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自閉症の子の歯が悪くなりやすい原因、それは一つではなかった

time 2026/01/04

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の子の歯が悪くなりやすい原因、それは一つではなかった

この記事が含む Q&A

自閉症のある子どもの歯の健康に影響する要因は何ですか?
自閉症の重症度が高いほど歯の健康は悪くなりやすく、直接の影響と歯みがき・食事を介した間接の影響がほぼ同じ程度に及ぶことが示されています。
歯みがきへの抵抗はどの程度歯の健康に影響しますか?
歯みがきを強く嫌がるほど歯の状態が悪くなる確率が高く、歯みがきが最も大きな影響因子として重要です。
介入の鍵となる対策は何ですか?
歯みがきへの抵抗を減らす配慮や段階的な慣れ、家庭と医療・教育の連携などが、歯の健康格差を減らす鍵とされています。

自閉症のある子どもは、むし歯になりやすい。
このことは、親や支援者、歯科医療の現場では、経験的に知られてきました。
しかし、その理由については、これまで十分に整理されていませんでした。

歯みがきがうまくできないからなのか。
食べものの好みが偏りやすいからなのか。
それとも、自閉症そのものの特性が、直接、歯の健康に影響しているのか。

こうした問いに対して、「どの経路が、どれくらい強く関わっているのか」を、数値として整理しようとした研究が、発表されました。

この研究を行ったのは、リトアニア健康科学大学の研究グループです。
対象となったのは、2歳から18歳までの自閉症のある子ども・青年399人で、すべて母親による回答をもとに分析が行われました。

研究者たちが注目したのは、次の4つの要素です。
自閉症の重症度、歯の健康状態、歯みがきへの抵抗感、そして食事の質です。

ここで重要なのは、この研究が単に「関連があるかどうか」を見るだけでなく、「どの要素が、どの要素を通して影響しているのか」を、統計モデルで分解して調べた点です。
研究では、構造方程式モデリング(SEM)という手法が用いられました。
これは、直接的な影響と、間接的な影響を同時に扱える分析方法です。
たとえば、「自閉症の重症度 → 歯の健康」という直接の経路と、「自閉症の重症度 → 歯みがき → 歯の健康」という間接の経路を、同じ枠組みで比較できます。

その結果、いくつかのはっきりしたことが見えてきました。

まず、自閉症の重症度が高いほど、歯の健康状態が悪くなりやすいという関係は、確かに存在していました。
これは、歯みがきや食事を考慮に入れてもなお残る、「直接的な関連」として確認されました。

ただし、それと同じくらい強い影響を持っていたのが、「間接的な経路」でした。
自閉症の重症度が高いほど、歯みがきに対して強い抵抗を示しやすく、食事の質も低くなりやすい。
そして、歯みがきを嫌がること、食事の質が低いこと、この2つは、それぞれ歯の健康状態の悪化と結びついていました。

研究者たちは、自閉症の重症度が歯の健康に与える影響を、「直接の影響」と「歯みがき・食事を介した間接の影響」に分けて計算しました。

その結果、間接的な影響の合計は、直接的な影響とほぼ同じ大きさであることが示されました。
つまり、自閉症のある子どもの歯の健康が損なわれやすい理由の約半分は、歯みがきや食事といった、日常の行動を通じて説明できる、ということになります。

さらに注目すべきなのは、歯みがきと食事を比べたとき、歯みがきの影響のほうが、はるかに大きかった点です。
歯みがきへの抵抗が強い子どもは、歯の健康状態が悪くなる確率が、非常に高くなっていました。
研究では、歯みがきを「進んで行う」「特に反応しない」「強く嫌がる」という3段階で評価しています。
この中で、「強く嫌がる」子どもは、「進んで行う」子どもに比べて、歯の状態が悪いと評価される確率が、極端に高くなっていました。

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一方、食事の質も無視できない要因ではありますが、歯みがきほど強い影響力は持っていませんでした。
この結果は、感覚過敏やこだわりの強さといった、自閉症の特性を考えると、理解しやすい面があります。
歯ブラシの感触、歯みがき粉の味や泡立ち、口の中に異物が入る感覚。

こうした刺激は、自閉症のある子どもにとって、非常に不快に感じられることがあります。
その結果、歯みがき自体が、日常的なストレス源になりやすいのです。
研究者たちは、この「歯みがきへの抵抗」を、単なる習慣の問題ではなく、子どもの態度や感覚特性を反映した重要な指標として扱っています。

また、食事についても、自閉症のある子どもは、やわらかいもの、甘いもの、食感が一定のものを好みやすく、野菜や硬い食品を避ける傾向があることが、これまでの研究で知られています。
この研究でも、自閉症の重症度が高いほど、食事の質が低くなる傾向が確認されました。
ただし、その影響は、歯みがきほど直接的ではありませんでした。

さらに重要なのは、これらの関係が、性別や年齢によって大きく変わらなかった点です。
男の子でも女の子でも、幼児期でも思春期でも、自閉症の重症度、歯みがきへの抵抗、食事の質、歯の健康の関係は、統計的にはほぼ同じ構造をしていました。

これは、
「年齢が上がれば自然に解決する問題ではない」
「特定の性別に限った問題ではない」
ということを意味します。

研究者たちは、この結果から、自閉症のある子どもの歯の健康を守るためには、単に歯科治療を受ける機会を増やすだけでは不十分であると指摘しています。
歯みがきを「させる」ことではなく、歯みがきへの抵抗をどう減らすか。
感覚への配慮、視覚的な支援、段階的な慣れ、家庭と医療・教育の連携。
そうした取り組みこそが、歯の健康格差を減らす鍵になる可能性が示されました。

この研究は、「自閉症だから歯の健康が悪くなる」と結論づけるものではありません。
むしろ、どこに介入の余地があるのか、どこを支えれば、結果が変わりうるのか、その道筋を、数字で示した研究だと言えます。

歯の健康は、命に直接関わる問題ではないように見えるかもしれません。
しかし、痛みや感染、生活の質への影響を考えると、決して小さな問題ではありません。
自閉症のある子どもたちの毎日の生活の中で、どんな負担が、どこに積み重なっているのか。
この研究は、その一端をはっきりと示しています。

(出典:medicina)(画像:たーとるうぃず)

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(チャーリー)

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