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「重度自閉症」の区分。最も支援が必要な人をどう可視化するか

time 2026/02/16

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

「重度自閉症」の区分。最も支援が必要な人をどう可視化するか

この記事が含む Q&A

重度自閉症とは何を指す概念ですか?
知的機能の著しい低さや話し言葉の不足に加え、日常生活のほぼ全場面で継続的な支援が必要とされる状態を指す提案の区分です。
DSM-5の支援レベルと重度自閉症の関係はどうなっていますか?
DSM-5はスペクトラム内の三つの支援レベルで評価しますが、重度自閉症は別の診断区分として議論されています。
重度自閉症の提案にはどんな利点と懸念がありますか?
利点は支援資源の確保と研究・制度の改善につながる可能性、懸念は分断やスティグマの強化、個別ニーズ評価の重要性の後退です。

自閉症は、とても幅の広い神経発達症です。言葉でのやりとりが得意な人もいれば、ほとんど話し言葉を使わない人もいます。ひとりで生活できる人もいれば、日常のあらゆる場面で継続的な支援が必要な人もいます。この多様性を反映して、現在の診断基準では「スペクトラム」という考え方が採用されています。

しかし今、その枠組みに新たな動きが出ています。オーストラリアのシドニー大学の研究者らが、「重度自閉症(profound autism)」という新しい診断区分を提案し、議論を呼んでいます。

重度自閉症とは、知的機能の著しい低さや、話し言葉がほとんどない、あるいは非常に限られている状態に加えて、日常生活のほぼすべての場面で継続的な支援を必要とする人たちを指す概念です。
衣服の着脱や食事、移動、身の安全の確保など、基本的な生活動作に常時のサポートが必要な場合も少なくありません。
てんかんなどの医学的な併存症を抱えていることもあり、自傷行為や強い行動上の困難を伴うケースもあります。

現在の診断基準(DSM-5)では、自閉症は一つの診断名のもとにまとめられ、その中で「支援が必要」「大きな支援が必要」「非常に大きな支援が必要」という三段階の支援レベルで評価されます。
つまり、理論上は、すでに重い支援ニーズは反映できる仕組みになっています。

それでも、あえて「重度自閉症」という区分を設けるべきだという意見が出てきた背景には、現実の課題があります。

まず、研究の問題です。
多くの臨床研究では、検査に参加できること、一定の理解力や言語能力があることが条件になります。
その結果、最も支援が必要な人たちは研究から除外されやすくなります。
すると、重度の支援ニーズに特化した治療法や支援法のエビデンスが十分に蓄積されにくいという状況が生まれます。

次に、制度設計の問題です。支援制度や予算配分は、しばしば診断名や統計データをもとに決まります。
もし重度の支援が必要な人たちが「スペクトラムの一部」として一括りにされることで、その切実さが見えにくくなっているとすれば、必要な資源が十分に確保されない可能性があります。
重度自閉症という区分を明確にすることで、より手厚い支援体制を制度の中で位置づけやすくなるのではないか、という考えです。

一方で、この提案には慎重な意見もあります。

自閉症コミュニティの中には、診断をさらに分けることが分断を生むのではないかと懸念する声があります。
重度という言葉が、「価値が低い」「可能性が少ない」といった誤解を強めてしまうのではないかという心配です。
また、すでにDSM-5には支援レベルという仕組みがあるのだから、新たな診断名を作らなくても、個別のニーズ評価を丁寧に行うほうが重要ではないかという意見もあります。

この議論の核心は、「診断名は何のためにあるのか」という問いです。

診断は、ラベルを貼ること自体が目的ではありません。
本来の目的は、適切な支援につなげることです。
もし重度自閉症という区分が、研究の促進や支援制度の改善につながるのであれば、その意義は大きいでしょう。
しかし逆に、スティグマを強めたり、スペクトラム全体の理解を後退させたりするなら、慎重であるべきです。

自閉症は「軽い」「重い」という単純な直線では測れません。
言語が少なくても豊かな感情や意思を持つ人もいますし、知的障害を伴っていても、周囲との関係の中で穏やかな日常を築いている人もいます。
重度という言葉は、支援の必要度を示す一つの指標であって、その人の価値や人間性を表すものではありません。

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今回の提案は、重い支援ニーズを抱える人たちが見えにくくなっている現状を変えたいという問題意識から出てきています。
研究の対象から外れがちな人たち、制度の隙間に落ちやすい人たちに光を当てる試みとも言えます。

一方で、自閉症コミュニティの内部には、多様な立場があります。
自立して働き、声を上げられる当事者と、言葉での自己表現が難しい当事者。
その双方の視点をどう尊重するのか。
重度という区分が、誰かの声を強め、誰かの声を弱めることにならないか。そこには慎重な対話が必要です。

重度自閉症という言葉が正式な診断区分になるかどうかは、今後の議論と研究、そして制度設計の流れに委ねられています。
ただ一つ確かなのは、最も支援が必要な人たちの生活の質をどう高めるかという問いは、避けて通れないということです。

診断名が変わるかどうかよりも大切なのは、日々の暮らしの中で、安心して生きられる環境があるかどうかです。
必要な支援が途切れず、家族が孤立せず、専門職が十分な資源を持ち、社会全体が理解を深めていくこと。
そのために、どのような言葉や枠組みが最も役に立つのか。

重度自閉症という言葉は、いま私たちにその問いを投げかけています。

(出典:THE CONVERSATION DOI: 10.64628/AA.c5tdnthga)(画像:たーとるうぃず)

うちの子は知的障害もあり、話すこともできません。

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いろいろ活躍されている自閉症の方とは区別するのが現実的で、支援や研究のきちんとした対象にしてほしいと願っています。

2021年 Lancet Commission が「重度自閉症」という概念を提案。
2025年 専門家ら(INSAR)が「コンセンサス定義」を発表。

 そして今回、自閉症の枠組みが再編される可能性が具体的に議論され始めたということでしょう。

「重度自閉症」の新たな共通定義が国際研究会議で正式に合意

(チャーリー)

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