか」だけでなく、「実際の現場で、どのように行われていたのか」「プログラムの意図どおりに運営されていたのか」という点を丁寧に調べていることです。
レゴブロック療法は、週1回・1時間程度のセッションを12週間行う形で実施されます。
1グループは基本的に3人の子どもで構成され、教員やティーチングアシスタントなどの大人がファシリテーターとして関わります。
この研究では、98校の学校が参加し、そのうち50校がレゴブロック療法を実施しました。
合計で749回のセッションが行われています。
その結果、
・69%のグループが12回すべてのセッションを完了
・93%のグループが最低ラインとされた6回以上を実施
と、多くの学校で計画どおりに継続されていました。
セッションの内容についても、
・子ども同士が協力して作品を作る
・同じ空間で活動する
・大人と子どもの人数比が適切である
といった基本的な構造は、ほとんどのセッションで守られていました。
つまり、表面的に見れば「レゴブロック療法は学校現場で問題なく運用できていた」と言えます。

しかし研究チームは、さらに踏み込んで「中身」を詳しく見ていきました。
ファシリテーター(支援する大人)は、各セッション後にチェックリストを記入します。
加えて、一部のセッションはビデオ撮影され、研究者が第三者の立場から評価しました。
その結果、興味深いズレが見えてきました。
多くのファシリテーターは、
「子どもたちの社会的なやりとりを促した」
「良い関わりを強調した」
と自己評価していました。
ところが、ビデオを見た研究者の評価では、
・良い関わりを言葉で指摘している場面
・子ども同士に考えさせるよう促している場面
が、必ずしも十分とは言えないケースが一定数ありました。
つまり、
作品作りはうまく進んでいるが、社会的なやりとりを深める関わりは弱めになりやすい
という傾向が示されたのです。
研究者たちは、この理由のひとつとしてファシリテーターの研修時間の短さを挙げています。
この試験では、事前研修は3時間のみでした。
その中で、
・レゴブロック療法の考え方
・進め方
・研究の説明
など多くの内容を詰め込む必要がありました。
結果として、
「大人はどう関わるべきか」
「どのタイミングで介入するのか」
「どこまで子どもに任せるのか」
といった微妙で重要な部分まで十分に伝えきれなかった可能性があるとしています。

もうひとつのポイントは、
ファシリテーター自身が、自分の役割を過小評価していた可能性です。
学校では、大人が指示を出し、子どもがそれに従う形が一般的です。
しかしレゴブロック療法では、
・子ども主導
・大人は支え役
・必要なときだけさりげなく介入
というスタイルが理想とされています。
この切り替えが難しく、
「口出ししすぎないようにしよう」
→ 結果として
「ほとんど介入しない」
という形になってしまった場面も考えられます。
研究者は、積極的に関わらないことと、見守ることは同じではないと指摘しています。
さらに、研究では「ダブル・エンパシー・プロブレム」という考え方にも触れています。
これは、
自閉症のある人と、そうでない人の間では、お互いのコミュニケーションスタイルを理解しにくいことがある
という考え方です。
ファシリテーターが、
「これは特に良いやりとりではない」
と感じていても、
実際には子ども同士にとって重要な関わりである場合があります。
そのため、
ポジティブな関わりを見逃してしまう可能性があると考えられます。

この研究は、レゴブロック療法が無意味だと言っているわけではありません。
実際に、
・多くの学校で継続実施できた
・構造的な部分は高い水準で守られていた
という点は大きな成果です。
一方で、
「作る活動」だけでは不十分で、「関係を育てる支援」がより重要
であることを明確に示しています。
研究者たちは、今後の改善点として次のような方向性を示しています。
・研修時間を増やす
・実際のセッション映像を使った研修
・継続的なスーパービジョン(助言)
・社会的やりとりをどう見つけ、どう言語化するかを学ぶ
つまり、大人が「何もしない」支援ではなく、「関係づくりを支える」支援ができるようになることが重要だとしています。
この研究が伝えている大きなメッセージは、次の点です。
レゴブロック療法の価値は、ブロックを完成させることではありません。
子ども同士が、
・一緒に過ごす
・失敗する
・相談する
・笑う
・調整する
その経験そのものが中心です。
支援の質は、教材の種類ではなく、人の関わり方で決まるということを示している研究と言えるでしょう。
(出典:PLOS One DOI: 10.1371/journal.pone.0336952)(画像:たーとるうぃず)
どんなに教材としてすばらしい可能性があっても、「関わり方」が重要であることを忘れてはならないということですね。
(チャーリー)





























