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ADHDや算数障害の子に共通する「時間の感覚」の弱さとは

time 2026/02/24

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

ADHDや算数障害の子に共通する「時間の感覚」の弱さとは

この記事が含む Q&A

ADHDや発達性ディスカルキュリアの子どもにとって「時間の感覚」とは何を指しますか?
時間の長さを見積る・再現・比較・管理といった下位能力の総称で、診断名より特性の強さが関連を説明します。
研究で困難を示したのはどのような子どもですか?
不注意・多動が強い子どもや算数困難がある子ども、さらに両方を持つ子どもで時間処理の困難が顕著でした。
どんな支援が有効と示唆されていますか?
視覚タイマーや時間の見通しを示すツール、段階的なスケジュールなど、診断名ではなく特性に基づく具体的支援が選びやすくなるとされています。

時間がわからない。
そう聞くと、少し大げさに感じるかもしれません。

しかし、もし「30秒がどのくらいか」を正確に感じられなかったらどうでしょうか。
もし「あと何分で終わるのか」「この作業にどれくらいかかるのか」をうまく見積もれなかったらどうでしょうか。

時間は目に見えません。けれど、私たちは常に時間の中で生きています。学校の授業、宿題の締切、友だちとの約束、ゲームの待ち時間。すべては時間と結びついています。

今回の研究は、「時間の感覚(センス・オブ・タイム)」という能力に注目しました。そしてそれが、ADHDや発達性ディスカルキュリア(算数障害)とどのように関係しているのかを、大規模なデータで調べたものです。

研究は、ヴィータ・サルーテ・サン・ラファエーレ大学、パドヴァ大学、ミラノ=ビコッカ大学、IRCCSサン・ラファエーレ病院などの研究チームによって行われました。

対象となったのは、6歳から13歳までの子ども811人です。その中には、ADHDの診断を受けている子ども、発達性ディスカルキュリアの診断を受けている子ども、両方の診断を受けている子ども、そして診断のない子どもが含まれていました。

研究の中心にあるのは、「時間の感覚」という考え方です。

時間の感覚とは、ただ時計が読めるという意味ではありません。論文では、次のような能力を含むものとして定義されています。

・時間の長さを見積もる
・時間を再現する
・2つの時間の長さを比べる
・時間を管理する

たとえば、30秒の動画を見せられて「何秒でしたか」と聞かれる課題。
電球が光った時間と同じ長さだけ、スペースキーを押し続ける課題。
2つの音のうち、どちらが長かったかを答える課題。

こうしたコンピュータ課題で「時間の処理(タイム・プロセッシング)」を測定しました。

さらに、「時間の管理(タイム・マネジメント)」については、子ども自身、保護者、教師にアンケートを行い、日常生活での時間の使い方を評価しました。

そして同時に、

・不注意
・多動・衝動性
・算数能力

も測定しました。

その結果、いくつかの重要なことが明らかになりました。

まず、ADHDや発達性ディスカルキュリアの診断を受けている子どもは、平均的にみて時間の感覚の成績が低い傾向がありました。

ただし、ここで重要なのは、「診断」そのものよりも、「どの特性がどれだけ強いか」の方が、時間の感覚との関係をよりはっきり説明できたことです。

研究では、2つの見方をしました。

ひとつは「診断別」の比較です。
もうひとつは、「不注意や多動がどのくらい強いか」「算数がどのくらい苦手か」という“連続的な特性”で分ける方法です。

すると、後者――つまり特性の強さで分けた場合のほうが、時間の感覚との違いがよりはっきり現れました。

特に、不注意や多動が強い子どもは、

・時間を再現する課題
・時間を比べる課題
・時間管理のアンケート

で大きな困難を示しました。

一方、算数の困難も時間の感覚と関連していましたが、その影響は「不注意や多動」ほど強くはありませんでした。

つまり、時間の問題は「算数が苦手だから」だけでは説明できないのです。

さらに重要なのは、「不注意・多動」と「算数困難」の両方をもつ子どもは、より大きな困難を示したという点です。

これは、影響が足し算のように重なっていることを意味しています。

興味深いのは、時間の感覚の中でも、どの課題で差が出るかが違っていたことです。

たとえば、「30秒の動画の長さを見積もる課題」では、不注意との関連はそれほど強くありませんでした。

しかし、「短い時間を正確に再現する課題」や「2つの音の長さを比べる課題」では、不注意との関連がはっきり出ました。

これは、時間の感覚がひとつの能力ではなく、いくつもの下位能力から成り立っていることを示しています。

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時間を感じることには、

・注意を向け続ける力
・ワーキングメモリ(作業記憶)
・比較する力
・見通しを立てる力

などが関わっています。

特に、注意や実行機能(エグゼクティブ機能)との結びつきが強いことが、この研究からは読み取れます。

時間管理のアンケートでは、教師や保護者の評価がとても強く関連していました。

学校での行動――
課題を時間内に終えられるか。
待つことができるか。
活動の順番を守れるか。

こうした日常の場面で見える行動が、時間の感覚と深く関係しているのです。

研究者たちは、時間の感覚を「診断ごとの特徴」としてではなく、「神経発達のスペクトラム全体に共通する次元」としてとらえるべきだと結論づけています。

診断名は大切です。
しかし、同じ診断名でも中身は大きく違います。

ADHDと診断されても、時間の感覚に問題がない子もいます。
逆に診断がなくても、時間管理に大きな困難を抱えている子もいます。

研究では、ADHDと診断された子どもの約44%が時間処理に困難を示していました。
つまり、半分以上は時間の感覚が大きく損なわれているわけではありません。

この事実は、とても大切です。

診断はラベルです。
しかし、子どもの困難はラベルよりも細かい特性の組み合わせでできています。

研究者たちは、今後の臨床や教育の現場では、診断だけでなく、

・どの認知特性が弱いのか
・どの時間スキルが苦手なのか

を具体的に評価することが重要だと述べています。

時間の感覚の弱さがわかれば、

・視覚タイマー
・時間の見通しを示すツール
・段階的なスケジュール

など、具体的な支援を選びやすくなります。

今回の研究は横断研究であり、因果関係はわかりません。
しかし、811人という大規模データから、時間の感覚が神経発達の重要な共通基盤であることが示されました。

時間は見えません。
けれど、時間の感じ方の違いは、学びや生活の中で確かに影響を与えます。

「待てない子」
「時間を守れない子」
「計画が立てられない子」

その背後にあるのは、性格ではなく、時間を処理する仕組みの違いかもしれません。

時間の感覚を、診断名ではなく“特性の連続体”として見る。

それは、自閉症やADHD、学習障害を持つ子どもたちを、より細やかに理解するための、新しい視点なのかもしれません。

そしてそれは、「この子は何ができないか」ではなく、「どの仕組みが弱く、どこを支えればいいのか」という問いへと、私たちの目を向けさせてくれます。

時間の感覚は、目に見えません。
けれど、確かに存在しています。

その違いを理解することは、子どもたちの毎日を、少しだけ生きやすくする手がかりになるのかもしれません。

(出典:Brain Sciences DOI:10.3390/brainsci16020249)(画像:たーとるうぃず)

「時間の感覚」

そして、それに困難をかかえると、順番を待つ、計画を立てる、そうしたことにも影響があると。

そうした困難もあること、知っておかなければなりません。

ADHD・知的障害の子に見られる時間の問題と日常生活の関係

(チャーリー)

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