この記事が含む Q&A
- ADHDの子どもの特性と中年期の健康リスクには関連があるのですか?
- 子どもの頃の ADHD特性が46歳時点で複数の病気を抱える傾向や日常生活の制限に関係する可能性が示唆されていますが、因果を断定せず個人差が大きいとされています。
- この研究の特徴はどこにありますか?
- 診断ではなく、子どもの頃の行動特徴を連続スコアで評価し、長期間追跡した点が大きな特徴です。
- 生活習慣はどのように関係しますか?
- 成人期を通じた喫煙・心理的ストレス・体重増加などがADHD特性と関連し、これらが重なることで健康状態へ影響する可能性が示されています。
ADHDは、子どもの頃の落ち着きのなさや集中のむずかしさとして語られることが多い特性です。
成長とともに落ち着くと考えられてきた時代もありましたが、近年では、大人になってからも生活のさまざまな場面に影響が続くことが知られるようになってきました。
ただし、その影響は仕事や学業、メンタルヘルスだけに限られるものではありません。
今回紹介する研究は、「子どもの頃のADHDの特性が、中年期の身体の健康とどのようにつながっているのか」という点を、長期間にわたるデータを用いて丁寧に検討したものです。
この研究を行ったのは、イギリスの複数の大学や研究機関による研究グループです。
研究では、1970年にイングランド、スコットランド、ウェールズで生まれた人々を対象とする大規模な縦断調査データが用いられました。この調査では、出生から46歳まで、健康や生活状況に関する情報が繰り返し収集されています。

研究者たちは、参加者が10歳のときに示していたADHDの特性に注目しました。
当時のイギリスでは、ADHDという診断自体が一般的ではなかったため、この研究では診断の有無ではなく、保護者や教師による行動質問票をもとに、注意のそれやすさや多動性といった特性を連続的なスコアとして評価しています。
この点が、この研究の大きな特徴の一つです。
そして、その子ども時代のADHD特性が、46歳時点での身体の健康とどのように関係しているのかが分析されました。
研究で重視されたのは、単一の病気だけではありません。
研究者たちは、複数の身体の病気を同時に抱えている状態にあるかどうか、報告された身体の病気の数、そして身体の不調によって日常生活にどの程度の支障が出ているかといった点を総合的に捉えています。

分析の結果、子どもの頃にADHD特性が高かった人ほど、46歳時点でより多くの身体の病気を抱えている傾向があることが示されました。
また、2つ以上の身体の病気を同時に抱えている状態になる確率も高く、身体の健康上の問題によって、仕事や日常生活が制限される程度も大きいことが分かりました。
とくに注目されるのは、その差が極端に大きなものではない一方で、集団全体として見ると一貫して確認された点です。
たとえば、子どもの頃にADHD特性が高かった人たちは、46歳までに複数の身体の病気を抱える状態になる確率が、そうでない人たちよりも高いと推定されました。
この差は一人ひとりの人生を決定づけるほどではありませんが、社会全体で考えると、決して無視できない広がりを持つものです。
さらに研究では、こうした関連がなぜ生じるのかについても検討されています。
研究者たちは、成人期にわたって繰り返し測定された、いくつかの健康に関わる要因に注目しました。
具体的には、喫煙、心理的なストレスの高さ、体重の増加、アルコール使用、学歴といった要因です。
その結果、子どもの頃のADHD特性が高い人ほど、成人期を通じて喫煙や強い心理的ストレス、体重増加といった状態を経験しやすく、これらが積み重なることで、身体の健康状態に影響している可能性が示されました。
一方で、アルコール使用や学歴については、ADHD特性との関連は見られたものの、今回の分析では、複数の病気を抱える状態や身体の健康による生活上の制限と、直接結びついているとは言えない結果でした。

重要なのは、こうした生活習慣や心理的要因を考慮してもなお、ADHD特性と身体の健康との間には直接的な関連が残っていた点です。
これは、喫煙や体重、ストレスといった要素だけでは説明しきれない、別の要因も関係している可能性を示しています。
研究者たちは、その背景として、医療を受ける際の困難さ、社会的な不利、事故やケガのリスクなど、さまざまな要素が重なっている可能性を指摘しています。
また、この研究では性別による違いも検討されました。その結果、病気の数や、複数の病気を抱える状態そのものについては、男女で大きな違いは見られませんでした。
しかし、身体の不調によって日常生活が制限される程度については、女性のほうが影響が大きい傾向が示されました。
これは、身体の症状そのものだけでなく、社会的な役割や負担の違いが影響している可能性も考えられますが、この点については、さらなる研究が必要とされています。
研究者たちは、この結果を「ADHDのある人は必ず健康問題を抱える」という意味で受け取るべきではないと強調しています。ADHDのある人の多くは、長く健康に暮らしていますし、個人差も非常に大きいからです。
そのうえで、この研究が示しているのは、子どもの頃の特性が、その後の人生の中で、少しずつ健康上のリスクと重なっていく可能性がある、という全体的な傾向です。

この研究の強みは、診断に頼らず、一般の人々を対象に長期間追跡した点にあります。
一方で、自己申告による健康情報であること、対象となった病気の種類が限られていること、社会的に不利な立場にある人ほど調査から離脱しやすかったことなど、いくつかの限界も指摘されています。
それでも、この研究は、ADHDを「子どもの問題」として切り離すのではなく、人生全体の中で捉える視点の重要性を静かに示しています。
子どもの頃の特性が、学業や仕事だけでなく、身体の健康とも長い時間をかけて関係していく可能性があること。
そして、その関係の一部は、生活習慣やストレスといった、支援や工夫によって変えうる要素と結びついていること。
この研究は、ADHDのある人の人生を一つの型にはめるものではありません。
むしろ、「早い段階から特性を理解し、長い目で健康を支えていくことが、将来の不利益を小さくできるかもしれない」という、慎重で現実的なメッセージを投げかけている研究だと言えるでしょう。
(出典:JAMA Network Open)(画像:たーとるうぃず)
小さな頃から積み重なった苦労が、大人になってからの県境に影響を与える。
容易に想像できますが、正しい理解を。
研究者たちは、この結果を「ADHDのある人は必ず健康問題を抱える」という意味で受け取るべきではないと強調しています。ADHDのある人の多くは、長く健康に暮らしていますし、個人差も非常に大きいからです。
そのうえで、この研究が示しているのは、子どもの頃の特性が、その後の人生の中で、少しずつ健康上のリスクと重なっていく可能性がある、という全体的な傾向です。
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(チャーリー)





























