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生成AIで変わる発達障害・神経発達症の診断と支援の未来

time 2025/08/08

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生成AIで変わる発達障害・神経発達症の診断と支援の未来

この記事が含む Q&A

神経発達症にはどのような種類がありますか?
自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、知的障害(ID)、学習障害(SLD)などが含まれます。
生成AIは神経発達症の診断や支援にどのように役立つのですか?
診断の迅速化や精度向上、個別化治療、教育や研究の促進に貢献します。
早期発見のためにどのような支援がありますか?
AIによるスクリーニングツールや行動観察を用いて、初期症状を早期に発見しやすくします。

神経発達症(Neurodevelopmental Disorders, NDDs)と呼ばれる一群の状態は、世界中の子どもたちやその家族に長期的かつ深刻な影響を与えています。
日本では「発達障害」という言葉が広く使われていますが、国際的には自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、知的障害(ID)、特定の学習障害(SLD)などをまとめて「神経発達症」と呼ぶことがあります。
SLDには、読みの困難を示すディスレクシア、書くことの困難であるディスグラフィア、計算の困難であるディスカルキュリアなどが含まれます。
これらの状態はしばしば重なって現れ、また一度現れると多くの場合、生涯にわたって続きます。

神経発達症は、発達や学習、社会性、感情面に幅広く影響を及ぼします。
そのため、早期発見と適切な支援が極めて重要です。
しかし、現実には診断や介入までに長い時間がかかるケースが少なくありません。

世界保健機関(WHO)の報告によれば、自閉症は世界全体でおよそ100人に1人の割合で存在します。
ADHDは、世界の子どもや青年の約8.0%にみられ、とくに男の子では10%、女の子では5%と性差があります。
米国では3〜17歳の子どもの約17%が何らかの発達障害に該当し、8歳の子どもの約3.2%が自閉症と診断されています。
さらに、2022年時点で3〜17歳の約700万人(11.4%)がADHDと診断されていました。

アジア全体での自閉症の有病率は0.36%とされていますが、東アジアでは0.51%と高く、西アジアでは0.35%、南アジアでは0.31%です。
しかし、これらの数字は過小評価されている可能性が高いといわれています。
低中所得国や農村地域では、診断や調査が行き届かず、文化的背景や言語の違いによるアクセス障壁があるため、多くの子どもが診断に至らず、必要な支援を受けられないまま成長してしまいます。
サハラ以南のアフリカでは、人口の約40%が14歳未満であるにもかかわらず、自閉症の有病率に関する公式データが存在しません。

神経発達症の診断が難しい理由の一つは、症状が他の状態と重なることです。
たとえば、自閉症の子どもがADHDの特徴も併せ持つことは珍しくなく、学習障害や言語障害を伴うこともあります。
こうした併存は、診断の複雑さを増し、専門職間の連携を必要とします。
さらに、症状の現れ方は年齢によって変化し、環境や文化、社会経済的要因も診断や支援に影響します。

診断の遅れは、子どもや家族に大きな負担をもたらします。
診断が確定するまでに1〜2年以上かかることはめずらしくなく、その間に発達支援の最も効果的な時期を逃す恐れがあります。
とくに低中所得国では、小児発達医、臨床心理士、言語聴覚士、作業療法士といった専門家が極端に不足しており、診断や治療の機会は限られています。
都市部に専門医が集中している場合、農村地域に住む家族は診断のために長距離を移動しなければならないこともあります。

こうした現状を変える可能性を持つのが、生成AI(Generative Artificial Intelligence, GenAI)の活用です。

生成AIは大量のデータを学習し、人間が行うような文章作成や画像生成、複雑なパターンの認識を行う人工知能です。
すでに医療の一部分野では診断支援や治療計画の作成に使われ始めており、神経発達症の分野でもその潜在力が注目されています。

