発達障害のニュースと障害者のハンドメイド

自閉症と知的障害の子に役立つSTEM学習とその方法。研究

time 2025/07/07

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

自閉症と知的障害の子に役立つSTEM学習とその方法。研究

この記事が含む Q&A

STEM学習は知的障害と自閉症スペクトラム症の子どもたちに効果的ですか?
高い効果があり、記憶と応用力を育てることが研究で示されています。
子どもたちに適した学びの工夫は何ですか?
課題を細かく分け、ステップごとに学び、不安を減らす方法が有効です。
ビデオと具体的な指導の組み合わせはどんな効果がありますか?
動作の確認と繰り返し学習が可能になり、理解と自信を促進します。

知的障害と自閉症スペクトラム症を持つ子どもたちは、学校で学ぶときに多くの困難に直面します。
覚えることが苦手だったり、新しいことを学ぶときにうまく切り替えることができなかったりするためです。

こうした子どもたちがもっと学びやすくなるために、どのような方法で学びを支えることができるのか、多くの研究者が取り組んでいます。

今回、中国・陝西師範大学教育学部を中心とする研究チームが、STEM(科学、技術、工学、数学)学習が知的障害と自閉症スペクトラム症のある子どもたちにどのような影響を与えるのかを詳しく調べました。
過去に行われた研究を体系的にまとめて分析する方法を用いて、どのような学び方が効果的なのかを具体的な数値で示しています。

この研究では、2010年1月から2023年7月までに発表された40件の研究を集め、それぞれがどのような方法でSTEM教育を行い、どれだけ効果があったのかを詳しく調べました。
特徴的なのは、知的障害のある子ども、自閉症スペクトラム症のみの子ども、自閉症スペクトラム症と知的障害の両方を持つ子どもの3つのグループに分けて分析を行ったことです。

分析の結果、STEM学習は知的障害と自閉症スペクトラム症のある子どもたちに対して、とても高い効果を持つことがわかりました。

とくに、学んだことを忘れずに続けられる力(維持効果)が高く、学んだ内容を他の場面でも使える力(一般化効果)は中程度の効果がありました。

STEMの中でも、技術(テクノロジー)分野での学びが最も高い効果を示し、科学分野や数学分野も高い効果が示されました。
とくにプログラミングのスキルを学ぶことは効果が大きく、子どもたちが論理的に考え、問題を解決する力を育むことにつながりました。

学び方の工夫についても詳細に調べられました。

科学分野では、課題を細かく分けてステップごとに学ぶ方法が効果的でした。
この方法は、子どもたちが次に何をすればよいのかが明確になるため、不安を減らしながら安心して学びを進められることが理由です。
自分が今どの段階にいるかを確認しながら進むことで、問題解決の力を育むこともわかりました。

技術分野では、ビデオを活用した学びと、先生が具体的に手順を示しながら教える方法の組み合わせが高い効果を示しました。
ビデオによって動作や手順を何度でも繰り返し確認でき、自分のペースで学び直すことが可能になるからです。

数学分野では、考える力(認知スキル)と振り返る力(メタ認知スキル)を使った学び方と、先生が具体的に教える方法の組み合わせが有効でした。
問題を解くときに「何を知っているか」「何が必要か」「どのように解決するか」を順序立てて考える習慣をつけることができ、理解が深まり、自分で問題を解く力を身につけていくことができました。

これらの学び方は、知的障害と自閉症スペクトラム症の子どもたちに効果的であることがわかりましたが、自閉症スペクトラム症と知的障害の両方を持つ子どもたちの場合、他のグループに比べて効果が低いことも示されました。
このことは、支援の方法をさらに工夫し、個別化していく必要があることを示しています。

この研究では、学びの効果に影響を与える要因についても分析が行われました。
その結果、年齢や性別は学びの効果に影響を与えないことがわかりました。
つまり、STEM学習は年齢や性別に関係なく、多くの子どもたちに有効であることを示しています。

