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注目されている「自閉症と腸内環境の関係」最新研究の冷静な結論

time 2025/11/14

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注目されている「自閉症と腸内環境の関係」最新研究の冷静な結論

この記事が含む Q&A

腸内細菌は自閉症を引き起こす根拠があると言えますか?
現時点ではその証拠はなく、腸内細菌が自閉症を引き起こす、または大きく影響するという確固たる証拠はありません。
マウス実験の結論は自閉症と腸内細菌の因果を示しますか?
いいえ、多くの指標は自閉症特性と結びつかず、腸内細菌移植が直接原因とは言えません。
プロバイオティクスや糞便移植は自閉症の症状を確実に改善しますか?
いいえ、信頼できる研究では改善の確実な証拠はなく、注意深く評価が必要です。

自閉症と腸内細菌の関係は、長いあいだ強い関心を集めてきたテーマのひとつです。
胃腸の調子が崩れると生活がつらくなることは誰にでもありますが、自閉症のある人では、便秘や下痢、お腹の痛みなどが一般よりも多いことが知られています。
こうした背景から、「腸の状態が自閉症に関係しているのではないか」という考えは広く語られてきました。

今回の研究では、このテーマに関する過去の膨大な研究を整理し、証拠の確かさを慎重に検証しています。
研究を行ったのは、トリニティ・カレッジ・ダブリン、ユニバーシティ・カレッジ・コーク、オックスフォード大学の研究チームです。
腸内細菌に関する研究を「人を対象とした観察研究」「マウスの実験」「臨床研究」という三つの分類にわけ、それぞれがどれほど信頼できるものなのか、方法と結果の両面から評価しています。

まず、腸内細菌の“違い”についてですが、過去の観察研究では、自閉症のある人の腸内細菌が一般とは異なるという報告と、差がないという報告が混在していました。
菌の種類が多いか少ないか(多様性)についても、研究によって逆の結果が出ています。
このように、研究同士がほとんど一致していなかったことが分かりました。

この不一致の大きな理由のひとつは、研究参加者の人数が非常に少ないことです。
数十人規模の研究が多く、食事の内容、生活の習慣、発達の特性の違いなど、腸内細菌に影響するさまざまな条件をコントロールすることが難しいままでした。
大規模な研究では、自閉症と腸内細菌の関係はあったとしてもごくわずかで、全体の数%程度しか説明できないことが示されています。

また、自閉症のある人が特定の食べ物を好む、食事のパターンが固定しやすいといった行動の特徴はよく知られています。
こうした“食事の違い”が腸内細菌の構成に影響している可能性は大きく、腸内細菌の差そのものを「自閉症の特徴」とみなすのは早計であることも指摘されています。

次に、マウスを使った研究に関して、検証はより厳密に行われました。
過去には「自閉症の人の腸内細菌をマウスへ移すと、自閉症のような行動が生じる」という報告が注目を集めたことがあります。
しかし今回の研究は、こうした結論に問題があることを明確に示しています。

マウスにどのような行動が起きるかを測定する指標の多くは、“自閉症の特性”と結びつくものではありません。
たとえば「ビー玉を埋める行動」や「特定の動きの増減」といったものは、人間の自閉症の特性を反映するとは言えず、行動の変化を自閉症と関連づけるのは無理があるとされています。
さらに、人の腸内細菌の多くはマウスの腸に適応できないため、移植後に菌が生着しているのかどうかも疑わしいケースが多くありました。

分析方法に誤りがあった研究もあり、適切に解析をし直すと、多くの結果が有意ではなくなった例も報告されています。
つまり、マウスの行動が変わったという理由だけで、「腸内細菌が自閉症の原因である」と解釈することはできないと結論づけられています。

さらに、臨床研究の検証も行われました。
腸内細菌を整えるとされるプロバイオティクス(いわゆる“善玉菌”)のサプリメントや、腸内細菌を移植するFMT(糞便移植)は、期待を集めた介入ですが、信頼できる方法で行われた研究では、自閉症の症状が改善したという確実な証拠は見つかっていません。

少人数でプラセボ(偽薬)との比較がない研究では、保護者の主観評価が大きく影響するため、本当に効果があったのかを判断することが難しくなります。
一方、ランダム化比較試験のように方法が厳密な研究では、有意な改善は確認されていません。
胃腸症状の軽減を示した研究はありますが、それを自閉症そのものの変化と結びつけるには不十分であると評価されています。

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研究チームは総合的に、腸内細菌が自閉症を引き起こす、または症状に大きな影響を与えるという証拠は、現在のところ存在しないと述べています。

過去の研究には方法面の問題が多く、結果に再現性がないことが最大の理由です。
また、食事や生活習慣といった“別の要因の影響”が十分に考慮されていない点も、科学的な理解を妨げてきました。

腸内細菌の研究自体は今後も発展する可能性がありますが、自閉症との関係については、期待だけでなく慎重さが必要であると指摘されています。
もし研究を続ける場合は、大規模で統一的な方法による調査、明確な仮説、再現性のある結果が不可欠であるという立場が示されています。

自閉症に関する情報は、生活の選択や支援の方向性を左右することがあります。
そのため、研究チームは、誤解を生まないためにも、科学的に確かな知識が社会に共有されることが重要だと述べています。
腸内細菌にまつわる話題は注目されやすい分野ですが、確かな根拠に基づいて理解を深めていくことが求められています。

(出典:Cell Press Neuron)(画像:たーとるうぃず)

これまでに複数の

「腸内細菌と自閉症には相関が見られた」

という研究を紹介していきました。

いずれも「腸内細菌が自閉症を引き起こす」とは言っていませんでした。

今回のオックスフォード大学らの研究では、

「腸内細菌が自閉症を引き起こす、または症状に大きな影響を与えるという証拠は、現在のところ存在しない」

とのこと。

原因ではないことははっきりしたと思います。

腸内細菌が自閉症の原因にはならない。偏食の結果、違うだけ。

(チャーリー)

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