
この記事が含む Q&A
- 自閉症の子どもはいじめの標的になりやすいのですか?
- はい、その社会的な理解の難しさから、いじめのターゲットになりやすいと報告されています。
- 自閉症の子どもたちがいじめを受ける背景には何がありますか?
- 社会的サインの理解や心の理論の苦手さなど、コミュニケーションの難しさと行動の違いによることがあります。
いじめは、すべての思春期の子どもたちにとって大きな問題ですが、自閉スペクトラム症(以下、自閉症)といじめの関係が深まっていることに、多くの親が不安を感じています。
全米いじめ防止センターによると、自閉症の子どもは、同年代の子どもたちに比べて、ほぼ2倍の頻度でいじめを受けており、実に約半数が虐待的な行動を経験していると報告されています。
自閉症の子どもたちは、周囲とのやりとりに必要な「社会的なサイン」を読み取るのが苦手だったり、行動が他の子どもたちと少し違っていたりすることから、いじめの標的にされやすくなっています。
また、そうした社会的な困難によって、大人に助けを求めることさえ難しくなる場合もあります。
さらに、自閉症の人たちは「他者の考えを推測する力(=心の理論)」に苦手さを持つことが多く、相手が本心とは違うことを言っていても、それに気づきにくい傾向があります。
このため、からかわれたり、だまされたりしても、うまく対処できずに混乱し、傷つきやすくなってしまうのです。
研究では、自閉症の子どもたちが通常の学校教育や社会活動により多く参加するようになると、かえっていじめのリスクが高まることも示されています。
いじめは学業面での成長を妨げるだけでなく、深刻なメンタルヘルスの問題、とくに自殺との関連があることも大きな懸念点です。
ある若い女性は、自身の体験をこう語っています。
「私の最大の弱点のひとつは『心の理論』にあります。
私は、人が言うことをそのまま信じて、その行動も言葉と一致すると疑わないのです。
でも、そうならないとき、私は非常に混乱します」
彼女は続けます。
「誰かが『あなたを大切に思っている』と言いながら、自己中心的な行動で私を傷つけるのが理解できません。
誰かが言葉と違うことをすると、私は身体的にも不快になります。
それでも私は人の良い面を信じてしまい、必要以上にチャンスを与えてしまうのです」
自閉症の特性は見た目にはわかりにくく、社会的な難しさも伴うため、とくにアスペルガー型の子どもたちは、いじめや搾取のターゲットになりやすい現実があります。
一度標的にされると、自閉症の子どもたちは自己主張することが難しく、自信のなさや、怒りをうまくコントロールできないことから、さらに状況が悪化することもあります。
米シアトル小児病院のデイビッド・カメニッシュ医師によると、「一人で食事をとる」「チーム分けで最後まで残される」「パーティーに呼ばれない」といった経験もよくあり、それがさらに自己肯定感を傷つける原因になっています。
さらに、周囲になじもうとする努力がうまくいかないと、悪意のある扱いを受けても我慢してしまう傾向が強まり、いじめや搾取にさらに弱くなってしまうのです。
通常学級に自閉症の生徒を受け入れる場合、教師には特別な配慮が求められます。
しかし、支援をしながらも「特別扱いしない」というバランスを取ることは、とても難しい課題です。
作家のジョン・エルダー・ロビソンは、自閉症のティーンエイジャーが抱える共通の悩みについて語っています。
それは「周りに受け入れられたいけれど、自分を変えたくない」という葛藤です。
この思いは誰にでもありますが、自閉症の子どもたちは、特有の行動の難しさから、とくに大きな壁にぶつかりやすいのです。
ロビソンは、自閉症の特性が一人ひとり違うことを強調し、「全員に同じ対策をすればいい」という考え方では、いじめ防止にはつながらないと指摘しています。
むしろ、一人ひとりに合わせた支援と理解が不可欠だと訴えています。
また、全国いじめ防止センターが提案しているような「自分で立ち向かう」といった一般的ないじめ対策は、自閉症スペクトラムの子どもたちにとっては、非常に難しいことも多いのです。
自閉症の子どもたちは、周囲になじみたいという気持ちは強いものの、いじめを止めるために自分から行動するのが難しく、うまく助けを求められないことも少なくありません。
いじめや「違う存在」として扱われる経験は、自閉症の人たちの心にも大きな影響を与え、不安やうつなどのメンタルヘルスの問題につながりやすいこともわかっています。
教師たちは、いじめ対策の研修を受けてはいるものの、実際には生徒ごとに作成される「個別教育計画(IEP)」の制約を受けるため、柔軟な対応が難しい場合もあります。
「一律の方法」での支援は、自閉症の生徒たちの多様なニーズに応えきれないのです。
研究によれば、いじめに対処するうえで最も効果的なのは「仲間のサポート」です。
いじめに遭った子どもたちは、「そばにいてくれる」「大人に助けを求めてくれる」といったクラスメートの支援が、状況を大きく改善する鍵になったと答えています。
(出典:米Autism Parenting Magazine)(画像:たーとるうぃず)
米国の親向けの話ですが、参考にならないわけがありません。
IQ162のアスペルガー少女は学校ではいじめられ、問題児扱い
(チャーリー)