また、学ぶ場所(特別支援教室、通常教室、家庭など)、指導する人(専門の研究者、特別支援教育の教員、保護者など)、学ぶ時間の長さも学びの効果に大きな影響を与えないことがわかりました。
適切な方法で支援が行われれば、どのような環境であっても子どもたちはSTEM学習を通じて成長できる可能性があることが示されました。

この研究は、今後の課題についても示唆しています。
現在は科学、技術、数学分野での研究が中心であり、工学分野での研究が少ないため、今後は工学分野での研究が求められています。
また、今回の研究は比較的短期間での学びの効果を中心に調べており、長期的にどのように学びが子どもたちの生活や社会参加につながるのかを追跡する研究が必要です。
さらに、障害の重さによる効果の違いや、重度の知的障害を持つ子どもたちに対する支援方法の研究もこれからの課題です。

STEM学習は、知的障害と自閉症スペクトラム症を持つ子どもたちにとって、自分で学び続ける力を育み、社会で活躍するための力を身につける重要な学びの場であることが示されました。
科学や数学を学ぶことで問題を解決する力を身につけ、技術分野の学びを通じて論理的に考える力を育み、他者と協力する経験を持つことは、将来の社会生活や仕事に大きく役立つ可能性があります。

この研究によって、STEM学習が知的障害と自閉症スペクトラム症の子どもたちの可能性を引き出し、自信を持ち、自分でできることを増やしていく手助けとなることがわかりました。
そして、この学びは学校教育だけにとどまらず、将来の社会参加や自立への一歩となるのです。

これからの学校教育では、障害の有無にかかわらず、すべての子どもたちが安心して学び、自分の力を発揮できる環境をつくることが求められています。
一人ひとりに合った学び方を工夫し、支援を行うことで、子どもたちは自分の力で学び成長していくことができます。
STEM学習は、そのための大きな手助けとなる可能性を持っています。

今回の研究は、知的障害と自閉症スペクトラム症の子どもたちの学びを支え、その可能性を広げる大きな一歩となりました。
今後も多くの研究と実践が進められ、子どもたちが自分らしく学び、社会で活躍できる未来がつくられていくことが期待されます。

(出典:Nature)(画像:たーとるうぃず)

「とくにプログラミングのスキルを学ぶことは効果が大きく、子どもたちが論理的に考え、問題を解決する力を育む」

「課題を細かく分けてステップごとに学ぶ方法が効果的でした。
この方法は、子どもたちが次に何をすればよいのかが明確になるため、不安を減らしながら安心して学びを進められる」

「ビデオを活用した学びと、先生が具体的に手順を示しながら教える方法の組み合わせが高い効果を示しました。
ビデオによって動作や手順を何度でも繰り返し確認でき、自分のペースで学び直すことが可能になるから」

このあたりは、納得です。

「子どもたちが自分らしく学び、社会で活躍できる未来がつくられていく」

すごく期待します。

自閉症やADHDの子の個性を生かす学習。体験、行動、新技術

(チャーリー)


たーとるうぃず発達障害ニュースを支援する。

たーとるうぃずを「いいね!」をする。フォローする。

その他の最新の記事はこちらから
福祉作業所で障害のある方々がひとつひとつ、心をこめて作り上げた良質なハンドメイド・手作りの品物をご紹介します。発達障害の関連ニュースや発達障害の子どもの4コマ漫画も。
気に入ったものはそのままamazonで簡単にご購入頂けます。

商品を作られた障害のある方がたーとるうぃずやAmazonに商品が掲載されたことで喜ばれている、売れたことを聞いて涙を流されていたと施設の方からご連絡を頂きました。

ご購入された方からは本当に気に入っているとご連絡を頂きました。ニュースや4コマ漫画を見て元気が出たとご連絡を頂きました。たーとるうぃずがますます多くの方に喜ばれるしくみになることを願っています。


NPO法人Next-Creation様からコメント

「たーとるうぃず様で販売して頂いてからは全国各地より注文が入るようになりました。障がい者手帳カバーは販売累計1000個を超える人気商品となりました。製品が売れることでご利用者の工賃 UP にもつながっています。ご利用者のみんなもとても喜んでおります」

テキストのコピーはできません。