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発達障害に影響を与える46の遺伝子を特定。米スタンフォード大

time 2023/10/04

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発達障害に影響を与える46の遺伝子を特定。米スタンフォード大

米スタンフォード医学の研究者たちは、発達障害に関連するとされる多くの遺伝子を調査し、実際に影響を与える遺伝子を特定しました。
今回の研究方法は、発達障害に関わる薬開発を加速できる可能性があります。

これまでの研究では、少なくとも500の遺伝子が発達障害と関連付けられています。
しかし、これらの遺伝子のほとんどが脳の機能にどのように影響を与えるかは科学者たちには全くわかっていません。
“Nature”にオンラインで公開された今回の研究は、それを明らかにするものです。

この研究のシニア著者であるセルジオ・パスカ博士は、スタンフォード大学の精神医学と行動科学の教授であり、リード著者はパスカ博士グループのポストドクトラルスカラーであるシャンリン・メン博士です。

脳の大脳皮質には興奮性と抑制性の2つの主要なニューロンがあります。

興奮性のニューロンは他のニューロンを活性化させます。
一方、抑制性のニューロンは他のニューロンの活動を沈めます。
これら、抑制性と興奮性のニューロンが結合し、脳内の信号活動を形作っています。

人間の場合、大脳皮質と呼ばれる脳の最も外側で最も新しく進化した部分の細胞の半分以上は抑制性です。

科学者たちは、抑制性ニューロンと興奮性ニューロンの数や機能の不均衡が、自閉症スペクトラム障害やてんかんの原因の一部である可能性があると考えています。
パスカ博士はこう言います。

「もしそうであるなら、これらの障害の治療法として、大脳皮質内のこれらの細胞の機能的なバランスを変える方法が役に立つかもしれません」

しかし、発達障害に関与する多くの遺伝子をどのように理解すればいいのでしょうか。
簡単に言えば、関連付けられている数百の遺伝子の存在は、それぞれ異なる治療が必要となる、数百の異なる発達障害があることを意味するのでしょうか?
それとも、いくつかの異なる遺伝子は同じような働きをし、もっと少ない種類の発達障害のタイプに導くのでしょうか?

「もしそれが後者であれば、治療方法は同じようなものになるのかもしれません」

最近まで、人間の脳の早期発達を研究する方法はありませんでした。

しかし、スタンフォード脳器官発生プログラムのディレクターであるボニー・イテンス博士たちが、成長途中の人間の脳の詳細な探索を可能にする技術を開発しました。
特別な実験用ガラス器具、細胞増殖を刺激する物質である成長因子、および単純な皮膚生検から生成できる人間誘導性多能性幹細胞(iPS細胞)を組み合わせることで、脳の一部である人間の大脳皮質などに酷似した解剖学的構造と機能を持つ小さな神経組織の小塊を作れるようになりました。

パスカ博士はこれを「皮質オルガノイド」と呼んでいます。

そして、iPS細胞への栄養分と成長因子を調整することで、皮質とは別の脳構造である「外套下部」と呼ばれる神経組織に近似するオルガノイドを生成できることがわかりました。

大脳皮質よりも前頭葉の深部に位置する外套下部は、胎児と幼児の発達中に重要な役割を果たします。

それは抑制性ニューロンである「介在ニューロン」を生成します。
そして、これらの介在ニューロンは大脳皮質と他の部位に移動し、興奮性ニューロンと結合して複雑な信号生成が可能な回路を形成します。

パスカ博士は、外套下部オルガノイドを皮質オルガノイドの隣に置きました。
数日待つことで、これらの2つの構造が「アッセンブロイド」と呼ばれるものを形成し、介在ニューロンが外套下部から皮質に移動し、そこで興奮性ニューロンと結合する様子を初めて観察することができました。

そして、今回の新しい研究では、この最新の技術とCRISPR(クリスパー)と呼ばれる別の技術を組み合わせました。

CRISPRは分子のはさみと分子のしるしを使用します。
これで、研究者は特定の DNA 配列を自由に切り取ることができ、選択した遺伝子をゲノムから取り除いたときに何が起こるかを確認することができます。

まず、パスカ博士らは発達障害に関連する遺伝子を介在ニューロンで活性化される425個に絞りました。
これらの遺伝子を持つiPS細胞を生成し、介在ニューロンのみ光るようにしました。
こうして、外套下部オルガノイドを生成し、介在ニューロンを外套下部が生成する他の脳細胞タイプと区別できるようにしました。
そして、これらの細胞からCRISPRを使って発達障害に関連する425の遺伝子を取り除きました。

研究者たちは、こうしたiPS細胞から外套下部オルガノイドを生成しました。
44日間の培養後、いくつかのオルガノイドはまったく光ることはありませんでした。
つまり、介在ニューロンができなかったことを示しました。

これらのオルガノイドの遺伝子を調べることで、CRISPRのはさみによって無効にされた遺伝子を特定し、13の遺伝子を特定することができました。

介在ニューロンの移動に影響を与える遺伝子を探すために、皮質オルガノイドと介在ニューロンを生成する能力をもつ外套下部オルガノイドを並べ、アッセンブロイドを形成させました。
30日後、それらの約1000個を取り出しました。
取り出したアッセンブロイドの外套下部の介在ニューロンと、皮質の介在ニューロンを比較しました。
そして、介在ニューロンの移動に影響を与えた、33の遺伝子も見つけました。

つまり、大脳皮質内の介在ニューロンの発達を妨げる、46の遺伝子を特定することができました。
これは、関連があるとされた425個の遺伝子の約10パーセントにあたります。

これらの遺伝子のいくつかはこれまでに特定されておらず、その機能は予想外だったとパスカ博士は言います。

しかし、他の研究で特定された遺伝子と一致もしていました。
パスカ博士はこう言います。

「これで安心しました。間違っていないことを意味します」

(出典:米スタンフォード大学医学部)(画像:Pixabay

専門用語が多くてややこしいですが、こういうことです。

1.発達障害は、脳内の抑制性と興奮性のニューロンのアンバランスが原因と考えられる。

(このアンバランスを解消する方法が見つかれば、発達障害の問題を助ける方法につながるはず)

2.発達障害に関わる遺伝子は約500程度あるとされているが、詳しくはわかっていなかった。

3.今回の研究で抑制性のニューロンである「介在ニューロン」の発達を妨げる46の遺伝子を特定できた。

4.「オルガノイド」とCRISPRにより今回の研究を行うことができた。

自閉症につながる脳発達の2つの異常パターン。米イェール大研究

(チャーリー)


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