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自閉症の息子と見つけた本当の幸せ。ジュリアンと家族の軌跡

time 2025/06/21

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自閉症の息子と見つけた本当の幸せ。ジュリアンと家族の軌跡

この記事が含む Q&A

自閉症の子どもと映画館に行く際に気をつけるべきことは何ですか?
子どもの行動を理解し、安心できる環境づくりと柔軟な対応が大切です。
「ジュリアン効果」とは何ですか?
自閉症の人が人と接したり、挨拶したりすることで周囲の人が笑顔になることを指します。
家族が自閉症の子どもを受け入れるために重要なことは何ですか?
無条件の愛と理解を持ち、本人のペースでの成長を尊重することです。

ディズニーの実写映画「リロ&スティッチ」のオープニングが始まったとき、私は息子のジュリアンと隣同士で映画館の席に座っていました。
ジュリアンは体を弾ませながら、小さな歓声を上げ、喜びを全身で表現しています。
いつも一緒にいるアシカのぬいぐるみ「ミスター・カドルズ」を頬にぎゅっと押し当て、その幸せそうな姿は、まさに天にも昇るような気持ちに見えました。

ディズニー映画は、彼にとって時間を問わず大好きなものです。
今回の「リロ&スティッチ」でも、彼はオリジナルのアニメ版と実写版の違いを見つけるたび、嬉しそうに私に教えてくれます。

「マムダッド(両親をまとめてこう呼びます)、アニメではリロはあの女の子を押さなかったよ」
「野生のニワトリはいなかったよ」
「ナニは大学に行かなかった」
「ジャンバもあれはしなかった」

こうしたコメントは、不満から生まれたものではありません。
むしろ彼のディズニーアニメへの驚くほど深い知識から出てきたものなのです。

ジュリアンは映画の最中も何度も席を立ち、映画館の外に出ては、にっこり笑顔でスクリーンに目を戻します。
途中、立ち止まって目を閉じ、人差し指で床を指しながら、彼にしかわからない言葉を小さくつぶやくこともあります。

このような「儀式」のような行動は、ディズニー映画を見るたびに必ず十回以上繰り返されます。それがジュリアンにとって、映画を思いきり楽しむために欠かせない大切な時間なのです。

ジュリアンは自閉症です。

彼は現在31歳。
私は彼から人生について本当に多くのことを学びました。

『これが私たちの子どもなのだ』

妻のマルティナと私は、ジュリアンが他の子どもたちと違うことに、かなり早い段階で気づきました。
彼は成長の節目となる発達のポイントをいくつも逃し、ほとんど話すこともありませんでした。
時折、感情が爆発するように激しく怒り、腕をばたばたさせながら、落ち着かず部屋の中を行ったり来たりしていました。
3歳のとき、自閉症と診断されました。

理屈では状況を理解していたつもりですが、受け入れるのは簡単ではありませんでした。

「どうして私の子どもがこんなふうなんだろう」
「それは自分のせいなのか」

――私は息子が世界的に有名になるような人間になることを夢見ていました。
自閉症なんて、受け入れたくなかったのです。

この頃の私は、決して理想的な父親ではありませんでした。
私はロサンゼルスに本社がある全国ネットのスポーツテレビ局でキャスターをしていて、週に2日だけノースカロライナの自宅に帰っていました。
妻は大学スポーツ部門の幹部として働き、ジュリアンの自閉症と向き合いながら、毎日大変な思いをしていたはずです。
でも私はその大変さを深く考えず、ただ「息子が壊れている、直さなくては」と思い込んで、厳しく接していました。

今思えば、まったく間違っていました。

ある日、妻のマルティナが勉強部屋に入ってきて、自閉症に関する本や資料がぎっしり入ったバッグを私の膝の上にドンと置き、はっきり言いました。

「彼はあなたを困らせようとしているんじゃないのよ。
あなたが望んでいた姿とは違うかもしれない。
でも、これが私たちの子どもなの。
あなた自身のためじゃないの!」

そのときの妻の切実な表情が、私の心に深く突き刺さりました。
私はようやく、受け入れるための旅を始めることができたのです。

ジュリアンの自閉症を受け入れるということは、それまで私が持っていた「息子の人生の進み方」に対する常識を捨てることでもありました。
彼の弟ジャレッドのように「普通」に大人になり、独り立ちしていくのではなく、ジュリアンにはこれからもずっと私たち親の支えが必要なのだと理解し始めました。
車の運転もできず、一般的な仕事に就くことも難しく、一人旅もできません。毎日の身の回りのことも手助けが必要です。

また、公の場での私たち家族の生活も、他の家族とは違うものになると受け入れる必要がありました。

ジュリアンは時々、周囲から見ると奇妙に映る行動をします。
大きな声を出したり、その場で手をひらひらさせたり、どこにいても歩き回ったりします。
ショッピングモールでも、教会でも、親戚の集まりでも同じです。

