
この記事が含む Q&A
- profound autism(深刻な/重度自閉症)とは何を指しますか?
- 8歳以上で、著しい知的障害や基本的な自力生活困難な状態を示す人々です。
- なぜ「profound autism」の定義が重要なのですか?
- その明確な定義が、支援や研究の質向上、政策の適正化につながるからです。
- 「profound autism」の診断はDSMやICDに正式に取り入れられる必要がありますか?
- はい、より正確な支援と理解のために、正式な診断基準への採用が望まれています。
自閉症スペクトラムの中でも、最も障害の程度が重い人たちを示す新たな呼称「profound autism(深刻な/重度自閉症)」が提案されてから、3年以上が経ちました。
これは、2021年にランセット委員会が導入を提案したもので、研究者、臨床医、政策立案者、自閉症の当事者、そして保護者など、さまざまな立場の人々に広く受け入れられています。
Google Scholarで「profound autism」を検索すると、2021年以降に発表された論文がすでに約500件にのぼります。
1990年代からこの層が研究から排除されてきた事実をふまえると、これは大きな前進です。
では「profound autism(深刻な/重度自閉症)」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
ランセット委員会は、次のような人々にこの呼称が適用されるべきだとしました。
すなわち、「何か問題が起きた場合に対応できる大人が24時間そばにいる必要があり、住まいに完全に一人で残されることができず、日常生活の基本的な適応行動を自力でこなすことができない」人々です。
ほとんどの場合、このような状態は「著しい知的障害(たとえばIQが50未満)」「ごく限られた言語能力(たとえば、見知らぬ人に意味の通じる文章での会話が困難)」、あるいはその両方によって生じるとされています。
ただし、幼い子どもの発達は予測が難しいため、8歳未満の子どもにこの呼称を使うのは避けるべきとされています。
長年、「自閉症スペクトラム障害」という広範な診断名が、ハーバード大学を卒業するような高機能の人々から、重い認知や行動の困難を抱える人々まで一括して含めてしまうことに不満を持っていた研究者たちは、この新しい呼称によって、最も支援を必要とする人々に焦点を当てられると歓迎しました。
しかし同時に、これまでの研究では対象者の分類方法が微妙に異なっていたため、既存のデータをうまく活用できないという問題もありました。
オーティズム・サイエンス・ファウンデーションの代表であるアリソン・シンガーは、そうした違いについて説明しています。
たとえば、ある研究では8歳未満の子どもも対象に含まれていたり、IQの下限が50ではなく70で設定されていたりしました。
また、自己傷害や攻撃性といった行動を追加の基準とした研究もありました。
これらの行動は、ランセット委員会でも「profound autism(深刻な/重度自閉症)と関連する」とされていましたが、「それによって定義されるわけではない」とも明記されていました。
こうした微妙な違いがあるために、研究結果同士を比較したり一般化したりすることが難しく、共通の定義が必要だという認識が高まりました。
このような背景から、広く信頼を得られる定義を作るには、多様な意見を取り入れ、フィードバックや調整の機会を設ける必要があるとされました。
そこで、オーティズム・サイエンス・ファウンデーションは、プロファウンド・オーティズム・アライアンスと協力し、「デルファイ法」と呼ばれる意思決定手法を用いた合意形成プロジェクトを支援しました。
デルファイ法は、教育、医療、ビジネスなどの分野でも広く用いられている方法です。
世界中から約140人の研究者、臨床医、保護者、当事者がこのプロセスに参加しました(ちなみに筆者自身もその一人でした)。
このプロジェクトは1年近くをかけ、つい先週、世界最大の自閉症研究会議「INSAR(国際自閉症研究学会)」の年次総会にて、その合意定義が正式に発表されました。
合意された「profound autism(深刻な/重度自閉症)」の定義は以下の通りです。
- 自閉症の診断基準を満たしている。
- 少なくとも8歳以上であり、これ以前にも特徴が見られることはあるが、8歳未満への適用は避けられる。
- 心身の健康、安全、福祉を確保するために、年齢に見合わないレベルで大人の監督を必要とする(例:脱走、怪我、周囲への無理解などのリスクがあるため)。
- 年齢に比して著しく低い適応行動能力を示し、入浴・食事・着替えなどのほとんどの基本的な日常生活を自力で行えない。
- a. IQが50未満であるなど、重度の認知的な障害を持つ
b. 単語や決まり文句以外の発話はほぼなく、基本的な欲求を伝えること以外の言語的コミュニケーションは行わない - これらの特徴が、一時的なものではなく、さまざまな環境や状況でも持続的に見られる。
INSARでのこの定義発表は、非常に前向きに受け入れられました。
シンガーは「今年の多くの発表が、生物学的、臨床的、遺伝的に明確な自閉症のサブタイプの存在を示すものでした。
profound autism(深刻な/重度自閉症)は、まさにその枠組みにぴったりはまるものです」と語りました。
また、デルファイプロセスの運営委員を務めたボストン小児病院精神・行動科学部門の臨床部門長マシュー・シーゲルも同意しています。
「明らかに、自閉症の中には全く異なるニーズを持ち、異なる介入から恩恵を受け、異なる結果を経験する人たちがいます。
誰がどのグループに属するのかを明確にすることは非常に重要です」
さらに、シンガーとシーゲルは、今回の定義が今後の発展に寄与すると考えています。
シーゲルは、「このプロセスを通じて、最も重い課題を抱える人々に対して、IQや適応能力を正確に測定するためのより良い評価方法が必要であることが浮き彫りになりました」と述べています。
またシンガーは、そうした新たな評価ツールが、介入の効果測定や診断テストの開発にも活用される可能性があると期待を寄せています。
しかし、その前提として「profound autism(深刻な/重度自閉症)」が、アメリカ精神医学会の『精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)』や、世界保健機関(WHO)の『疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)』において、正式な診断名として認定される必要があります。
シーゲルは、こうした組織が「政治的な判断に基づくのではなく、科学的なプロセスに従って診断基準を更新してほしい」と述べました。
「政治的に許容されることを先に決めて、それに合わせて定義をつくるやり方では、進歩は望めません」とも語っています。
なぜなら、この定義の本質は、深刻な困難を抱える人々への支援や介入、そして政策の前進にあるからです。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、こうした深刻な障害を持つ子どもたちは、自閉症の子どものうち約27%を占めるといいます。
「私たちの目標は、常に人々が自分の最大限の可能性を発揮できるよう支援することでした」とシーゲルは語ります。
「その意味で、広すぎる自閉症スペクトラムという概念は、私たちにとって良い結果をもたらしていません。
いまこそ前進するときです」
エイミー・S・F・ラッツ博士
米ペンシルバニア大学の医学史家
(出典:Psychology Today)(画像:たーとるうぃず)
うちの子について言えば、成人しましたが24時間365日介護が必要で、知的障害もあり言葉もありません。
「重度自閉症」です。
「自閉症」を公言するメディアで見る人たちとは、まったく次元が違います。
きちんと分けるほうが実態にあっていると思います。
(チャーリー)