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「共感能力に欠ける」自閉症ではなく失感情症が原因か。研究

time 2021/10/29

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「共感能力に欠ける」自閉症ではなく失感情症が原因か。研究

英オックスフォード大学の認知神経科学のバード教授は、自閉症研究の長年の定説である「自閉症の人は、共感能力に欠ける」という考えに疑問を持ちました。

自閉症の人の多くが、他人が何を感じているかを直感できないという研究結果がありました。
一方で、「共感」については、自閉症の人でもそうでない人でも、人によって大きな差があることをバード教授は経験してきたからです。

バード教授は、この謎を解決する提案しました。

「共感能力がないのではなく、自閉症の人の中に自分の感情を認識できない人がいるのではないか?」

バード教授も半信半疑だったものの、2010年に発表した研究の結果に衝撃を受けました。

自閉症と自閉症でない人のどちらでも、痛みを感じている他人の映像に対する脳の反応が弱い人ほど、「失感情症」のレベルが高かったのです。
バード教授はこう言います。

「私は即座にすごい結果だと思いました。
失感情症仮説が自閉症において信じられないほど大きな意味を持つ可能性があることに気づきました」

自分の感情を認識できないという「失感情症」仮説が正しければ、自閉症の人が持つと思われる幅広い感情処理の困難さを説明できるだけではありません。
自閉症の診断や支援方法、さらには自閉症の定義を大きく変える可能性もあります。

豪フェデレーション大学の心理学上級講師で、失感情症の特徴を軽減する治療法開発しているスティーブン・エドワーズはこう言います。

「これは非常に斬新な仮説だといえます。それにともない、考慮しなければならないこともでてきます」

自閉症の人の感情処理に関する研究では、知能指数と同じように、失感情症の程度も測定して行う必要があるとバード教授は言います。

そうでない人では5パーセントであるのに対し、自閉症の人では約半数に失感情症が見られます。

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失感情症は自閉症の人たちの間で広く認められているにもかかわらず、多くの自閉症研究者にまだ十分には知られていないとバード教授は言います。

しかし、この失感情症を測定できる新しいツールができてきたことで、自閉症の人の感情についての認識が大きく変わるかもしれません。
自閉症の人とそうでない人の間に見られる感情処理の違いが、失感情症で説明できることがわかってきました。

1972年、2人の精神科医が「感情を表す言葉をもたない」という意味のギリシャ語を組み合わせて「アレキシサイミア」(失感情症)という言葉を作りました。

現在、失感情症は自分の感情を識別したり表現したりすることが困難であること、内面よりも外面を重視する思考パターンという3つの特徴で定義されています。
失感情症は、顔の表情や他人の感情の認識、さらには音楽に対する感情反応など、感情処理のすべての要素に影響を与えます。

驚くべき結果を見た研究から数年、バード教授は自閉症にともなう感情処理の困難さや、自閉症の人での差異の理由は失感情症で説明できるのではないかと考えました。

「それまでの

『自閉症の人はみんな違う』

という認識から、

『では、何がその違いを説明するのか』

と一歩すすめることができるようになりました」

そして、自閉症の特徴よりも失感情症の程度によって、その人の視線のパターン、顔の表情に対する反応の強さや認識能力、さらには資源を共有する傾向(向社会的行動の指標)を予測できることを発見しました。

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バード教授は、英国バーミンガム大学の上級研究員であるジェニファー・クックと結婚しています。
二人は別々の研究をおこなっていますが、3年前にクックは失感情症について測定することを目的とする自分の研究室を立ち上げました。

「失感情症を考慮することは、私たちの研究では当然のことです」

クックの研究は、バード教授の理論を裏付けるものとなっています。
今年初めに発表された研究では、失感情症をもつ自閉症の人と、自閉症でない人の60人に、顔が動くアニメーションを見てもらい、怒っているか、喜んでいるか、悲しんでいるかを評価してもらいました。
その結果、どちらのグループも、ほとんどの感情を同じように認識することができました。

しかし注目すべきは、自閉症の人は自閉症でない人よりも怒りの認識に苦労していたことです。

これは自閉症の人にとって、感情に関する何かが異なっていることを示唆します。

英国バーミンガム大学のクック研究室の大学院生で、このアニメーションの研究に携わり、失感情症仮設の検証を博士課程で行っているコナー・キーティングはこう言います。

「失感情症は、自閉症の人の感情認識における多くの困難の原因となっています。
失感情症が知られる前に研究で示された、自閉症の人のかかえる困難のいくつかを説明できるかもしれません」

