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自閉症の人たちを助ける現実と仮想を融合する「複合現実」技術

time 2021/03/31

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の人たちを助ける現実と仮想を融合する「複合現実」技術

12歳の少女は、歩くときはいつも前ではなく足元を見ていました。
それは、自閉症の人にとってはめずらしいことではありません。まわりの世界に目を合わせるのが簡単ではないからです。

しかし、マイクロソフトの「ホロレンズ」ヘッドセットとアクティマージュ社の「ポップバルーン」というアプリケーションを使うことで、少女は前を見ることに抵抗がなくなりました。

このアプリケーションでは、風船を見つけて指ではじくとポイントが加算され、早くはじけばはじくほど、より多くのポイントを獲得することができます。
そして、ポップバルーンは運動機能の改善だけでなく、コミュニケーションの改善も目的としています。

「アプリの中にはバーチャルな少女がいて、どの風船をどこで割るかヒントを与えてくれます。
このゲームは、相手が出す簡単な合図を理解し、それに基づいて行動することも目的としています」

このアプリを使うことで少女は周囲に気を配るようになり、運動能力や人間関係のスキルが向上しました。

ポップバルーンは、アクティマージュ社が開発した自閉症の人の運動能力や社会性の向上を目的とした5つのアプリケーションの一つです。

現実世界と仮想世界を融合させる複合現実を提供するホロレンズを使えば、現実世界にいながら、バーチャルな要素を視覚化したり、聞いたり、対話したりすることができます。
自分の周りにあるものは現実に見えますが、そこにバーチャルな要素が加わります。

ポップバルーンの場合、現実の世界で風船を割ることになりますが、風船自体はバーチャルです。これは、探索や学習を行うための効果的かつ安全な環境となります。

アクティマージュは3年前からポップバルーンを始めに、いち早くホロレンズのアプリケーションを開発しました。

「アクティマージュは、自閉症の人たちが日常生活の中で成長し、進歩していくために大きな助けとなるデジタル技術を活用します。
自閉症の人たちに、他の人たちとのギャップを埋める手助けとなるツールを提供していきます」

そう、アクティマージュのビジネスプロジェクトコンサルタントのルーカス・ニナールは言います。
アクティマージュのこれらのツールは、研究施設や医療機関で臨床試験も行われています。

また、アクティマージュの「ジョインナウ」は、失業中の人々の仕事探しや経済的支援を行う政府機関でテストも始まっています。
このアプリケーションは、自閉症の人が採用されるにあたって大きなハードルになっている最初の面接を乗り越えるためのものです。

フランスでは、20人以上の従業員を抱える企業は、正社員とパートタイム従業員を含めた全従業員のうち、障害をかかえる人を少なくとも6パーセント以上雇用することが義務付けられています。

ジョブナウでは、バーチャルコーチを使って面接の練習を行い、候補者の経歴や経験、目標などを質問していきます。
このような面接は、自閉症の人にとって本当に大きなストレスとなっています。
ニナールはこう言います。

「JobNowの出発点となった統計では、フランスでは自閉症の人の98パーセントが失業していました」

アクティマージュと共同して開発を行っているマイクロソフトのフィリップ・トロティンはこう言います。

「一般的には、企業に採用されるまでには10社くらいの面接を受けることになるかもしれません。

自閉症の人にとっては、最初の面接に向けてどのような準備をすればよいのかがわからず、それがより困難なことになります。
うまくいかなければ、自分のかかえる障害に悲観し、仕事を探すのをやめてしまうかもしれません。

ジョブナウは、バーチャルな人事担当者を前に練習することができます。
それは、人事担当者との面談の可能性を高め、十分な準備をし、ストレスのレベルを下げるための環境となります」

面談の後、面接候補者には実際の面接に向けてよりよい準備ができるよう、実際のコーチと一緒に確認するための面接の質問と回答のプリントアウトが郵送されます。
また、求職者の回答に基づいて、回答の長さや話す速度などの要因を分析したいくつかの重要なパフォーマンス指標の要約もついています。
仕事を求める自閉症の人たちの成功を高めることができるとトロティンは言います。

自閉症の人にとって、他人の顔の表情の意味を理解するのは難しい場合があります。

アクティマージュの「スマイル」はそれを助けることを目的としたものです。
このアプリではマイクロソフトが提供する人工知能サービスを利用して、人の表情を識別・認識し、写真に感情を割り当てるクイズで進捗を確認します。

交通量の多い道路を横断することも、自閉症の人にとっては危険で大きなストレスになります。
アクティマージュの「アクロス」がそれに役立ちます。

「信号が赤で車が止まっていたら、渡ってもいいですよ、と言うのは自然なことだと思います。
しかし、自閉症の人にとっては情報が多すぎてわからなくなってしまうことがあります。

このアプリケーションは、自閉症の人が情報を分析したり、余分な情報を得たり、練習したりするのを助けます。
信号が赤で、車が止まっていて、音がしないならら道路を渡れる、そう練習ができます」

アクティマージュのこれらのアプリはプレイしている間、ユーザーの行動を匿名でモニターし、反応時間、移動時のストレス、心拍数などのデータを記録しています。
その目的は、最終的には家族や医師たちにも役立つ、自閉症の人の行動の予測や理解を深める「傾向」を確認するためです。

アクティマージュは自閉症の10代の人たちを対象とした、社会的な交流を助ける「エデュフレンド」も提供しています。

フランス、ドイツ、ルクセンブルグ、スイス、アメリカに拠点を持つアクティマージュは障害者、特に自閉症の人たちの生活を変える手助けをしたいとしています。

(出典・画像:米マイクロソフト

身体的にも精神的にも安全な練習できる環境は本当に役立つものと思います。

ますます身近に手軽に利用できるようになることを願っています。

ARとおもちゃで自閉症の子が長く遊べ、ことばの学習も進む

(チャーリー)

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