この記事が含む Q&A
- 成人ADHDの研究で自閉症特性ありは約何%ですか?
- 165人中74人、約45%が自閉症特性ありと判定されました。
- 自閉症特性のあるADHDの人とADHDのみの人では、どのような差が見られますか?
- 初回は差が小さいものの、追跡では社会的スキル・家族関係の困難が大きく、臨床状態や生活の質が低い傾向がみられました。
- ADHDの薬は自閉症特性の困難を解決しますか?
- 薬はADHD症状の改善には役立つものの、自閉症特性由来の困難までは十分改善しません。
ADHDは、注意がそれやすい、忘れ物が多い、衝動的に行動してしまうなどの特徴をもつ神経発達症として知られています。
一方で、自閉症は、対人関係のむずかしさやこだわりの強さ、感覚の特性などを特徴とする神経発達症です。
これら二つの特性は、まったく別々のものとして語られることが多い一方で、実際には同時に存在する人も少なくないことが、これまでの研究で指摘されてきました。
しかし、その多くは子どもを対象としたものであり、成人に焦点を当てた研究は限られていました。
この研究は、アイルランド国立大学ゴールウェイ校、リムリック大学、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンといった大学と、スライゴー精神保健サービス、ルセナ子ども青年精神保健サービス、チルドレンズ・ヘルス・アイルランド・クラムリン病院などの医療機関に所属する研究チームによって行われました。
成人ADHDと診断された人の中に、どの程度自閉症の特性がみられるのか、そしてそれが生活や心の状態にどのような影響を与えているのかを、約1年にわたって追跡した縦断研究です。

研究に参加したのは、専門の成人ADHD外来を受診した165人です。
平均年齢はおよそ30歳で、男女の割合はほぼ同程度でした。
すべての参加者は、精神科医による詳細な診察と、標準化された面接法を用いてADHDと診断されています。
さらに、自閉症の特性については、10項目からなる質問紙を用いて評価されました。
この質問紙は診断を確定するものではなく、「自閉症に関連する特性がどの程度みられるか」を把握するためのスクリーニングツールです。
一定以上の得点を示した場合、「自閉症特性あり」と分類されます。
その結果、165人のうち74人、約45%が自閉症特性ありと判定されました。
つまり、成人ADHDと診断された人のおよそ半数近くが、自閉症に関連する特性もあわせもっている可能性が示されたことになります。
この数字は、決して小さいものではありません。
研究者たちは、成人のADHD臨床において、自閉症特性の存在を前提として考える必要があることを示唆しています。
次に研究チームは、自閉症特性のあるADHDの人と、ADHDのみの人とを比較しました。
比較されたのは、症状の重さ、生活の質、日常生活の機能、家族関係、社会的なスキルなど、さまざまな側面です。

初回評価の時点では、全体的な生活の質や日常機能に大きな差はみられませんでした。
しかし、家族との関係や社会的なスキルに関しては、自閉症特性のあるグループのほうが、より困難を抱えていることが明らかになりました。
さらに、約1年間の追跡データを用いた解析では、よりはっきりとした違いが示されました。
自閉症特性のあるADHDの人は、ADHDのみの人と比べて、
- 臨床的な状態がより不良である
- 生活の質が低い
- 社会的スキルが低い
- 家族関係の困難が大きい
という傾向が一貫してみられました。
一方で、日常機能全体のスコアについては、時間の経過とともに両群で大きな差はみられませんでした。
ただし、その中身を詳しくみると、「社会的スキル」と「家族機能」の領域では、自閉症特性のあるグループの困難が持続していました。
この結果は、自閉症の特徴として知られる「対人関係やコミュニケーションのむずかしさ」が、成人期においても生活の質や人間関係に大きく影響し続けていることを示しています。

研究では、ADHDの薬物治療の影響についても検討されました。
刺激薬やアトモキセチンといったADHD治療薬を使用している人は、使用していない人と比べて、症状や生活の質、日常機能が改善する傾向がみられました。
しかし、自閉症特性のある人とない人の差は、薬物治療によって埋まることはありませんでした。
つまり、ADHDの薬はADHD症状の改善には役立つものの、自閉症特性に由来する困難まで十分に改善するわけではないことが示唆されます。
研究者たちは、この結果から、ADHDのみを前提とした支援では不十分な場合があると考えています。
自閉症特性をあわせもつ人には、対人関係や社会的スキル、家族関係への支援など、より多面的なアプローチが必要になる可能性があります。

この研究が示しているのは、「ADHDの中にも多様な姿がある」という事実です。
同じADHDという診断であっても、自閉症特性をもつ人ともたない人では、抱える困難の質が異なります。
困難が強いからといって、それは「努力不足」や「性格の問題」ではありません。
神経発達の特性の組み合わせによって、生きづらさの形が変わるということです。
研究者たちは、成人ADHDの診療において、自閉症特性の評価をルーチンで行うことの重要性を指摘しています。
また、ADHDと自閉症の両方を視野に入れた統合的な支援体制が求められると述べています。
この研究は、成人になってから診断を受けた人が少なくない現状も示しています。
子どものころに気づかれなかった特性が、大人になってから生活の困難として表面化するケースも多いと考えられます。
成人期における診断や支援の充実は、単に症状を減らすためだけではなく、「自分の特性を理解する手がかり」を得ることにもつながります。
ADHDと自閉症は、どちらか一方か、という二択ではありません。重なり合いながら存在する場合もあります。
この研究は、その重なりを前提とした支援の必要性を明確に示しています。
(出典:Irish Journal of Psychological Medicine DOI: 10.1017/ipm.2025.10090)(画像:たーとるうぃず)
AuDHD という言葉がもうめずらしくありません。
「ADHDと自閉症は、どちらか一方か、という二択ではありません。重なり合いながら存在する」
正しい支援には正しい理解が必要です。
(チャーリー)





























