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自閉症の子どもが他人に注目しづらい理由、脳回路に手がかり

time 2025/04/26

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

自閉症の子どもが他人に注目しづらい理由、脳回路に手がかり

この記事が含む Q&A

ASDの子どもたちは「人に注意を向けにくい」原因は何ですか?
上丘と腹側被蓋野の神経回路の働きが弱いためと考えられています。
この発見は早期支援にどうつながりますか?
脳のルートの働き方を早期に把握し、適切なトレーニングや遊びによる介入が可能になります。

自閉スペクトラム症(ASD)は、他の人とうまくかかわるのが難しかったり、同じ行動を何度も繰り返したりする特徴を持つ発達の特徴です。
今回、スイスの研究チームは、ASDの子どもたちが「人に注意を向けにくい」のは、脳のある特定のルートがうまく働いていないからではないかと考え、マウスと人の両方でその仕組みを調べました。

注目されたのは、「上丘(じょうきゅう)」と「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)」という、ふだん私たちにはなじみのない脳の部分です。
しかし実はこの2つは、人の顔や動きなど、目や耳に入ってきた「大事な情報」にすばやく反応するのに、とても大事な場所なのです。

たとえば誰かが急にこっちを見たとき、私たちは自然とそちらに目を向けたり、体を少しそちらに向けたりします。
これは、目から入った「視線」という情報が上丘で処理され、「これは注目すべき!」と判断されることで、次の行動につながっているのです。
そしてその情報は腹側被蓋野に送られ、「それは価値があることなんだよ」と脳に“報酬”として伝えられます。
この一連の流れがあるからこそ、私たちは人と関わることに喜びを感じられるのです。

でも、この仕組みがうまく働かないと、「人に目を向けること」や「人と関わること」があまり魅力的に感じられなくなります。
実際、ASDの子どもたちは、テレビ画面に映る“人が踊る動画”よりも、“動く図形”のほうを長く見ているという研究結果もありました。

研究チームはまず、ASDと似た特徴を持つ特別なマウスを使って調べました。
このマウスは、「シャンクスリー」という遺伝子が欠けていて、人間のASDと似た行動を示します。
研究では、このマウスを小さな囲いに入れて、その周りに別の若いマウスを歩かせました。
すると、普通のマウスはすぐにその相手のほうに体を向けて注目しますが、特別なマウスはあまり反応しませんでした。

さらに、このマウスの脳の中をのぞいてみると、上丘から腹側被蓋野に向かう神経があまり活発に働いていないことがわかりました。
その神経細胞は、まるでお休みモードのように、なかなか「よし!動こう!」とならず、周りの細胞ともあまり連携していませんでした。
これはまるで、チームで動くはずのメンバーがバラバラで、うまく連携できていないようなイメージです。

では人間ではどうなのでしょうか。研究チームは2歳から4歳くらいのASDの子どもたちを対象に、眠っている間にMRIで脳の活動を調べました。


すると、上丘と腹側被蓋野のつながりが、他の子どもと比べて弱くなっていることが分かりました。
このつながりが弱いほど、「社会的なことに注目する力」や「言葉の理解」などの発達もうまくいっていないことが、後の追跡調査でも確認されました。

さらに、目の動きを調べる装置を使って、子どもたちがどこを見ているかもチェックしました。
「人が映っている動画」と「図形が動く動画」を同時に見せると、ASDの子どもたちは人の動画よりも図形のほうを長く見ていました。
また、視線を動かす回数も少なく、「場面全体をざっと見渡す」動きがあまり見られませんでした。
これらの行動も、やはり上丘と腹側被蓋野のつながりの弱さと関係していたのです。

こうした結果から、研究チームは「上丘と腹側被蓋野のルートがちゃんと働くことで、人に注意を向け、関わりたいという気持ちが生まれるのではないか」と考えました。
そしてそのルートがうまく働かないと、ASDのように人への関心が薄れたり、関わることが難しくなるのではないかというわけです。

この発見はとても大きな意味を持っています。
なぜなら、この上丘と腹側被蓋野のルートは、生まれる前からすでに発達しはじめていて、生後まもない赤ちゃんにも関係しているからです。
つまり、将来的にはこのルートの働きを見れば、「どの子が将来、社会的な関わりに困りやすいか」を早い段階で見つける手がかりになるかもしれません。

そしてもしこのルートがうまく働いていないことがわかれば、できるだけ早く支援を始めることもできます。
たとえば、視線を誘導するような遊びや、人の顔を見ることが楽しくなるような工夫をしたトレーニングなどです。

もちろん、脳の回路に直接働きかける治療はまだ研究段階ですが、今回のようにマウスと人の両方で同じ結果が出たことで、「これは重要なルートだ」と強く言えるようになりました。

これからもさらに多くの子どもたちで調べていくことで、より正確に「どの子がどんな支援を必要としているか」がわかるようになっていくと期待されています。
そして将来、ASDの子どもたちが人と目を合わせたり、関わることに楽しさを感じられるようになるための新しい方法が、この小さな脳のルートから生まれるかもしれません。

(出典:Molecular Psychiatry)(画像:たーとるうぃず)

困難の理解、早期療育、につながることを期待しています。

自閉症の人は「自分と他人の刺激」を脳で区別しにくい。研究

(チャーリー)


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