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ADHDの子の未来を分けるもの。うまくいく子に共通する要因

time 2026/02/02

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

ADHDの子の未来を分けるもの。うまくいく子に共通する要因

この記事が含む Q&A

ADHDの子どものレジリエンスは何で支えられるの?
子ども自身の力だけでなく家庭・友人・地域など複数のシステムが関わるプロセスである。
レジリエンス要因はアウトカムごとに異なるの?
教育的アウトカム、ウェルビーイング、関係性、外在化・内在化症状のいずれも、関連する要因がアウトカムによって異なる。
レジリエンスの特徴は何ですか?
アウトカム特異性・多システム性・循環的プロセス・社会文化的影響の四つで成り立つ。

ADHDのある子どもたちは、学業、友人関係、感情コントロール、日常生活など、さまざまな場面で困難を経験しやすいことが知られています。

一方で、同じようにADHDの特性をもっていても、比較的うまく適応し、学校生活や人間関係の中で力を発揮している子どもたちがいることも事実です。

「なぜ、同じADHDでも、うまくいく子とそうでない子がいるのか」

この素朴で切実な問いに、体系的に答えようとしたのが、ホンコン・バプティスト大学ソーシャルワーク学部の研究チームによる大規模な系統的レビューとメタアナリシスです。

研究者たちは、ADHDのある子どもにおける「レジリエンス(逆境の中でも適応し、よりよい方向へ向かう力)」が、どのような要因によって支えられているのかを、数値データにもとづいて整理しました。

その結果、レジリエンスは「その子の性格の強さ」だけで決まるものではなく、子ども自身の力、家族のかかわり、友人関係、周囲の大人やコミュニティなど、複数のシステムが重なり合って生まれるプロセスであることが明らかになりました。

この研究には、18歳以下のADHDのある子ども11,622人を含む28本の研究が統合されています。

まず研究者たちは、子どもにとって望ましい結果を大きく五つに整理しました。

  1. 学業成績や算数・読解などの教育的アウトカム。
  2. 生活満足度や幸福感、日々の感情状態などのウェルビーイング。
  3. 友人関係や社会的つながりといった関係性アウトカム。
  4. 攻撃性や反抗的行動などの外在化症状。
  5. 不安や抑うつなどの内在化症状。

研究者たちは、これらのアウトカムと関連する「レジリエンス要因」を、子ども自身の側面と、環境側の側面に分けて分析しました。

その結果、特に重要な子ども側の要因として、次の六つが浮かび上がりました。

  1. 認知機能(ワーキングメモリや実行機能など)
  2. 感情調整(気持ちを落ち着かせる力、対処スキル)
  3. 学習スキルや学業スキル
  4. 社会的スキル
  5. 前向きな態度や主体的な行動
  6. 向社会的行動(思いやり行動や助け合い)

さらに、環境側の要因として、次の四つが重要であることが示されました。

  1. ポジティブな養育態度と愛着関係
  2. 親の心理的・社会的リソース
  3. 友人関係
  4. 家族以外の支援ネットワーク(教師やメンター、地域支援など)

ここで興味深いのは、「すべての要因が、すべての結果に同じように効くわけではない」という点です。

研究者たちは、レジリエンス要因はアウトカム別に働くことを示しました。

たとえば、教育的アウトカムと最も強く関連していたのは、ワーキングメモリ、学業スキル、知能、そして認知機能全体でした。

つまり、学業面の適応には、「がんばる気持ち」だけでなく、情報を保持し、整理し、使う力そのものが大きく関係していることになります。

一方、ウェルビーイングと関連していたのは、親のリソース、認知機能、そして前向きな態度や主体的行動でした。

子ども自身の力だけでなく、親がどれだけ余裕を持てているかという点も、子どもの幸福感と結びついていました。

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関係性アウトカムについては、友情、向社会的行動、社会的スキル、そしてポジティブな養育態度と愛着が関連していました。

「友だちがいること」そのものが強い保護因子になっていることが、数値として示されています。

一方で、外在化症状や内在化症状を減らすうえで特に関連していたのは、感情調整能力と、家族以外の支援ネットワーク、そして「大人から好かれている・受け入れられている感覚」でした。

ここから見えてくるのは、感情調整は「成績を上げるため」というよりも、心の健康を守るための要因として重要だということです。

研究者たちは、この結果をもとに、ADHDのある子どものレジリエンスを説明する新しい概念モデルを提案しています。

そのモデルには、四つの特徴があります。

  1. レジリエンスはアウトカム特異的であるということ。
    何に強いか、何に弱いかは子どもによって異なり、「全部に強い子」「全部に弱い子」という単純な分類はできません。
  2. レジリエンスは多システム的であるということ。
    子ども自身の力だけでなく、家庭、学校、友人、地域といった複数の層が関わります。
  3. レジリエンスは循環的プロセスであるということ。
    良い結果が次のレジリエンス要因を育て、さらに良い結果につながるという好循環が起こり得ます。
    逆に、困難な結果がリスクを高める悪循環も起こります。
  4. レジリエンスは社会文化的影響を受けるということです。
    文化や価値観によって、どの要因が強く働くかは変わります。

研究者たちは、現在の多くの評価ツールや支援が、子ども個人の特性ばかりに焦点を当て、家族や環境の要因を十分に扱っていないことを問題視しています。

その結果、本当はレジリエンスをもっている子どもが見落とされたり、逆に支援が必要な子どもが「問題のある子」とだけ見なされてしまう可能性があると指摘しています。

この研究が示しているのは、次のようなメッセージです。

ADHDのある子どもがうまくいくかどうかは、意志の強さや努力量だけで決まるものではありません。

その子の中にある力と、周囲がどのような環境を用意しているかの組み合わせによって形づくられます。

学業が苦手でも、感情調整が得意で、人との関係が安定している子もいます。
友だちは少なくても、家庭の中で強い安心感を得ている子もいます。

どこに強みがあり、どこに支えが必要なのかを丁寧に見ていくこと。

それこそが、ADHDのある子どもたちの可能性を広げる第一歩なのだと、この研究は教えてくれます。

(出典:European Child & Adolescent Psychiatry DOI: 10.1007/s00787-025-02947-8)(画像:たーとるうぃず)

「良い結果が次のレジリエンス要因を育て、さらに良い結果につながるという好循環」

そうなるように手助けしていきたいですね。

小さな成功を見逃さないように。

ADHDの「強み」と幸福。創造性と自発性が生むポジティブ効果

(チャーリー)

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