
- インクルーシブ・ダイニングとは何ですか?
- 自閉症の方がレストランで快適に過ごすためにはどんな工夫が必要ですか?
- 食事の場が配慮された結果、家族にどのような影響があるのでしょうか?
照明は控えめで、音楽は穏やか。そして必要なら、チキンにはフィジェットトイ(手遊びおもちゃ)や耳を保護するイヤープロテクターもついてきます。
私は娘のリズと一緒に、カナダ・オタワでの「St-Hubert ロティサリー」で行われた「インクルーシブ・ダイニング」(誰もが安心して利用できる食事の場)に参加しています。
このプログラムは、自閉症の人々やその家族がレストランでの食事を負担なく楽しめるように配慮された空間を提供するものです。
リズは25歳になり、特にフライドポテトがあるチキンレストランでは慣れたものですが、かつてはそうではありませんでした。
家族で外出すると、まるで爆弾処理のように緊張が走り、食事の途中で大泣きして暴れる子どもを抱え、急いで店を出る――そんな日々がありました。
St-Hubertは、ケベック州の団体「Autiste & Majeure」や「Giant Steps」と協力し、このインクルーシブ・ダイニングのプログラムを開発しました。
同社は以前から自閉症のスタッフを雇用しており、その取り組みをさらに発展させた形です。
「St-Hubert財団は12年間、さまざまな目的に寄付を行ってきましたが、ある時、『私たちのテーマは何か』と考えるようになりました」
と、St-Hubert財団の広報ディレクターであるジョゼ・バイヤンクールは話します。
「そこでGiant Stepsと話し合い、彼らが『では、まず自閉症の人を雇用するのはどうですか?』と言ってくれたんです。
そして、さらに『お客様としても自閉症の方々を受け入れる環境を作ったらどうでしょう?』というアイデアが生まれました」
2年前にカナダ・モントリオールの数店舗で試験的に始まったこのプログラムは、現在約80店舗に拡大しました。
そして2025年1月26日、オタワのSt-Hubert St. Laurent店とSt. Joseph Boulevard店で初開催されました。
Giant Stepsはスタッフに自閉症の基本的な知識を提供し、好ましい座席位置の選定を支援。
また、利用者向けに「感覚サポートバッグ」を開発しました。
このバッグには、音に敏感な方のためのイヤープロテクター、手遊び用のおもちゃやストレスボール、不安を軽減するためのツール、感情を視覚的に表現できるカード、そして食事が出るまでの時間を計るタイマーが入っています。
リズがメニューを見ながら色塗りをしている間、私はカラフルなシリコン製の「プッシュポップ」に夢中になりました。
これは、プチプチの気泡をつぶすような感触が得られるおもちゃです。
「自閉症の方が日々経験する現実をスタッフがきちんと理解すること。
それがこのプログラムのシンプルな鍵です」
そう、Giant Stepsでインクルーシブ雇用イニシアチブを担当するアラン・ベセットは語ります。
「この目標は共存です。
家族を隅に追いやるのではなく、同時に出入り口やキッチンの近くといった刺激の多い場所に座らせることも避けたいのです」
同様に、日曜の午前11時から午後1時のインクルーシブ・ダイニングの時間帯には、音楽は静かで照明も控えめ。これにより、大きな音や強い光に敏感な自閉症の方々もリラックスしやすくなります。
St-Hubertのウェブサイトには、さらに役立つツールも掲載されています。
すべてのメニューの成分がリストアップされており、食物アレルギーを持つ方々に対応。
また、レストランでの流れを事前に説明するインタラクティブなストーリーも提供されています。
これにより、ドアでの出迎えから支払い、退店までの一連の手順を事前に理解できるようになっています。
ベセットは、他のレストランもSt-Hubertの例に倣い、インクルーシブ・ダイニングを導入することを期待しています。
「ほとんどコストはかかりませんし、従業員にとっても良い効果があります。
そして、これまでアクセスできなかった新しいお客様を迎え入れることができます。
実際、このプロジェクトが始まった時、何人もの家族が『レストランに来たのはこれが初めてです。安心して来られるようになりました』と言ってくれました。
スタッフは、自閉症の方がパニックになったりメルトダウンを起こした時の対応も理解しています。
ただ、St-Hubertで自閉症の方がメルトダウンを起こしたという話は聞いたことがありません。
私の考えでは、そうなる確率は他の子どもと変わりません。
むしろ自閉症の方々の中には、理想的なレストランの客とも言える人が多いのです。
礼儀正しく、熱心で、食事を楽しみ、忍耐強い――まさに理想的な姿です」
リズもまさにその一人です。
彼女はお気に入りのチキンシーザーサラダにフライドポテト、ジンジャーエールを選び、ストローの包装紙を飛ばして笑いながらも(私が教えたのかもしれません)、フライドポテトを分けてくれました。食べ残しを丁寧に箱詰めし、デザートのチョコレートブラウニーを楽しみに待ちます。
開催初日、店舗には私たち親子しかいませんでした。
予約していたもう一組の家族はキャンセルとなり、St. Laurent店には一組の家族が来たという連絡が入りました。
St-Hubert財団のバイヤンクールは、このプログラムが人気のようだと感じつつも、利用者数を記録していないと話します。
「何人の方が来たのかは正確には分かりません。
尋ねないんです。
気づかれずに利用されている方もいるかもしれません。
でも、正直なところ、私たちはそれが良い行いだと思うからやっています。
すべての人が利用したいわけではないでしょうが、利用したい人がいるなら、私たちはここにいます」
(出典・画像:カナダOTTAWA CITIZEN)
なかなか、外食は難しいことが多いです。
こういう機会は本当にありがたいものです。
自閉症の人に「エレベーターとエスカレーター乗り放題」イベント
(チャーリー)