発達障害のニュースと障害者のハンドメイド

ADHDのチェックシートで「陽性」が出やすいのはなぜなのか

time 2026/01/06

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

ADHDのチェックシートで「陽性」が出やすいのはなぜなのか

この記事が含む Q&A

ASRSとはどんな質問票で、何を目的として使われるものですか?
ASRSは成人のADHDを調べる自己記入式の質問票で、18項目から成り、診断前のスクリーニングとして手軽に使われます。
ASRSの陽性判定と実際の診断にはどんな関係があるのですか?
陽性と判定されても必ずしもADHDと診断されるわけではなく、過去の診断歴や自分がADHDだと思っているかどうかが影響します。
本研究はASRSの見た目の影響を超えて、診療現場に何を伝えていますか?
見た目を変えても陽性率は大きく変わらず、ASRSだけに頼らない総合的な判断と適切な診断プロセスが重要だと指摘されています。

病院での診察中、ふと差し出された一枚の質問票に、戸惑いながら答えたことはないでしょうか。
「最近、集中が続かないことはありますか」
「物事を先延ばしにしてしまうことはありますか」
そんな問いに丸をつけながら、「これはいったい、何を判断するためのものなのだろう」と感じた人もいるかもしれません。

大人のADHDを調べるために、世界中の医療機関で使われている質問票があります。
ASRSと呼ばれる、成人向けのADHD自己記入式質問票です。
カナダやアメリカなどの海外だけでなく、日本でも、精神科や心療内科、発達障害を扱う外来で使われることがあります。

このASRSは、とても手軽な道具です。質問は18項目だけで、数分もあれば答えられます。
そのため、忙しい町のクリニックや、日常的な診療の場でも使いやすいとされています。

一方で、この質問票には、以前からある疑問が向けられてきました。
それは、「ADHDの可能性あり」と判定される人が、あまりにも多いのではないか、という点です。

実際、ASRSで陽性と判定された人のうち、本当にADHDと診断される人の割合は、それほど高くないことが知られています。
つまり、「念のため拾い上げる」力は強い一方で、「本当に該当する人だけを見分ける」力は弱い、という特徴を持っています。

今回紹介する研究は、この問題を少し違った角度から見つめました。
質問の内容ではなく、「質問票の見た目」に注目したのです。

ASRSには、いくつかの工夫が施されています。
特に重要とされる6つの質問が、ほかとは分けてまとめられています。
また、ADHDの症状に当てはまるとされる回答欄には、あらかじめ色がついています。

こうした配置や色づかいが、回答者の判断に無意識の影響を与え、「当てはまる」と答えやすくしているのではないか。
研究者たちは、そうした可能性を検証しようとしました。

研究が行われたのは、カナダの都市にあるファミリーメディスンクリニックです。
来院した19歳から65歳までの患者に、ASRSの異なる形式がランダムに配られました。

ある人は、従来どおりの形式で。
ある人は、質問のまとまりだけを残した形式で。
ある人は、色付きの回答欄だけを残した形式で。
そして、質問のまとまりも色もない、シンプルな形式で。

参加したのは595人でした。
すでにADHDと診断されたことのある人、自分はADHDかもしれないと感じている人、そうではない人が混ざった集団です。

 

結果は、意外なものでした。

どの形式を使っても、ADHD陽性と判定される割合に、はっきりした違いは見られなかったのです。
質問をまとめても、ばらばらにしても。
色をつけても、つけなくても。
陽性率は、ほとんど変わりませんでした。

あわせておすすめ:

あなたの時間を少しやわらげますように。

たーとるうぃずの重いひざかけ

全体では、約3人に1人が陽性と判定されました。
すでにADHDと診断されている人や、自分はそうかもしれないと感じている人では、とくに高い割合になっていました。

一方で、形式よりも強く影響していた要因がありました。
それは、「過去にADHDと診断されたことがあるかどうか」、そして「自分はADHDだと思っているかどうか」でした。

つまり、ASRSの見た目が人を惑わせているというよりも、ASRSという道具そのものが、非常に広い範囲の人を拾い上げてしまう性質を持っていることが、改めて示されたのです。

研究者たちは、この結果を深刻に受け止めています。
なぜなら、日常的な診療の場では、ASRSの結果だけを手がかりに、その後の対応が決まってしまうことがあるからです。

本来、ADHDの診断には、これまでの生活の様子を丁寧に聞き取り、困りごとがどのように続いてきたのかを確認し、ほかの理由で説明できないかを慎重に考える必要があります。
しかし、限られた時間の中で、そこまで踏み込むことは簡単ではありません。

その結果、「陽性だったからADHDとして扱われる」「十分な確認が行われないまま診断や治療に進む」といった事態が起こる可能性があります。
研究者たちは、こうした流れが、過剰な診断や不適切な対応につながるおそれがあると指摘しています。

今回の研究は、「質問票の形式を変えれば問題が解決するわけではない」ことを明確にしました。
同時に、「今の医療の現場には、ASRSだけに頼らない判断の仕組みが必要だ」という課題を浮かび上がらせています。

ADHDという言葉は、人を理解する助けにもなれば、必要以上に自分を縛るものにもなり得ます。
その入り口に置かれている質問票が、どんな性質を持っているのか。
そのことを知ること自体が、私たち自身の安心につながるのかもしれません。

(出典:Frontiers in Psychiatry DOI: 10.3389/fpsyt.2025.1646293)(画像:たーとるうぃず)

「診断」の前に使われるスクリーニングツールの質問票の結果だと、

「ADHDの可能性あり」と判定される人が、あまりにも多いのではないか。

ということです。

必要な方に適切な支援が届くように、診断は正しくなされることを願います。

成人のADHD診断の急増が米国で議論に。過剰診断の要因を探る

(チャーリー)

あわせておすすめ:

あなたの時間を少しやわらげますように。

たーとるうぃずの重いひざかけ


たーとるうぃず発達障害ニュースを支援する。

たーとるうぃずを「いいね!」をする。フォローする。

その他の最新の記事はこちらから

【ニュース記事での「生成AI画像」の利用について】
「研究内容や体験談をわかりやすく伝える」ための概念イラストや雰囲気イラストとして利用しています。事実報道の写真代替、「本物の写真」かのように見せる利用は一切しておりません。


福祉作業所で障害のある方々がひとつひとつ、心をこめて作り上げた良質なハンドメイド・手作りの品物をご紹介します。発達障害の関連ニュースや発達障害の子どもの4コマ漫画も。
気に入ったものはそのままamazonで簡単にご購入頂けます。

商品を作られた障害のある方がたーとるうぃずやAmazonに商品が掲載されたことで喜ばれている、売れたことを聞いて涙を流されていたと施設の方からご連絡を頂きました。

ご購入された方からは本当に気に入っているとご連絡を頂きました。ニュースや4コマ漫画を見て元気が出たとご連絡を頂きました。たーとるうぃずがますます多くの方に喜ばれるしくみになることを願っています。


NPO法人Next-Creation様からコメント

「たーとるうぃず様で販売して頂いてからは全国各地より注文が入るようになりました。障がい者手帳カバーは販売累計1000個を超える人気商品となりました。製品が売れることでご利用者の工賃 UP にもつながっています。ご利用者のみんなもとても喜んでおります」

テキストのコピーはできません。