ある日、彼が15歳のとき、私は店の外でマルティナとジャレッドを待っていました。
ジュリアンは、ディズニープリンセスが全員プリントされた特別な大きな空袋を手に入れて、大喜びで歩き回っていました。
思春期の少年がそんな様子なので、通りかかった女性はびっくりしたようでした。
彼女はジュリアンを避けるように通路の端に寄り、足早に通り過ぎようとしました。

ジュリアンは、多くの自閉症の人と違って、とても社交的です。
その女性に気づくと、すぐに片手を高く上げて挨拶しました。

「こんにちは!お元気ですか?ぼく、ジュリアンです!」

その無邪気な笑顔と明るい態度に、女性も緊張がほぐれ、数分後には一緒にディズニー映画の話で盛り上がっていました。
女性のお孫さんも「リトル・マーメイド」の大ファンだそうです。
帰り際、彼女は立ち止まり、ジュリアンにこう言いました。

「ジュリアン、今日は本当にあなたに会えてよかったわ。
あなたのおかげで素敵な一日になった」

私たちはこれを「ジュリアン効果」と呼んでいます。

彼がほんの数分でも人と接すると、その人はたいてい笑顔になって帰っていきます。
昔の私なら、彼のこうした大げさなやりとりをやめさせていたかもしれません。
でも今は、彼と一緒にいることで、「小さな幸せを大切にすること」がどれだけ大事か学びました。
ジュリアンの目を通して世界を見ることができる、それ自体が私にとってかけがえのない贈り物です。

「勇気」という言葉はよく使われますが、私はジュリアンの中に本物の勇気を見てきました。
それは、高校時代、毎朝車から校舎の玄関まで35歩を踏み出すときの姿に表れています。
振り返って手を振り、にこっと笑うその瞬間、私は何度も胸が熱くなりました。

ジュリアンは、社会的には決して居場所のない場所に毎日入っていきました。
友だちができず、昼食はいつも先生と二人きり。
ほとんどの高校生は、ジュリアンのような存在と関わりたいと思いません。
ダンスパーティーもプロムも、デートの経験もありませんでした。
でも、そんな中でも前を向いて歩み続ける彼の姿に、「一歩でも踏み出し続ければ、どんな困難もきっと乗り越えられる」と教えられました。

ジュリアンと過ごす日々は、素晴らしい喜びに満ちています。
社会性の面では8歳くらいの子どもと似ているところがあり、クリスマスの魔法を今でも信じています。
毎年サンタクロースと会うことを一番の楽しみにしていて、そのために家族みんなで一生懸命準備します。
彼の純粋なクリスマスの喜びは、「世間体なんて気にせず、本当に幸せな気持ちこそが大切なんだ」と私に気づかせてくれました。

もちろん、つらいこともあります。
ジュリアンは重い精神的な危機に陥り、入院したこともありました。
激しいパニックで暴れてしまうこともあります。
多くの自閉症の方と同じく、「なぜ怒っているのか」「なぜ苦しいのか」を自分でも説明できません。
そういう時期を乗り越えても、本人にはその理由がわからず、深く後悔することが何度もあります。

ジュリアンは、私が「答えを知らない」ことも受け入れるようにしてくれました。

「お父さん、ぼくの人生はどうなるの?」
「ぼくに友だちはできるの?」
「なぜぼくは自閉症なの?」

私は、彼と一緒に、「どうなるか誰にもわからない」という現実を静かに受け止めるようになりました。
友人たちは自分の子どもたちがニューヨークで活躍したり、医大を卒業したり、研究職に就いたりと話します。
私は弟ジャレッドの活躍を自慢できても、ジュリアンについてはそういう話はできません。

それでも、私と素晴らしい妻は、ジュリアンの手を取り合い、前を向いて一歩一歩進み、彼が毎日少しでも笑顔でいられるように全力を尽くすだけです。

国のリーダーたちが最近どんな発言をしていようと、私たち家族にとってジュリアンは決して「負担」ではありません。
彼が見せてくれる純粋な喜びや優しい抱擁、笑い声は、私たち家族の見方を大きく変えてくれました。

ジュリアンは、人生の一瞬一瞬を大切にすることの意味を、私たちにじっくり教えてくれました。
私は、彼が私たち家族にもたらしてくれた贈り物にふさわしい父親になれているでしょうか。

はっきりと言えるのは、私の人生はジュリアン・バレンの父親でいられたおかげで、計り知れないほど豊かになったということです。

(出典:米the Assembly)(画像:たーとるうぃず)

父親として、私も同感です。

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(チャーリー)


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