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男の子と女の子の自閉症、幼児期に大きな差なし。2500人調査

time 2025/05/27

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男の子と女の子の自閉症、幼児期に大きな差なし。2500人調査

この記事が含む Q&A

自閉症は、男女の違いが乳幼児期にはほとんど見られないのですか?
はい、成績の多くの評価項目で性差はほとんど示されませんでした。
自閉症の女の子と男の子の特徴や診断にはどのような差があるのでしょうか?
研究によると、男女間の特徴にはほとんど違いがなく、早期診断に性別の影響は少ないと考えられます。
早期支援や療育の観点から、性別に関わらずどのように子どもたちを見ていくことが大切ですか?
一人ひとりの子どもの特性や行動を丁寧に観察し、個別のニーズに応じた支援を心がけることが重要です。

自閉スペクトラム症、いわゆる自閉症は、乳幼児期からあらわれる発達の特徴であり、世界中で多くの人たちとその家族に深い影響を与えています。

この自閉症は、従来から「男の子のほうがかかりやすい」とされてきました。
そのため、これまでの研究や支援も、男の子を基準にしたものが多く、女の子の特徴や支援のあり方については、まだ十分にわかっていない部分が多く残されています。

今回、アメリカを中心とした研究チームが発表した大規模な国際共同研究では、こうした自閉症の「性差」、つまり、男の子と女の子での違いが、乳幼児期の早い段階でどのようにあらわれるのかを詳しく調べました。

その結果、意外にも「自閉症の子どもたちの間では、男女の差はほとんど見られなかった」ということがわかりました。

研究は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が支援する自閉症研究ネットワーク「ACE(エース)ネットワーク」によって行われました。
中心となったのは、カリフォルニア大学サンディエゴ校をはじめとする大学病院や研究機関で、北米全体から多くの専門家が協力しています。

研究に参加したのは、アメリカとカナダにある12の医療機関・研究機関で評価を受けた、2,618人の幼児たちです。
年齢は12か月から48か月(ちょうど1歳〜4歳くらい)で、そのうち自閉症と診断された子どもが1,539人、発達の遅れはあるけれど自閉症ではない子どもが478人、そして発達に問題のない定型発達の子どもが601人含まれていました。

研究では、子どもたちに対して、言葉の理解力や表現力、身体の動かし方、社会的なふるまい、視線の動き、さらには自閉症の症状の重さなど、さまざまな項目を専門の検査や観察で調べました。
合計で18項目にわたる細かな評価です。
これらのデータを、男の子と女の子で比較することで、性別による違いがどのようにあらわれるのかを分析しました。

まず、最も注目された自閉症のグループ(1,539人)では、18項目のうち、17項目で男女のあいだに有意な差は見られませんでした。

つまり、自閉症の子どもたちは、男の子も女の子も、言葉の発達の具合や社会的なふるまい、視線の動き、診断の重さなどに、ほとんど差がなかったのです。

唯一わずかに差が見られたのは、いわゆる「ジェスチャー」(たとえば、指さしや手を振るといった非言語のコミュニケーション)のスコアでした。
ここでは女の子のほうがやや高い傾向を示しましたが、その差は統計的には非常に小さく、日常的な意味合いでは大きな差とはいえないものでした。

これに対して、定型発達のグループ(601人)では、むしろはっきりとした性差が見られました。
たとえば、言葉の理解力、話す力、細かい運動のコントロール(積み木を積むなど)、人に対する注意の向け方など、10項目において女の子の方が男の子よりも高いスコアを示しました。
これは、一般的に知られている「女の子のほうが言葉が早い」「人との関わりに敏感」という傾向とも一致しています。

また、発達遅延のグループ(478人)では、自閉症グループと同じく、ほとんど男女差が見られませんでした。
これにより、定型発達の子どもでは男女差が比較的早い時期からあらわれるのに対して、発達に何らかの遅れや特性をもつ子どもたちでは、その差が小さくなる、あるいは見られないという可能性が浮かび上がってきました。

さらに研究では、子どもたちの能力の特徴に応じて、「高機能(能力が高い)」「中機能」「低機能」の3つのグループに分けるクラスタリング分析も行われました。
この分析の中でも、男の子と女の子がどのグループに入りやすいかに偏りは見られず、男女がそれぞれバランスよく分布していました。
つまり、「女の子の自閉症は軽い傾向がある」といった仮説も、このデータでは裏付けられなかったのです。

今回の研究の意義は、自閉症の早期診断や支援の場面で、性別によって判断が偏ってしまう危険を見直すきっかけになるという点にあります。
これまでの研究の多くは、男の子のデータに偏っており、診断基準も男の子をもとに作られてきた傾向がありました。
そのため、女の子が見逃されやすかったり、誤った判断をされやすかったりする可能性が指摘されてきました。

しかし、今回の研究では、自閉症の子どもたちにおいて、男の子と女の子での臨床的な特徴に違いがほとんどないことが示されました。

つまり、「女の子は違うタイプの自閉症を示す」というよりも、「そもそも性別による違いは、あまり大きくない」という考え方が浮かび上がってきたのです。

もちろん、今後の研究では、思春期や成人期における性差や、脳の構造やホルモンとの関係など、より複雑なレベルでの分析が必要です。
しかし、今回のように、できるだけ早い時期の子どもたちを対象に、しかも大規模にデータを集めて比較することで、私たちは自閉症の本質に少しずつ近づいていくことができます。

また、研究チームの一人であるカレン・ピアースは、「私たちは、男女の違いを強調するよりも、個々の子どもたちの特性を丁寧に見ていくことが重要だと考えています」とコメントしています。
たしかに、男の子か女の子かということよりも、その子がどのような形で世界を感じ、関わろうとしているのかを見極めていく姿勢こそが、支援にとっては何より大切なのかもしれません。

この研究結果は、「自閉症=男の子に多い=男の子の特徴を基準にする」というこれまでの枠組みに対して、新しい問いを投げかけています。
そして、それは私たちがどのように子どもたちと向き合うべきかを、改めて考えるヒントになるはずです。

今後も、自閉症をめぐる研究は進んでいきます。
そのなかで、こうした多様性を尊重し、一人ひとりの子どもの育ちを支えていく姿勢が広がっていくことを願っています。

(出典:Nature)(画像:たーとるうぃず)

1歳〜4歳くらいにおいては、「女の子は違うタイプの自閉症を示す」というよりも、「そもそも性別による違いは、あまり大きくない」。

ということは、今回の研究結果では、早期診断において男女による影響はないと考えられます。

自閉症によりかかえる困難が少しでも軽減されるように、早期診断、早期療育がよりなされることを願います。

女の子、女性の自閉症:性別に応じた特性と支援のアプローチ

(チャーリー)


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