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親のストレス。自閉症の子は1.7倍、ADHDの子は1.3倍

time 2025/08/23

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親のストレス。自閉症の子は1.7倍、ADHDの子は1.3倍

この記事が含む Q&A

自閉症やADHDの子を育てる親は、定型発達の親と比べてストレスが高いとされますか?
はい、研究では自閉症・ADHDの親は定型発達の親より高いストレスを抱えると報告され、平均点は自閉症116.75点、ADHD88.08点、定型67.67点でした。
感情中心のコーピングを多く使うと、長期的にはストレスが高まる傾向があるとされていますか?
はい、感情中心のコーピングを多用するほどストレスが高まる傾向があり、臨床的高水準になる確率は約1.37倍とされました。
ストレスを軽減するには、問題中心のコーピングを活用し、具体的な解決策や周囲のサポートを得ることが有効だと示唆されていますか?
はい、問題中心のコーピングを重視することが、ストレス軽減につながると示唆されています。

自閉症やADHDの子どもを育てる親がどのようにストレスを感じ、そのストレスにどう対処しているかを詳しく調べる研究が行われました。

研究を行ったのは、メキシコのチワワ自治大学の研究チームです。
対象となったのは、3歳から5歳の子どもを育てる211人の親で、その中には自閉症の子どもの親、ADHDの子どもの親、そして定型発達の子どもの親が含まれていました。

研究ではまず、親のストレスの強さを測るために「PSI-SF(Parenting Stress Index-Short Form)」という質問紙が使われました。
これは国際的にもよく使われている尺度で、親としての苦痛、親子関係における難しさ、子どもを扱うむずかしさなどを細かく点数化するものです。
たとえば、子どもの行動が思い通りにならず困惑することが多いか、親として自分の役割に負担を感じているかといった項目が含まれています。
得点が高いほど、親が大きなストレスを抱えていることを意味します。

さらに、ストレスをどのように乗り切っているのかを知るために「CSQ(Coping Strategies Questionnaire)」という別の質問紙も用いられました。
コーピング(Coping)とは、問題に直面したときに人がとる行動や考え方を指します。

この研究では、大きく分けて「問題中心のコーピング」と「感情中心のコーピング」の二つが調べられました。

「問題中心のコーピング」とは、実際に起きている困難に対して、現実的な解決方法を考えたり行動したりするスタイルです。
たとえば、子どもが夜なかなか寝ない場合に、就寝前のルーティンを工夫したり、専門家に相談して睡眠のアドバイスを受けるといった行動が当てはまります。
また、学校での困難があるときに担任の先生と連絡を取り合ったり、療育サービスを探して申し込んだりするのもこの方法です。
つまり、「どうすれば状況をよくできるか」という視点で動くのが特徴です。

一方で「感情中心のコーピング」とは、問題そのものを変えるのではなく、自分の気持ちの整理を優先するスタイルです。
これは必ずしも悪いわけではなく、強いストレスの中で一時的に心を守る役割もあります。
しかし長期的にみると、問題の根本解決にはつながりにくい傾向があります。
たとえば「自分が親として未熟だからうまくいかないのだ」と自分を責めてしまったり、「そのうち自然に落ち着くだろう」と現実的な行動を避けたりすることがあります。
また「もし奇跡が起きれば解決するはず」と願うような考え方にとどまってしまう場合もあります。
これらは気持ちを軽くするための工夫ですが、問題自体は解消されないため、結果的にストレスが強まりやすいのです。

調査結果は非常に明確でした。

自閉症やADHDの子どもを育てる親は、定型発達の子どもの親に比べて、はるかに高いストレスを抱えていました。
とくに自閉症の子どもの親は、全員が「臨床的に注意が必要なレベル」のストレスに達していると判断されました。
ADHDの子どもの親も全員が「高いレベル」のストレスを抱えており、これは日常生活の中で強い負担を感じていることを示しています。

一方で、定型発達の子どもの親の多くは「ふつうの範囲」にとどまっていました。

ストレスの点数を平均すると、自閉症の親は116.75点、ADHDの親は88.08点、定型発達の親は67.67点でした。
この数字の差は非常に大きく、子育ての状況によって親の心身の負担が大きく変わることを裏付けています。

とくに自閉症の子どもの親は、親としての役割における疲労感、子どもとの関わりでの難しさ、子どもの行動の扱いにくさのすべてにおいて高い点数を示していました。
ADHDの親も同じ傾向を示しましたが、自閉症の親ほど極端ではありませんでした。

さらに、コーピングの方法についても大きな違いが見られました。

自閉症やADHDの子どもの親は「感情中心のコーピング」を多く使っていました。
つまり、困難に直面したときに「自分が悪いのではないか」と自己責めをしたり、問題から目をそらそうとしたり、「きっとそのうち良くなる」といった願望的な考え方に頼る傾向が強かったのです。
実際、このグループでは100%の親が感情中心のコーピングを主に使っていると報告されました。

これに対して、定型発達の子どもの親の95%は「問題中心のコーピング」を主に使っており、問題解決の工夫をしたり、家族や友人といった周囲のサポートを積極的に取り入れていました。

研究チームはさらに、感情中心のコーピングを多く使う親ほどストレスが高まる傾向があることを統計的に確認しました。
分析によると、感情中心のコーピングを用いることでストレスが臨床的に高い水準に達する確率は約1.37倍に上がるとされています。
つまり、感情に頼る方法は短期的には心を守る役割を果たしても、長期的にはストレスをさらに強めてしまう可能性があるということです。

この研究は、自閉症やADHDの子どもを育てる親が直面する現実の厳しさを数値で明らかにしました。
同時に、ストレスの大きさだけでなく、その乗り越え方にも違いがあることを示しました。
自分を責めたり避けたりするのではなく、具体的な解決策を探したり、人の助けを借りたりすることが、親のストレスを軽減するために重要であることを示唆しています。
チワワ自治大学の研究チームは、この知見が今後の支援策づくりに役立つ可能性を強調しています。

(出典:Frontiers DOI: 10.3389/frcha.2025.1619993)(画像:たーとるうぃず)

私はこれまで、ストレスに勝る幸せを得てきたように思います。

嘘がない笑顔を見れれば、うれしさいっぱいです。

自閉症の子の親は高いストレスレベル。緩和する2つの実践

(チャーリー)


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