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自閉症の人がかかえることの多い不安障害や強迫障害、分離不安

time 2020/09/10

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自閉症の人がかかえることの多い不安障害や強迫障害、分離不安

自閉症スペクトラム障害(ASD)は社会性やコミュニケーションの困難と反復的な行動が一般的な特徴です。
重度の自閉症は2歳になるまでに診断されることが多いものの、高機能の自閉症の人はかなり後にならないと診断されないことがあります。
高機能自閉症の成人は、注意欠陥多動性障害(ADHDまたはADD)の症状と間違われることがあります。

自閉症では、かかえる困難が軽度な人もいれば、話すことができないなど深刻な困難をかかえる人もいます。
自閉症といっても、症状も行動も一人ひとり異なります。

不安は自閉症の中核的特徴とは考えられていませんが、一般的に不安障害は自閉症の成人にはよく見られます。

最近の研究では、発達障害などでない成人では不安障害をかかえる人は8.7パーセントであるのに対し、自閉症スペクトラム障害(ASD)をかかえる成人では20パーセント以上であることが明らかになっています。

不安による心理社会的症状としては、睡眠障害、強迫観念、集中困難などです。
身体的症状としては、胃の不調から心臓の動悸やめまいなどになります。

不安は自閉症の中核的な側面である反復行動や社会的ひきこもりに大きな影響を与える可能性があります。
そのため、自閉症の人の不安を認識し、ケアすることは重要です。

不安は自閉症スペクトラムの人たちの生活を複雑にし、特に社会的な世界で過ごすのを困難にします。
不安は、就職や自立した生活を妨げることにつながります。

不安障害がそのまま放置されると、うつ病、攻撃行動、自傷行為に関連してきます。

米マサチューセッツ州北東アーク自閉症サポートセンターの共同ディレクターであるスーザン・G・ギルロイはこう言います。

「重度の不安を持っているのに、そのままにされている発達障害の人がいます。
必要な支援を受けていないために、非常に厳しい生活を送っています」

自閉症と併存する不安障害を認識し、治療する方法をよりよく理解することで、自閉症と同時に不安障害をかかえる成人の生活の質を向上させることができるはずです。

自閉症の人の不安障害の存在を認識することは、症状が重複していたり、症状の発現が変化していたりするために簡単ではありません。
たとえば、言語能力が低い患者は、自分の内面の状態を表現することができず、代わりに破壊的な行動を通して不安を示すことがあります。
言葉は流暢であるものの、自分の感情を理解し表現するのに苦労している可能性もあります。

そうした理由から、不安障害を診断するために一般的に使用される質問票は、自閉症の人の場合には正しく機能しないかもしれません。
そのため医師は、震え、落ち着きのなさ、発汗、体の痛み、睡眠障害などの不安の身体的徴候を探るべきでしょう。
また、家族が不安の徴候に気づいているかどうかを確認するために、家族に質問をしてもよいはずです。

米不安うつ病協会では、不安障害が患者や環境によっては、次のような異なる症状が現れることを説明しています。

■ 特定のものに対しての恐怖
突然の刺激(例:広告のジングル、風船の破裂、掃除機、トイレの水洗、学校のアラーム)、
典型的な恐怖(例:暗闇、昆虫、針)などにです。

■ 強迫性障害
自閉症の典型的な反復行動は苦痛を伴いません。
しかし、強迫行為は不安を和らげるための対処メカニズムとして実行されます。
その不安をもたらす原因を特定することが重要です。

■ 社会不安
社会的コミュニケーション障害の直接的な結果として発症することがあります。
特に患者が高機能であり、自分の社会的無力さを自覚している場合に発症することがあります。
社会不安は、社会的な状況下で自分が否定的に評価されることへの強い不安または恐怖と定義されます。
社会的状況の回避につながり、その結果、社会的スキルを実践する機会が制限され、まわりの人たちからの否定的な反応や、さらにはいじめにつながることがあります。

■ 分離不安
社会的な困難の結果、親の過保護な対応につながり、愛着のある人から分離しなければならないときに分離不安が生じることがあります。

不安障害と自閉症は別々の障害であるため、不安障害は自閉症とは異なり治療することができます。
不安の治療には、抗うつ薬、抗不安薬などが一般的に利用されています。

しかし、これらの薬剤が成人のASD患者にも同じように効果があるかどうかを見極める研究はほとんど行われていません。

コクラン共同研究によれば、Luvoxという薬が自閉症の成人の強迫性行動の治療に役立つ可能性があります。fluoxetine(Prozac)も同様に不安の治療に役立つ可能性があることが示されています。
これらの薬剤は、自閉症をかかえる成人の治療には「ケースバイケース」で使用されるべきというのが、その研究の結論でした。

医療専門家は、自閉症の人は低用量の薬物でも敏感に反応する可能性があることに留意すべきと指摘します。
自閉症の成人では、薬物の効果や副作用に大きなばらつきがあるからです。

自閉症の成人の不安障害は、薬物療法だけでは懸念される症状を軽減することはできません。
一般的に他の治療方法も必要だと考えられています。
スキルトレーニング、環境の変化、行動技術、感覚刺激なども行われます。

認知行動療法(CBT)は、ASDを持つ青少年、特に十分な言語能力を持つ高機能者において、不安障害や強迫性障害を効果的に治療します。
CBTは、ネガティブな感情や不健康な反応を減らすことを目的として、状況の解釈の仕方を変えることに焦点を当てています。
自閉症の人の不安に対するCBTには、以下のようなことが行われます。

・有用な不安と無用な不安を区別することの学習
・不安思考を把握し、実行力を高めるための学習
・原因に対して慣れていくこと
・親子での学習
・やりとりの練習をして、相手との関係性を高める
・抽象的な困難を視覚化する

自閉症の成人が不安を管理し理解するためには、生活の中での治療も重要です。
英自閉症協会では、日記をつける、専用のアプリを利用する、パニックを防ぐための予防計画を作成するなどを薦めています。

(出典:米ADDITUDE)(画像:Pixabay

障害を抱える人が、不安を多くかかえることは誰でも想像できるはずです。

そう思ったら、その気付きを無視せずにあたたかく見守って頂きたいと願います。

自閉症の成人はそうでない成人に比べ不安障害の可能性が2倍以上

(チャーリー)


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