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自閉症の中年・高齢者に蓄積されていた深い心の負担と背景。研究

time 2025/11/28

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自閉症の中年・高齢者に蓄積されていた深い心の負担と背景。研究

この記事が含む Q&A

自閉症のある大人の自傷や希死念慮の割合は?
自閉症のある人は自傷・希死念慮の割合が高く、死を意図した傷つけ方をした人は20%を超え、非自閉症群はおおむね3〜4%程度です。
年齢が上がるほど支援は必要になるのですか?
年齢が上がるにつれて自己への負担が強まる可能性が高く、65歳以上の自閉症の方は40〜64歳より高い割合で自傷や希死念慮を経験しています。
どんな支援が有効と提案されていますか?
話せる時間・理解してくれる相手・自分らまでいられる環境を整えることが、後半の支援として有効だと示されています。

年齢を重ねると、苦しさは消えていくのでしょうか。
大人になれば心は強くなる、そう言われることもあります。
けれど現実には、見た目の年齢とは裏腹に、胸の奥でずっと続く痛みを抱えながら暮らしている人がいます。
とくに自閉症のある人の中には、子どもの頃から積み上げてきた孤独や疲れ、人との関係の難しさが、そのまま大人になっても残っていくことがあります。

若者についての研究は多くあります。
しかし、40代、50代、60代、そして80代や90代まで含む「人生の後半」に目を向けた調査はほとんどありません。

そこで英ロンドン大学キングス・カレッジとロンドン大学ゴールドスミスの研究チームは、AgeWellAutism(エイジウェル・オーティズム)というオンライン調査を使い、自閉症のある大人と、自閉症のない大人の心の状態を比べました。
調査に参加したのは合計388名。うち222名は自閉症があると回答し、166名は非自閉症として回答しました。
年齢は40〜93歳と幅広く、その平均は60.9歳でした。

回答者は、人生の中で「死について考えたことがあるか」「自分を傷つけたいと思ったことがあるか」「実際に傷つけてしまったことがあるか」といった質問に答えました。
こうした気持ちや行動をこの研究では「自傷」や「希死念慮」と呼んでいますが、難しく聞こえる場合は「つらさが限界を超えたときに心に浮かぶ考え」だと置き換えてもよいでしょう。

研究では、自閉症があるかどうか、年齢は中年期か高齢期か、性別はどうか、などの違いも合わせて調べられました。
参加者のうつ症状も確認されており、単に気分が落ちているから起きた結果ではないか、という視点からの検討もされています。

結果は静かですが重たいものでした。
自閉症のある人の方が、自閉症のない人よりもずっと高い割合で「死について考えたことがある」「自分を傷つけたいと思った」「実際に傷つけたことがある」と答えました。
さらに、「死を意図した傷つけ方をしたことがある」と答えた自閉症の人は20%を超えており、比較対象の3〜4%ほどの非自閉症グループよりも大幅に高い結果でした。
数字はただの数字ではなく、その向こうには息を潜めて生きてきた誰かの人生があることがわかります。

この調査にはもうひとつ重要な発見があります。
それは、65歳以上の高齢期の自閉症の参加者が、40〜64歳の参加者よりもより高い割合で、自傷や希死念慮、自殺を意図した行動を経験していたことです。
苦しさが若い頃だけのものではなく、むしろ年齢を重ねてから強くなることがある、という現実を示しています。

年齢とともに働く場が減り、周囲との関わりが少なくなり、体の変化や生活の負担が重なると、小さなひびのような痛みが次第に深い傷に変わることがあります。
また、自閉症の女性は男性よりも高い割合で死について考えたり、自傷したことがあると回答していました。
誰になら気持ちを渡せるだろう。
どれだけ耐えればよかったのだろう。
そんな問いが積もっていく時間が、そこには映っています。

この研究は、誰かの弱さを示したわけではありません。
むしろ、長い年月の中で「周囲に合わせ続けた努力」や「助けを求めづらかった経験」が、ゆっくりと心を削ってきた可能性を教えてくれます。
人前では明るくふるまえても、家に帰ると全身が重くなる日があります。
誰にも迷惑をかけまいと沈黙を選ぶ人もいます。
周囲に理解されにくい疲れが積み重なると、自分を責める形でしか出口を見つけられない瞬間が訪れることもあります。

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だからこそ、この研究が示したのは一つの希望でもあります。

「苦しさは見えにくい」なら、周囲が見ようとすることから始められる。
「年齢を重ねるほど負担が増える」なら、支援は若い時期だけで終わるものではない。
「女性がより苦しみを抱えやすい傾向がある」なら、その声を拾う仕組みが必要になる。

大切なのは、誰もが休める場所です。
弱さではなく、生きてきた証として痛みを扱える空気です。
「なぜそうなったのか」ではなく、「どうすれば少し楽に息ができるか」を考えられる関係です。

研究者たちは、人生の後半にある自閉症の人に向けた支援や予防策が急務だと書いています。
特別な何かではなく、話せる時間、理解してくれる相手、自分のままでいられる環境。
そうしたものが整えば、心の中の暗い場所にも小さな明かりを灯すことができます。
支援は若い時だけの話ではありません。
40代、50代、60代、70代、そしてその先の人生も続いていきます。
生きてきた時間が長い人ほど、支えられるべき理由が積み重なっているのかもしれません。

(出典:Molecular Autism DOI: 10.1186/s13229-025-00693-x)(画像:たーとるうぃず)

>「なぜそうなったのか」ではなく、「どうすれば少し楽に息ができるか」を考えられる関係

その通りです。

その人の視点に立って、少し考える。

そうすることで、そんな関係の相手になれるのではないでしょうか。

自閉症と自殺の関係。賢さが生む生きづらさ、孤独な天才の悲劇

(チャーリー)

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