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自閉症の人が続ける「ふつう」な努力とうつ病リスクの関係

time 2025/08/29

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自閉症の人が続ける「ふつう」な努力とうつ病リスクの関係

この記事が含む Q&A

カモフラージュとは自閉症の人が社会で「ふつう」に見えるようにする行動で、動作の抑制・視線の合わせ方・会話の練習・表情や身振りの相手への合わせ方などを含むのですか?
はい、周囲との関係を円滑にするための補完・隠す・周囲へ合わせるという三要素を含みます。
カモフラージュと性別の違いについて、男女で総得点に差はありましたか?
今回の研究では男女間の差はなく、全体的には高い水準の参加者だった可能性が指摘されています。
カモフラージュと一生のうつ病経験には関係があるとされていますか?
はい、カモフラージュの強さが生涯でうつ病を経験する可能性を有意に予測し、特に女性でその関連が強い傾向が示されました。

自閉症の人が社会の中で「ふつう」に見えるようにふるまう行動はカモフラージュと呼ばれます。
たとえば人前で安心するための動きを抑える、無理に視線を合わせる、会話を前もって練習する、表情や身振りを相手に合わせるなどが含まれます。
これらは周囲との関係を円滑にする助けになりますが、本人にとっては大きな心の負担となります。

イタリアのミラノ大学医学部らの研究チームは、このカモフラージュと一生を通じたうつ病経験の関係を明らかにするために調査を行いました。

研究の対象は、知的障害や言語障害がなく、自閉症の診断を受けている成人65人でした。
内訳は女性34人、男性31人で、年齢は18歳から57歳まで。平均すると診断を受けたのは26歳頃でした。
参加者はすべて精神的な困難のために専門外来を訪れていました。

評価には3つのツールが使われました。
ひとつはカモフラージュの程度を測るCAT-Qという質問紙です。
これは25の質問からなり、困難を補う行動(コンペンセーション)、特徴を隠す行動(マスキング)、周囲に合わせる行動(アシミレーション)の3つの要素を調べます。
もうひとつはAQという自閉症特性を測る質問紙です。
これは社会的スキル、注意の切り替え、細部への注意、コミュニケーション、想像力の五つの領域から成り立っています。
さらに、精神科医が行うSCID-5という半構造化面接が用いられ、参加者が過去または現在に大うつ病や持続性抑うつ障害を経験しているかどうかが確認されました。

研究者たちの問いは3つありました。
第一に、女性と男性でカモフラージュの程度に違いがあるかどうか。
第二に、カモフラージュは自閉症のどの特性と結びついているのか。
そして第三に、カモフラージュとうつ病の生涯有病との関係はあるのか、その関係に性別の影響はあるのか、
ということでした。

結果として、男女でカモフラージュの総合得点に差はありませんでした。
一般に女性の方が高いとされる傾向があるのに対し、今回の対象では差がなく、これは全員が心の問題で外来に来ていたため全体的に高いレベルであった可能性があると考えられます。

次に、カモフラージュと自閉症の特性との関連が調べられました。
その結果、「コミュニケーションの困難」と「細部に注意を向ける傾向」の2つが、
カモフラージュの総得点を有意に予測していました。

さらに性別で分けると、女性ではこの2つがカモフラージュと強く関連していましたが、男性では有意な関連は見られませんでした。
とくにコミュニケーションの困難については、女性の方が男性よりもカモフラージュとの結びつきが強いことが統計的に確認されました。

そして最も重要なのは、カモフラージュとうつ病の関係です。
分析の結果、カモフラージュの総得点は「生涯でうつ病を経験しているかどうか」を有意に予測していました。

具体的には、カモフラージュが強い人ほど、生涯のどこかでうつ病を経験している可能性が高いという結果でした。
これは年齢や性別、自閉症特性の全体得点を統制しても成り立つものでした。

一生のうちにうつ病を経験した人は、経験のない人に比べて、カモフラージュの合計点も、細かい要素ごとの点数も、すべてが高い数値でした。

とくに女性でうつ病を経験した人は、全体の中でもっともカモフラージュが強い傾向がありました。
さらに女性の中だけで比べても、うつ病を経験した人は、そうでない人に比べて、ほとんどすべてのカモフラージュの項目で高い点数を示しました。
唯一、周囲に同化しようとする行動(アシミレーション)だけは差が見られませんでした。

このことは、カモフラージュが短期的には社会参加の助けになる一方で、長期的にはうつ病のリスクを高める可能性を示しています。
カモフラージュは持続的な努力であり、その心理的コストが時間をかけて積み重なることで、抑うつ的な状態を引き起こすと考えられます。
研究者たちは、これは社会的交流のたびにエネルギーを消費し続けることによる疲弊、気分の低下、社交からの撤退、生活機能の低下、そして自殺リスクの上昇へとつながる可能性があると指摘しています。

一方で、この研究には限界もあります。
対象は比較的小規模であり、すべて臨床サンプルでした。IQや全体的な機能水準、他の併存症の影響などは十分に考慮されていませんでした。
うつ病の評価も「あるかないか」の二値で、エピソードの数や重症度までは扱われていません。
さらに、カモフラージュがうつ病を引き起こすのか、うつ病が強いカモフラージュを促すのか、それとも別の要因が両方に影響しているのか、因果関係はまだ明らかではありません。今後は時間を追った縦断的な研究が必要だとしています。

研究の結論は、男女ともにカモフラージュの強さとうつ病の生涯有病との間に関連があるということでした。
女性ではその関連がより濃く見える部分もありますが、基本的には性別にかかわらず、カモフラージュが強いほど生涯にうつ病を経験する可能性が高いという結果です。
カモフラージュは診断の見えにくさや支援の届きにくさとも関わる行動であり、その裏にある努力と負担を正しく理解することが求められます。

この研究は、カモフラージュの長期的な影響を「生涯」という時間軸でとらえた点で重要です。
自閉症の人や支援者にとって、これはカモフラージュの功罪を考えるうえで大切な知見になります。
カモフラージュは場面を切り抜ける助けになり得ますが、その積み重ねが心の健康に影を落とす可能性がある。
だからこそ、本人が安心してカモフラージュを手放せる場を増やすことが、長期的な心の健康を守る一歩になると考えられます。

(出典:brain sciences DOI:10.3390/brainsci15090920)(画像:たーとるうぃず)

「本人が安心してカモフラージュを手放せる場を増やす」

みんなそれぞれ、もっと自分らしく生きていける。

社会がますますそうなっていくことを願います。

昔に比べたら、人も社会も賢くなりました。実現できるはずです。

自閉スペクトラムの女性が抱えるマスキングと燃え尽き症候群

(チャーリー)


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