生成AIがもたらす第一の利点は、診断の迅速化と精度向上です。
行動観察記録、臨床メモ、発達歴、映像・音声データなど、多様な情報を統合的に解析し、従来時間がかかっていた診断を大幅に短縮できます。
たとえば、fMRIを用いたAIモデル(ASD-DiagNet)は、自閉症の診断時間を6時間から40分に短縮し、正確さも高めました。
RGB-Dカメラを用いた行動解析では、自閉症やADHDの分類で96%近い精度を達成しています。
さらに、網膜や視覚応答を利用したAI診断は、60分かかっていた検査を10分で済ませられます。

これらの技術は、診断の均一性を保ち、文化や言語、社会経済的背景による評価のばらつきを減らします。
とくに、地域や国によって診断基準や方法が異なる現状を改善することができます。
また、保護者や教師など非専門職でも利用できるスクリーニングツールとして活用でき、初期症状の発見と専門医への紹介を早めます。

第二の利点は、治療や支援の個別化です。
AIは子どもの発達プロファイル、過去の治療履歴、併存症の有無などをもとに、最適な介入計画を提案します。
たとえば、ゲームを用いたADHD治療アプリ「EndeavorRx」では、客観的な注意力指標が36%改善し、薬の副作用もありませんでした。
AIによる自閉症向けABAプラン作成は、専門家が作成した計画と81〜84%一致し、計画立案や目標設定の時間を大幅に削減しました。
こうしたシステムは、治療の進み具合をリアルタイムで監視し、必要に応じて頻度や内容を調整できます。

第三に、教育の現場でも生成AIは力を発揮します。視覚的スケジュール、ゲーム化された学習課題、社会的スキルを学ぶ物語など、子どもの認知やコミュニケーションの特性に合わせた教材を自動で作成できます。
これにより、学習意欲や集中力、理解度が高まり、教師や支援員の負担も軽くなります。
AIは教材作成やデータ分析の時間を約50%削減し、教育資源の効率的な配分を可能にします。

第四に、研究の分野でも生成AIは大きな変革をもたらします。
電子カルテ、脳画像、遺伝情報、行動データ、保護者からの報告といった異なる形式のデータを統合し、病気の原因や進行、治療効果を予測できます。従来は除外されがちだった地域や集団も含めた分析が可能になり、研究結果の公平性と汎用性が高まります。
AIはデータ処理やラベル付けの時間を半分に短縮し、数百から数千件規模の予測分析も可能にします。

第五に、保護者や家族への支援です。AIを活用した診断支援では、従来12〜30カ月かかっていた診断までの期間が30〜50%短縮された事例があります。
行動管理や発達追跡を支援するアプリは、保護者の専門家依存を15〜25%減らしました。
さらに、多言語対応や文化に配慮した教材作成が可能で、情報格差を縮小します。
チャットボットやコーチングシステムは24時間利用でき、質問への回答や支援方法の確認、進捗管理などを行い、保護者の不安を軽減します。

もっとも、生成AIの活用には倫理と安全性の確保が不可欠です。
WHOは2023年に医療AIに関するガイドラインを発表し、透明性、説明可能性、データの安全管理、公平性、説明責任を重視しました。
米国のAI権利章典や欧州連合のAI法案も、医療AIを高リスク分野として厳格な監督と規制を求めています。
低中所得国ではデータ不足がAIモデルの偏りを生みやすく、現地データの収集や専門職育成への投資が急務です。

生成AIは、発達障害を含む神経発達症のケアにおいて、早期発見、診断精度の向上、個別化治療、研究促進、家族支援の全領域で変革をもたらす可能性を秘めています。

その導入は、公平性と倫理性を重視し、地域や文化の多様性を尊重した形で進めなければなりません。
医療者、教育者、技術者、研究者、そして当事者や家族が協力し、共同で設計し、透明で責任ある運用を行うことが、この技術の真価を引き出すための鍵となります。

(出典:healthcare DOI:10.3390/healthcare13151898)(画像:たーとるうぃず)

ますます進化する生成AI。

本日はちょうどChatGPT5がリリースされました。

かかえる困難が少しでも軽減するよう、ますます有効活用されていくことを期待しています。

自閉症の高齢者を見守るために。AIロボットが切り開く支援

(チャーリー)


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