キーティングは1994年に作成された20項目からなる「TAS-20」と呼ばれる自己報告式の質問票を用いて、典型的な失感情症の測定を行っています。
自閉症でない人では、そのスコアが高いほど、自分の感情を認識するのが難しいとされています。
しかし、自閉症の人の場合は、そう簡単ではありません。

2005年に研究者たちは少人数の自閉症の人を対象にこのツールで検証しましたが、今年の初めに独立したチームが行うと、その結果を再現できませんでした。
そのチームでは、自閉症の成人を対象に、8問の質問で構成された「GAFS-8」と名付けられた尺度のほうが、TAS-20よりも良い結果を示したとしています。

GAFS-8の作成に携わった米ヴァンダービルト大学の医学・博士課程に在籍する、自らも自閉症をかかえるザカリー・ウィリアムズは、それらよりも新しい2つの尺度のほうがさらに制度が高い可能性があること。
そして、いずれにしても、研究者は、異なる尺度が結果にどのような影響を与えるかを解析する必要があると言います。

「自閉症の特性よりも失感情症のほうが、自閉症の人とそうでない人の差を示すように見えるのは、どのような尺度を用いるかで大きく変わります」

これらの尺度はすべて自己報告にのみ依存した、信頼性の低い方法です。
そこで一部の研究者は、生理的な反応に基づいたより客観的な方法の作成に取り組んでいます。

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例えば、感情的な映像を見た後に皮膚の電気的な活動(皮膚コンダクタンス)が大きくなる人は、自閉症の特徴を考慮してもTAS-20のスコアが高いことを、クックとキーディングは今年の初めに示しました。

これは、失感情症の人は、どのような状況で強い感情を必要とするかを見分けることができず、高いストレス状態に陥ることが多いという説と一致します。
一方で、失感情症の人は、感情に対する身体的反応が鈍感であるという一般的な考えには反しました。

皮膚コンダクタンス反応では失感情症の程度が高い人も、低い人も感情反応を評価することができました。
バード教授は、皮膚コンダクタンス、心拍数、瞳孔拡張に基づく測定法を開発していますが、失感情症の特徴を自己申告している人には、画像に対する自分の感情反応の評価と、瞳孔拡張からの感情反応との間により大きな差があることも発見しています。

アンケートやその他の測定方法を組み合わせた、標準化された失感情症の評価方法が作られれば理想的だとキーティングは言います。

「失感情症を測定するには、まだ長い道のりがあります。
みんなで協力して、より良い測定方法を見つけなければなりません」

しかし失感情症の測定方法が改善されたとしても、自閉症の研究において研究者は、失感情症をもつ自閉症の人とそうでない自閉症の人を見つけなければならない課題に直面します。
それでも、失感情症仮設を支持する研究者は、その努力には価値があるといいます。

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失感情症について考慮されていないために、自閉症についての理解ができなくなっている可能性があるためです。
英国バーミンガム大学の心理学講師であるアンドリュー・サーティースはこう言います。

「これまでに自閉症の特徴とされたいくつかは、自閉症ではなく失感情症によるものかもしれません。
そのため、感情処理に問題がない子どもは、自閉症であっても見逃されてきた可能性があります」

また、現在の自閉症の診断過程では失感情症について測定されませんが、失感情症の程度が高ければそれだけで自閉症でなくとも、自閉症と診断される可能性をバード教授は指摘しています。

自閉症ではない失感情症の人が、自閉症と診断されてしまうのです。

自閉症と失感情症を区別することは難しいことですが、自閉症の診断プロセスに失感情症についての測定を加えることがそれを助けてくれるはずです。
サーティースはこう言います。

「自閉症の研究のためだけではありません。
それは自閉症の人たちに有益です。
自閉症の人たちの生活を改善しようとしている人たちが正しく理解することが重要です。

自閉症の人の失感情症の程度を知り、ケアの対象とすることで、その人の精神的な健康状態を改善することができます。
失感情症の特徴は、社会的コミュニケーションの困難さ、不安、うつ病の増加と関連しているからです。

また、自閉症の人に行われる認知行動療法などは、失感情症のレベルが高い人には効果が低い可能性があります」

バード教授もこう言います。

「『この自閉症の人は失感情症もかかえている』
そう言えることができるようになれば、失感情症をかかえている自閉症の人、失感情症をかかえていない自閉症の人、どちらの自閉症の人もよりよく支援することができるようになります」

(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay

「自閉症といっても人それぞれ違う」

よく言われますが、より適切な効果的な支援を実現するためには、

そこで思考停止せずに、

「なぜ、違うのか?」

と、こうして仮説をもって研究することは間違いなく必要なはずです。

自閉症の人の多くが「失感情症」社会的困難や不安症に強く関連

(チャーリー)

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