この記事が含む Q&A
- 職場の雰囲気は自閉症のある成人の仕事満足度とどう関係しますか?
- 多様性が尊重され安心して意見を言える職場で、上司や同僚、給料、昇進、仕事そのものの満足度が総じて高くなる傾向が強いです。
- 就労支援(ジョブコーチ)の有無は仕事の満足度とどう関連しますか?
- 支援の有無だけでは関連が示されず、支援の内容・質・頻度が重要で、効果は個人差が大きいです。
- フルタイム・パートタイムでの満足度には違いがありますか?
- フルタイムの方が給料や昇進の満足度がやや高い傾向はあるものの統計的に明確とは言えず、体調や生活環境なども影響します。
自閉症のある成人の就労について語られるとき、「働けるかどうか」「仕事に就けるかどうか」が強調されることが少なくありません。
しかし実際には、仕事に就いたあと、その仕事をどのように感じているのか、どのような点に満足し、どのような点に困難を感じているのかについては、これまであまり詳しく調べられてきませんでした。
今回紹介する研究は、アメリカのヴァンダービルト大学メディカルセンター、ウィスコンシン大学マディソン校などの研究チームによって行われたもので、自閉症の診断を受けた成人が実際に働いている職場で、どのような「仕事の満足感」を持っているのかを、丁寧に調べています。
とくにこの研究の特徴は、「仕事に満足しているかどうか」を一つの質問で終わらせず、上司との関係、同僚との関係、給料、昇進の機会、仕事そのものといった、複数の側面に分けて捉えている点にあります。
研究に参加したのは、アメリカで地域の職場に就いている自閉症のある成人108人です。
年齢は18歳から45歳までで、多くは20代から30代の若い成人でした。
研究参加者は、販売、事務、食品関係、清掃、輸送、教育、IT、医療補助など、さまざまな分野で働いており、フルタイムの人もいれば、パートタイムで働く人もいました。また、一部の人はジョブコーチなどの就労支援を受けながら働いていました。
研究者たちは、仕事の満足度を測るために、一般の労働者研究でも広く使われている質問票を、自閉症のある人にも答えやすい形に調整して使用しました。

その結果、まず明らかになったのは、自閉症のある成人の多くが、全体として見ると、同年代の一般の人とほぼ同じ水準の仕事満足度を示していたという点です。
とくに、上司との関係や同僚との関係、仕事そのものに対する満足度は、一般人口のデータと比べても大きな差はありませんでした。
また意外なことに、給料に対する満足度についても、自閉症のある成人は同年代の一般の人と同程度、あるいはそれ以上の満足感を示していました。
一方で、昇進の機会に対する満足度については、若い年齢層の自閉症のある参加者で、やや低い傾向が見られました。
ただしこの傾向は、自閉症のある人に特有というよりも、一般の若年層にも共通して見られるものであり、「昇進」に関する不満は、広く共有された課題であることも示されています。
次に研究者たちは、「どのような職場環境が、仕事の満足度と関係しているのか」を詳しく調べました。
ここで注目されたのが、「職場の雰囲気」です。
この研究では、職場の雰囲気を、
・多様性が尊重されていると感じられるか
・安心して意見を言ったり、失敗を恐れずに行動できるか
・上司と信頼関係のあるやり取りができているか
といった観点から評価しました。
分析の結果、職場の雰囲気をポジティブに感じている人ほど、上司、同僚、給料、昇進、仕事そのもののすべての側面で、仕事への満足度が高いことが明確に示されました。
この関連は非常に強く、研究全体の中でも、もっとも一貫した結果でした。

一方で、ジョブコーチなどの就労支援を受けているかどうかは、仕事の満足度と明確な関連を示しませんでした。
これは、「支援が役に立たない」という意味ではありません。
研究者たちは、支援の有無だけでなく、支援の内容や質、頻度などが重要である可能性を指摘しています。
また、今回の研究では支援を受けていない参加者が多く、支援の影響を十分に比較できなかった可能性もあります。
フルタイムかパートタイムかという働き方については、フルタイムで働いている人のほうが、給料や昇進に対する満足度がやや高い傾向が見られましたが、この差は統計的に明確とまでは言えませんでした。
研究者たちは、自閉症のある成人にとって、働く時間の長さが必ずしも満足度を決めるとは限らず、本人の体調、メンタルヘルス、生活環境、福祉制度との関係など、さまざまな事情が影響している可能性を指摘しています。

この研究が伝えている重要なメッセージは、「自閉症のある成人は、仕事そのものに不満を感じやすい」という単純なイメージが、必ずしも正しくないという点です。
仕事に就いたあと、多くの人が、自分なりに職場の中で満足感を見いだし、同僚や上司との関係を築きながら働いています。
そしてもう一つ重要なのは、個人の能力や努力だけでなく、「職場のあり方」そのものが、仕事の満足度に大きく関わっているという事実です。
多様性が尊重され、安心して働ける雰囲気があり、上司との信頼関係が築かれている職場では、自閉症のある成人も、そうでない人も、より良い仕事体験を得やすくなります。
この研究は、「就労できるかどうか」という入口の議論から一歩進み、「どのような職場で、どのように働くことが、満足感につながるのか」を考えるための、重要な手がかりを示しています。
働くことを「続けられるか」だけでなく、「意味のある経験として感じられるか」という視点が、これからますます求められていくのかもしれません。
(出典:Journal of Autism and Developmental Disorders DOI: 10.1007/s10803-026-07219-1)(画像:たーとるうぃず)
「心理的安全性」が確保されている職場。
ということでしょう。
経営者も含めて、誰にとっても、それがまず重要です。
(チャーリー)





























