この記事が含む Q&A
- 父親のどのような子育て態度が、子どもへの関わりを高めると報告されていますか?
- デモクラティックな態度が、遊び・関心・基本的ケアのいずれにも関与を高める傾向が示されました。
- 就労状況は父親の子育て態度に影響を及ぼしますか?
- 就劷していない父親は権威的・統制的な態度が高い傾向があり、経済的不安などが影響する可能性が示唆されています。
- 子どもの性別や診断名は父親の態度に大きく影響しますか?
- 子育て態度は性別や診断名によって大きく変わらないと報告されています。
自閉症や知的障害などの発達障害のある子どもを育てる家庭では、日々の生活の中で多くの負担や葛藤が生じます。
これまでの研究では、こうした家庭において母親の役割やストレスに注目したものが多く、父親については「家計を支える存在」「距離のある存在」として扱われることが少なくありませんでした。
しかし近年、父親の関わり方そのものが、子どもの発達や家族全体のあり方に深く関係していることが、少しずつ明らかになってきています。
今回紹介する研究は、トルコのカラマノール・メフメトベイ大学を中心とする研究チームによって行われたもので、発達障害のある幼児を育てる父親の「子育ての考え方」と「子どもへの関わり方」の関係を、具体的なデータから検討しています。
対象となったのは、3歳から6歳の発達障害のある子どもをもつ父親134人です。
研究の出発点となっているのは、父親の子育てが「どれくらい関わっているか」だけでなく、「どんな姿勢で関わっているか」が重要ではないか、という問いです。
父親の態度には、大きく分けて三つの傾向があるとされています。
- 子どもの気持ちや考えを尊重し、対話を大切にする「デモクラティック(民主的)な態度」
- 厳しいルールや罰を重視する「オーソリタリアン(権威的・統制的)な態度」
- 子どもに対して制限をほとんど設けない「パーミッシブ(寛容すぎる)な態度」
一方で、父親の関わり方も、単に一緒にいる時間の長さだけでは測れません。
この研究では、父親の関与を三つの側面から捉えています。
- 遊びや余暇活動を一緒に行うといった「レクリエーションへの関与」
- スキンシップや声かけなど、情緒的なつながりを示す「関心と親密さ」
- 爪を切る、身の回りの世話をするなどの「基本的なケア」

分析の結果、まず明らかになったのは、父親の子育て態度は、子どもの性別や診断名、自閉症かどうか、就学前教育や療育施設への通所の有無、きょうだいの人数といった要因によって、大きく変わるものではなかったという点です。
発達障害の種類や教育環境の違いよりも、父親自身の姿勢が比較的一貫していることが示されています。
ただし、父親の就労状況については例外が見られました。
仕事に就いていない父親は、仕事をしている父親に比べて、より権威的・統制的な態度の得点が高かったのです。
研究者たちは、この結果を経済的な不安や社会的役割の揺らぎと結びつけて考察しています。
仕事をしていない状況が、父親としての自信や立場に影響し、その不安が家庭内での厳しい態度として現れる可能性がある、という見方です。
次に、父親の関わりの量や内容について見ると、子どもの診断や療育への通所の有無による違いはほとんど見られませんでした。
一方で、いくつか興味深い差も確認されています。
まず、娘をもつ父親は、息子をもつ父親よりも「関心と親密さ」の得点が高く、情緒的な関わりがやや強い傾向がありました。
また、ひとりっ子の家庭では、複数の子どもがいる家庭に比べて、遊びや基本的なケアへの関与が高いことも示されています。
父親が一人の子どもに向けられる時間や注意の量が、結果に反映されている可能性があります。
この研究で最も重要な結果は、父親の子育て態度と関わり方のあいだに見られた関係です。デモクラティックな態度が強い父親ほど、遊び、情緒的な関係、基本的なケアのいずれにおいても、子どもへの関与が高いことが明確に示されました。
つまり、子どもを尊重し、対話を重視する姿勢は、実際の行動としての「関わりやすさ」と結びついていたのです。
一方で、権威的な態度や過度に寛容な態度についても、弱いながら正の関連は見られましたが、その関係は限定的でした。
とくに、権威的な態度は、関与の量が増えるというよりも、関わり方の質や方向性に別の影響を及ぼしている可能性が示唆されています。

研究者たちは、これらの結果をトルコ社会の文化的背景とも関連づけて考えています。
伝統的に父親は権威的で感情表現が少ない存在とされてきましたが、近年は都市化や教育水準の向上により、父親像そのものが変化しつつあります。
今回の研究で、民主的な態度と高い関与が結びついていたことは、そうした変化の一端を示しているとも考えられます。
この研究は、父親の態度や関わり方が、子ども本人だけでなく、家族全体の生活の質や母親の負担にも影響する可能性を示唆しています。
ただし、横断的な調査であり、父親自身の回答のみに基づいている点など、限界も指摘されています。
それでも、発達障害のある子どもを育てる家庭において、父親の役割を「補助的なもの」としてではなく、家庭システムの中の重要な要素として捉える必要性を、データに基づいて示した点に、この研究の意義があります。
発達障害のある子どもの支援を考えるとき、「子どもをどう変えるか」ではなく、「大人がどう関わるか」という視点が欠かせません。
この研究は、その問いを父親の側から具体的に投げかけています。
(出典:Journal of Autism and Developmental Disorders DOI: 10.1007/s10803-026-07220-8)(画像:たーとるうぃず)
当然、父親の意識、態度も重要です。
(チャーリー)





























