この記事が含む Q&A
- 親の年齢と自閉症の関連はどう示されていますか?
- 母親の年齢が高いほど自閉症と診断される可能性が高まる傾向があり、年齢が上がるほど関連が強まる「用量反応」が見られました。
- 父親の年齢の影響はどう解釈されていますか?
- 父親の年齢の関連は、母親の年齢や教育歴などを同時に考慮すると統計的に有意でなくなる可能性が高いと解釈されています。
- 研究の限界と得られる意味は何ですか?
- 妊娠中の健康状態などのデータ不足や対照群の構成の影響があり、因果関係を示すものではなく、早期の気づきと支援の大切さを強調しています。
近年、自閉症の子どもが増えているのではないか、と感じる人は少なくありません。
実際、世界各地で行われている調査では、自閉症の有病率が少しずつ高くなっていることが報告されています。
その背景には、診断基準の変化や支援体制の充実、社会的な認知の広がりなど、さまざまな要因があると考えられています。
ただ、それだけでは説明しきれない点も多く、自閉症がどのような要因と関係しているのかについては、今も研究が続けられています。
その中で、以前から注目されてきたのが「親の年齢」です。
とくに出産時の母親や父親の年齢が、自閉症の診断とどのように関係しているのかは、欧米を中心に多くの研究が行われてきました。
しかし、中東地域を対象とした研究は限られており、文化や社会構造が異なる地域で同じ傾向が見られるのかは、十分に検討されていませんでした。

今回紹介する研究は、カタールにおける大規模なデータを用いて、親の年齢と自閉症との関連を詳しく調べたものです。
研究は、カタール・バイオメディカル研究所を中心とする研究チームによって行われました。
この研究では、自閉症と診断された子ども970人と、自閉症ではない子ども955人を比較しています。
対照群には、定型発達の子どもだけでなく、他の神経発達症をもつ子どもも含まれていました。
これは、診断の過程や医療へのアクセスの違いによる影響をできるだけ小さくするための工夫です。
対象となった子どもたちはいずれも18歳未満で、カタールに居住していました。
自閉症の診断は、質問票によるスクリーニングの後、標準化された評価ツールや診断基準を用いて、専門の臨床家によって慎重に確認されています。
まず、研究全体の特徴として、自閉症と診断された子どもの約8割が男の子でした。
これは、これまで多くの研究で報告されてきた男女差と一致しています。
また、診断を受けた年齢を見ると、5歳から7歳の子どもが最も多く、早期発見の重要性が改めて示される結果となっています。
親の年齢について見ていくと、とくに注目されたのが母親の年齢でした。
出産時の母親の平均年齢は、自閉症の子どもをもつ家庭のほうが、対照群よりも高いことが示されました。
さらに詳しく分析すると、母親の年齢が30歳以上になると、自閉症と診断される確率が段階的に高くなる傾向が確認されました。
30〜34歳、35〜39歳、40歳以上と年齢が上がるにつれて、その関連の強さも増していく、いわゆる「用量反応関係」が見られたのです。
この結果は、母親の年齢が高くなるほど、自閉症と診断される可能性が少しずつ高まることを示しています。

ただし、ここで重要なのは、「原因」を示しているわけではない、という点です。
この研究は、あくまで関連を統計的に示したものであり、母親の年齢が直接自閉症を引き起こすと結論づけているわけではありません。
一方で、父親の年齢については、少し異なる結果が得られました。
単純に年齢だけを比べた場合には、父親の年齢が高いほど自閉症との関連が見られましたが、母親の年齢や教育歴など、他の要因を同時に考慮すると、その関連は統計的に有意ではなくなりました。
このことから、父親の年齢と自閉症との関係は、母親の年齢などの影響を受けて見かけ上強く見えていた可能性がある、と研究者たちは考えています。
実際、母親と父親の年齢は強く関連していることが多く、どちらの影響なのかを切り分けるのは簡単ではありません。
また、この研究では、親の教育歴も自閉症の診断と関連していることが示されました。
大学卒以上の教育を受けた母親や父親をもつ子どもは、自閉症と診断される割合が高い傾向にありました。
ただし、これについても、教育そのものが影響しているというより、医療や支援サービスへのアクセスのしやすさ、発達への気づきやすさといった要因が関係している可能性が指摘されています。
研究者たちは、こうした結果を踏まえ、とくに母親の年齢と自閉症との関連が、カタールという中東地域においても確認された点を重要な知見として位置づけています。
これまで主に欧米で報告されてきた傾向が、異なる社会的・文化的背景をもつ地域でも見られたことで、この関連がより普遍的なものである可能性が示されたからです。
一方で、この研究には限界もあります。
たとえば、妊娠中の健康状態や出産時の合併症、家族構成といった要因については、十分なデータが得られず、分析に含めることができませんでした。
また、対照群に他の神経発達症の子どもが含まれているため、自閉症に特有の要因がやや見えにくくなっている可能性もあります。

それでも、今回の研究は、親の年齢との関係を大規模に検討した点で大きな意味を持っています。
研究者たちは、こうした知見をもとに、より早い段階での発達の見守りや支援につなげていくことの重要性を強調しています。
自閉症は、ひとつの要因だけで説明できるものではありません。
遺伝的な要素、環境的な要素、社会的な背景が複雑に絡み合いながら、それぞれの子どもの発達に影響していると考えられています。
今回の研究は、その中の一側面を、丁寧に照らし出したものと言えるでしょう。
「親の年齢」という、個人の努力では変えにくい要素について知ることは、不安を生むこともあります。
しかし、研究者たちが強調しているのは、リスクを煽ることではなく、早期の気づきと支援の大切さです。
年齢にかかわらず、子どもの発達を丁寧に見守り、必要な支援につなげていくことが、何よりも重要です。
(出典:Journal of Autism and Developmental Disorders DOI: 10.1007/s10803-025-07190-3)(画像:たーとるうぃず)
- 母親の年齢が高くなるほど、自閉症と診断される可能性が少しずつ高まる
- 「原因」を示しているわけではない。あくまで関連を統計的に示したもの
です。正しく理解してください。
そして、
「研究者たちが強調しているのは、リスクを煽ることではなく、早期の気づきと支援の大切さ」
です。
(チャーリー)





























