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ADHDの子どもの学びに必要なのは「自由」と「寄り添い」

time 2025/10/29

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ADHDの子どもの学びに必要なのは「自由」と「寄り添い」

この記事が含む Q&A

TILデーとは何ですか?
小学校で週に1度設けられた「自分で学び方を選べる日」で、最終的に決めるのは子ども自身です。
自由と支援の関係について教えてください?
自由だけでも支援だけでもなく、両方がそなわってこそ力になります。
教師の役割はどんな点にありますか?
子どもの隣に味方として寄り添い、問いかけを通じて「いま」から「未来」へ導きます。

学校という場所は、多くの子どもにとって学びのステージです。
しかし、注意が散りやすい子どもたちにとっては、そのステージが急にかすんだり、音が消えたり、道が見えなくなったりします。
「やらなければいけないことはわかっているのに、体も頭も動かない」「気がついたら、ぜんぜん違う場所に意識が飛んでいる」。
そうした経験は、ADHDの中でも不注意の症状が強い子どもたちにとってめずらしくはありません。

ノルウェー科学技術大学(NTNU)の研究チームは、ADHDの診断を受けた小学生2人と、その担任の先生に話を聞きました。
舞台となるのは、小学校で週に1度設定された「TILデー」と呼ばれる特別な日。
子どもたちは、自分で学び方を選べる一日を過ごします。
どの科目を、どんな順番で、誰と、どんな気持ちで進めるのか。それを自分の手で決められます。

自分で選べることは、大きなエネルギーになります。
しかし同時に、とても難しい挑戦でもあります。
ある女の子は、不注意によって起こる内側の混乱をこう表現します。
「頭の中の考えが、まちがった方向に行っちゃうの。
気づくと、もう集中できなくなる」。

その様子を先生は、「想像できない速さで意識が飛んでいく」と話します。
注意を向け続けること自体が大きな負荷なのです。

一方で、子どもたちは「自分で決められること」を嬉しく感じています。
「今日はこれをやる」「友だちと外に出て動いてから勉強する」など、心にそった選択ができます。
決められた通りに動くのではなく、「自分の意志から始められる」ということは、子どもたちにとって大きな希望となります。

しかし——自由には責任がつきものです。
どこまでやるのか、いつ休むのか、何にどれだけ時間を使うのか。
大人でも管理が難しいことを、子どもたちは一人で引き受けなくてはなりません。
ある男の子は言います。
「計画を立てても、途中でわからなくなっちゃう」。
先生は続けます。
「やるべきことを考えるだけで、もう力を使い果たしてしまう」。

TILデーでは、「自分だけのワークプラン」が配られます。
今日取り組むことや優先順位が書かれていますが、最終的に決めるのは自分自身。
これがうまくいく日もあれば、不安に押しつぶされて動けなくなる日もあります。
女の子はこう話します。
「間違った選択をしちゃいけない気がして、動き出せないときがある」。

でも彼女は少しずつ学んできました。
「最初は得意な教科から」「疲れたらすぐ休む」「困ったらすぐ聞く」。
自分の“ペース”と“作戦”を見つけていったのです。
先生は言います。
「自分の力で一日をコントロールできたとき、彼女の表情は本当に明るい」。

男の子の場合は、興味の方向へすぐに意識が飛んでしまうタイプです。
たとえ楽しい課題でも、ふと別のことが浮かんだ瞬間、そちらへ心が走りだしてしまう。
「興味が出てきたら、それを話したくなっちゃうんだ」。

先生はその苦しさを理解しています。
「本来使うべきエネルギーを、“何をしたらいいか考える”ことに全部使ってしまう」。
うまくいった日は「誇らしい」、うまくいかない日は「自分はダメだ」。
その差はとても大きく、気持ちも大きく揺れ動きます。

だからこそ、先生はそっと寄り添います。
「今日はどんな作戦?」「どれから始めたい?」「終わったらどんな気持ちになりそう?」。
問いかけを通じて、子どもの視線を「いま」から「未来」へ移していきます。

TILデーは、「好きにしていい日」ではありません。
「ひとりでがんばらなきゃいけない日」でもありません。
先生は子どもの隣に立ち、「味方」として支えます。
安心があるから、「やってみよう」が生まれます。

ただし研究は警告します。
自由には影があります。
不注意の特性が強い子どもにとっては、「自分で選ぶこと」が重荷になり、連続する失敗によって「自信の喪失」へつながる恐れもある、と。
だから必要なのは、「自由」と「構造」のバランスです。

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どれくらい自由に選べるか。
どこまで大人が手伝うか。
その匙加減が、子どもたちの力を大きく左右します。

研究は伝えます。
「自由だけ」でも、「支援だけ」でも足りない。
両方そなわってこそ力になる、と。

子どもたち自身も気づきはじめています。
「どうして集中が切れるのか」「どうすれば続けられるのか」。
自分の“特性”と“やり方”の関係を理解しはじめたのです。
それは「どうしてできないんだろう」からの解放でもあります。

先生は言います。
「こういう日があることで、子どもたちは“学び方を学べる”のです」。
自由は、ただ与えるものではありません。
子どもと一緒に育てていくものです。

男の子は胸を張りました。
「できたら楽しい。楽しいと、もっとやりたくなる」。
女の子は笑顔で言いました。
「自分で決められると、うれしい」。
成功体験は、自分を信じるエネルギーになります。

失敗したっていい。
ゆっくりでいい。
遠回りしてもいい。

大切なのは、「自分で決めた一歩」を積み重ねること。

その隣に、味方がいること。

ADHDの不注意という特性をもつ子どもたちが、「自分で選ぶ力」と「助けを求める力」を安心して育てられる未来へ。
この研究は、その道すじを照らしています。

(出典:Frontiers in Psychology DOI: 10.3389/fpsyg.2025.1624279)(画像:たーとるうぃず)

「自由だけ」でも、「支援だけ」でも足りない。両方そなわってこそ力になる

ADHDの子に限らない話のように思います。

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(チャーリー)

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