
この記事が含む Q&A
- 自閉症の人の家族は認知症になりやすいですか?
- スウェーデンの研究で、自閉症の人の家族は認知症のリスクが約36%高いことが示されました。
- 家族の中で自閉症と認知症が重なる場合、遺伝的要因の可能性はありますか?
- 家族内で複数の自閉症と認知症の診断例があることから、遺伝的要素が関係している可能性があります。
- この研究は自閉症の人自身の認知症リスクについても調査していますか?
- いいえ、この研究では自閉症の人自身が認知症を発症するリスクは調べられていません。
スウェーデンで行われた最新の研究が、「自閉症」と「認知症」が家族ぐるみで関連している可能性を示しました。
この研究は、カロリンスカ研究所を中心に行われたもので、スウェーデン全土の人口データを用いて自閉症と認知症のつながりを調べたものです。
これまで、自閉症は主に子ども時代の特徴として扱われがちでしたが、実際には成人後も特性は続きます。
一方、認知症は高齢者に多く見られる病気で、記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障をきたすようになります。
過去の研究では、自閉症が認知症のリスクにどのように影響するかについては、はっきりした結論は出ていませんでした。
ある研究では自閉症の高齢者は記憶の低下が遅いと報告され、別の研究では差がないとされました。
しかし最近、自閉症の人が認知症を発症する割合が高いという報告が増えてきました。
今回の研究の目的は、「自閉症のある人の家族が認知症になりやすいのか」を調べることでした。
具体的には、1980年から2013年にスウェーデンで生まれた約333万人を対象に、自閉症の診断があった人を特定し、その両親、祖父母、おじ・おばについて、認知症の診断歴を調べました。
結果として、自閉症のある人の両親は、そうでない人の両親に比べて、認知症を発症するリスクが36%高いことがわかりました。
祖父母では9%、おじ・おばでは12%リスクが高くなるという結果でした。
血縁が近いほどリスクが高くなる傾向が示されました。
とくに、母親においては認知症リスクが51%高く、父親では30%の増加でした。
祖父母やおじ・おばでは男女差は見られませんでしたが、親世代では母親に強い影響が出ていました。
また、自閉症の人に知的障害が併存しているかどうかも調べられましたが、リスクの違いはわずかでした。
知的障害の有無にかかわらず、自閉症のある人の親族は認知症のリスクが高いという結果でした。
この研究で得られた結果は、「自閉症と認知症が家族の中で重なって起こる」ことを示唆しています。
ただし、この関連が遺伝的な要因によるものなのか、家族が共有する環境によるものなのかは、はっきりしていません。
スウェーデンの双生児研究では、自閉症に関して環境要因の影響は小さいとされていますが、認知症ではストレスやうつ病といった環境要因が関与する可能性が指摘されています。
さらに、家族内で複数人が自閉症と診断されている場合、親の認知症リスクがより高くなる傾向も見られました。
これは遺伝的な要素が関係している可能性を示すものですが、確定的なことは言えません。
今回の研究では、実際に自閉症の人自身が認知症になるリスクについては調べられていません。
これは今後の研究課題となります。
過去のデータや診断基準の違い、診断されていない高齢の自閉症者がいることなど、今後解明すべき点が多く残されています。
また、この研究はスウェーデンの医療データを用いているため、他国でも同様の傾向が見られるかどうかは、さらなる研究が必要です。
とくに、スウェーデンのように医療データが整備されていない国では、同様の調査を行うことが難しい状況です。
今回の研究は、自閉症と認知症という、年齢も背景も異なるように見える2つの状態が、実は家族の中で重なり合っている可能性を示しました。
これにより、自閉症のある人とその家族に対する支援や、認知症予防に関する新たな視点が求められるかもしれません。
研究を主導したマーク・J・テイラー氏は、「自閉症と認知症の関係を理解することは、脳の発達と老化をつなぐカギとなる」と述べています。
この発見が、今後の医学や支援の在り方にどのような影響を与えるのか、注目されます。
(出典:Molecular Psychiatry)(画像:たーとるうぃず)
「自閉症のある人の両親は、そうでない人の両親に比べて、認知症を発症するリスクが36%高い」
スウェーデンの人に限った研究調査ではありますが、そんなことがあるのですね。
予防できるのであれば、ずっと介護が必要なうちの子のためにも、努めたいと思います。
(チャーリー)