この記事が含む Q&A
- インターネット依存が強いと、1年後に自殺念慮を示すリスクが高くなる可能性があるため注意が必要ですか?
- はい、研究はインターネット依存と自殺念慮の関連を1年後まで追跡して確認しています。
- ADHDがあると、インターネット依存と自傷行為の関連は見られますか?
- はい、ADHDの子どもでは関連が有意でしたが、ADHDなしにはみられませんでした。
- ハイリスク群とされる子どもへの支援のポイントは何ですか?
- やり抜く力・自己コントロールの弱さ、計画性の不足、怒りの外化、友人関係の満足度低下を対象に早期支援と、現実世界の活動と親の適切な見守りが重要です。
インターネットは、いまや思春期の子どもたちにとって、生活の一部です。
友だちとつながり、ゲームを楽しみ、動画を見て、情報を集める。その一方で、「やめたいのにやめられない」「気づけば何時間もたっている」という声も少なくありません。
では、どのような子どもが、インターネットへの依存を強めやすいのでしょうか。
そして、それは心の健康とどのように関わっているのでしょうか。
台湾の高雄医学大学附属病院、高雄長庚紀念病院、および米国ワシントン大学医学部などの研究チームは、11歳から18歳の思春期の子ども349人を対象に、1年間にわたる追跡研究を行いました。
ADHDと診断されている子ども176人と、診断のない子ども173人が参加しています。
この研究の特徴は、「その時点での関連」だけでなく、「1年後にどうなるか」まで見ている点にあります。

まず研究者たちは、インターネット依存の強さと、さまざまな個人要因・環境要因との関係を調べました。
その結果、インターネット依存の強さと強く関係していたのは、「やり抜く力や自己コントロールの弱さ」「計画を立てるのが苦手であること」「怒りを外に表しやすいこと」「年齢がやや高いこと」「友人関係への満足度が低いこと」でした。
とくに目立っていたのが、「やり抜く力や自己コントロールの弱さ」です。
これは、注意を保ち続けることが難しい、最後まで物事をやりきれない、といった傾向を指します。
インターネットの世界では、現実のような持続的な努力を必要としない活動が多くあります。
ゲームも動画も、すぐに反応が返ってきます。
達成感も短時間で得られます。
計画を立てたり、長期的な目標を考えたりしなくても、その場で楽しめます。
研究者たちは、こうした特性をもつ子どもにとって、インターネットが「現実での困難から逃れられる場所」になりやすいのではないかと考えています。

また、「怒りを外に出しやすいこと」も、インターネット依存と関係していました。
怒りや攻撃性が高いと、現実の人間関係で衝突や孤立を経験しやすくなります。
その結果、よりコントロールしやすいオンライン空間に居場所を求める可能性があります。
さらに、友人関係への満足度が低いことも関連していました。
現実での友だち関係に満足していないと、インターネット上でのつながりに依存しやすくなるという構図です。
興味深いことに、「家族関係への満足度」は、今回の分析では明確な関連を示しませんでした。
友人関係の質のほうが、より強く関わっていたのです。

では、ADHDの診断そのものはどうだったのでしょうか。
過去の研究では、ADHDとインターネット依存の関連が報告されています。
しかし今回の研究では、「ADHDであること」自体は、インターネット依存の強さと有意な関連を示しませんでした。
研究に参加したADHDの子どもたちは、児童精神科外来に通院し、薬物療法などの治療を受けていました。
研究者たちは、治療によって衝動性が改善している可能性や、保護者がインターネット利用をより注意深く管理している可能性があると述べています。
つまり、「診断があるかどうか」よりも、「どのような特性をもっているか」「どのような環境にいるか」のほうが重要であることが示唆されました。

さらにこの研究は、インターネット依存と心の問題との関係も調べました。
まず、同じ時点で見ると、インターネット依存が強い子どもほど、抑うつ(うつ症状)を抱えている割合が高いことがわかりました。
また、自傷行為(自殺を目的としない自己傷害)とも関連していました。
ここでとくに注目すべき結果がありました。
ADHDのある子どもでは、インターネット依存と自傷行為の関連が有意でしたが、ADHDのない子どもでは、その関連はみられませんでした。
つまり、ADHDがある場合、インターネット依存と自傷行為との結びつきが強くなる可能性があるということです。
研究者たちは、ADHDのある子どもは感情調整や対人関係の困難を抱えやすく、そのストレスに対処するために自傷行為を選びやすい可能性を指摘しています。
そこにインターネット依存が加わると、負の感情や対人トラブルがさらに増幅されるのかもしれません。
そして最も重要な結果のひとつが、「1年後の自殺念慮」との関係です。
インターネット依存が強かった子どもは、1年後に自殺念慮を示すリスクが有意に高くなっていました。
これは、性別や年齢、ADHDの有無を調整したうえでも認められた結果です。
一方で、1年後の抑うつや自傷行為については、インターネット依存からの明確な予測は示されませんでした。
しかし、自殺念慮に関しては、インターネット依存が独立した予測因子となっていました。
これは、インターネット依存が単なる「生活習慣の問題」ではなく、将来の深刻なメンタルヘルス問題と結びつく可能性があることを意味します。

では、私たちは何に注意すればよいのでしょうか。
研究者たちは、やり抜く力や自己コントロールが弱い子ども、計画を立てることが苦手な子ども、怒りを外に出しやすい子ども、友人関係への満足度が低い子どもを「ハイリスク群」として早期に支援する必要があると述べています。
また、現実世界での活動を増やし、友人関係の質を高めること、親が適切にインターネット利用を見守ることの重要性も強調されています。
そして、インターネット依存が強い子どもには、抑うつや自殺念慮、自傷行為の評価を含む包括的なメンタルヘルス評価が必要だとしています。
この研究は、インターネット依存を「単なる使いすぎ」として片づけるのではなく、その背景にある特性や人間関係、そして将来の心のリスクまで含めて考える必要があることを示しました。
思春期は、自己コントロールや計画性、対人関係スキルがまだ発達の途中にある時期です。
その揺れの中で、インターネットが一時的な避難場所になることもあるでしょう。
しかし、その避難が長引いたとき、どのような心の負担が積み重なっていくのか。
今回の1年間の追跡研究は、その問いに対する重要なヒントを示しています。
インターネット依存は、子どもたちの未来の心の健康と切り離して考えることはできません。
家庭や学校、医療の現場で、特性と環境の両方を見つめながら、丁寧に支えていく視点が求められています。
(出典:Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health DOI: 10.1186/s13034-026-01045-0)(画像:たーとるうぃず)
大きな助けになります。
けれど、放置するようなことなく、十分な注意も必要です。
(チャーリー)




























