この記事が含む Q&A
- 自閉症の診断を受けた親は、その後どのように変化していくのですか?
- 診断直後のショックや不安から受け入れへ向かい、子どもの成長や新しい視点を通して成長や価値を見出していくと報告されています。
- 親の経験は「つらさ」だけではないとされていますが、何が含まれますか?
- 「結果(強い感情の苦しさと成長)」「資源(支援や情報、内面の力)」「困難(支援体制や理解不足など)」が複雑に同時に存在すると整理されています。
- どのような支え(資源)が親の適応に役立つと考えられていますか?
- 社会的な支援、専門的な支援、情報、パートナーやきょうだいなどの家庭内の支え、さらに試行錯誤や感情整理といった親自身の力が挙げられています。
子どもが自閉症と診断されたとき、親はどのような経験をし、どのように変化していくのでしょうか。
多くの研究は、これまで親のストレスや困難に焦点を当ててきました。
しかし今回の研究は、それだけではなく、「困難の中でどのように変化し、成長していくのか」という点に目を向けています。
イタリアの複数の研究機関(国立研究評議会教育技術研究所、パルマ大学など)によって行われたこの研究では、自閉症のある子どもを育てる親36人にインタビューを行い、その語りを丁寧に分析しました。
対象となったのは、支援の必要度が比較的高い子ども(重度寄り)を育てる親たちです。
その結果、親の経験は単純な「つらさ」だけではなく、「困難」と「成長」が同時に存在する、非常に複雑なプロセスであることが明らかになりました。

研究では、親の経験を大きく3つの領域に分けて整理しています。「結果」「資源」「困難」です。
まず、「結果」として語られたのは、強い感情的な苦しさと、それとは対照的な成長の両方でした。
診断直後、多くの親はショックや不安、将来への恐れを感じていました。
子どもの将来が見えないことや、これまで思い描いていた未来との違いに直面し、深い戸惑いを経験します。
中には、「これから幸せな人生は望めないのではないか」と感じるほどの絶望感を語る親もいました。
また、周囲の親との違いを感じ、孤立感を抱くこともありました。
しかし、時間が経つにつれて、多くの親は変化していきます。
最初は混乱や不安に包まれていた状態から、少しずつ受け入れへと向かい、やがて新しい視点を持つようになります。
子どもとの関係を通じて、これまで気づかなかった価値や意味を見出すようになるのです。
たとえば、小さな成長や変化に深い喜びを感じるようになったり、人に対する共感や思いやりが強くなったりします。
人生の優先順位が変わり、「何が大切か」が再定義されていく様子が語られています。
また、「この子だからこそ出会えた世界がある」といった表現も見られ、子どもの存在そのものを肯定的に捉える視点も生まれていました。
さらに、子どもの成長も大きな要素です。
言葉が出なかった子どもが話し始める、意思表示ができるようになる、自立が少しずつ進む。
こうした変化は、親にとって大きな希望となり、日々の努力を支える力になります。
子どもの成長は、親自身の自信や前向きな気持ちにもつながっていきます。
結果として、家族全体の生活の質も改善していくことが報告されています。

次に、「資源」として重要だったのは、周囲の支えと親自身の力です。
まず大きな役割を果たしていたのが「社会的な支援」です。
家族や友人、同じ立場の親とのつながりは、孤立感を和らげ、具体的な助言や安心感を与えてくれます。
とくに、同じ経験を持つ親同士の交流は非常に重要でした。
専門家とは違う「実体験に基づく理解」が、心の支えになっていたのです。
また、専門的な支援も欠かせません。
医療や教育の現場での適切な支援や、親向けのトレーニングは、子どもへの関わり方を学ぶ機会となり、親の自信(セルフエフィカシー)を高める要因となっていました。
さらに、「情報」も大きな資源です。
自閉症について学び、理解が深まることで、子どもの行動の意味が見えるようになり、対応しやすくなります。
家庭内の支えも重要でした。
パートナーとの協力関係や、きょうだいの存在は、日常生活を支える力となります。
そしてもう一つ、親自身の内面の力も大きな役割を果たしていました。
たとえば、問題に向き合い、解決しようとする姿勢。
試行錯誤しながら子どもに合った方法を探す柔軟さ。
感情を整理し、意味づけを行う力。これらはすべて、適応を支える重要な要素です。
親は受け身ではなく、主体的に学び、選び、行動していました。
その積み重ねが、やがて「できる」という感覚につながっていきます。

一方で、「困難」も多く存在していました。
とくに大きかったのは、支援体制の問題です。
診断までに時間がかかる、適切な支援が受けられない、サービス間の連携が不十分であるなど、制度的な課題が多く報告されていました。
学校においても、教師の理解不足や支援の不安定さが問題となっていました。
また、社会の理解不足も大きな壁です。
自閉症への理解が十分でないために、偏見や誤解にさらされることがあり、それが親のストレスを高めます。
家庭内でも課題があります。
育て方をめぐる意見の違いや、診断を受け入れるかどうかの認識の違いが、夫婦間の衝突につながることもありました。
さらに、親自身の内面の課題もあります。
恥ずかしさや周囲の視線への不安、疲労、孤独感。
こうした感情は、日常の中で繰り返し現れます。
また、問題を避けようとする態度や、柔軟に対応できないことが、状況を難しくする場合もありました。
「自分にはうまくできない」という感覚も、適応を妨げる要因の一つです。

このように、親の経験は「支え」と「困難」が複雑に絡み合ったものです。
重要なのは、これらが固定されたものではなく、常に変化し続けるプロセスであるという点です。
この研究は、自閉症のある子どもを育てることを「苦しさ」だけで捉えるのではなく、その中にある変化や可能性にも光を当てています。
親は困難の中で揺れ動きながらも、少しずつ新しい意味を見出し、自分なりの形で適応していきます。
その過程には、個人の力だけでなく、家族や社会との関係が深く関わっています。
そしてこの研究は、支援のあり方にも重要な示唆を与えています。
親のストレスを減らすことだけでなく、親自身の力を引き出し、支え合いのネットワークを広げていくことが必要だということです。
自閉症とともに生きる家族の経験は、一つの形では語れません。
では、私たちはその多様な経験を、どのように理解し、どのように支えていくべきなのでしょうか。
(出典:PLOS One DOI: 10.1371/journal.pone.0345020)(画像:たーとるうぃず)
if と比べることに意味はないと思いますが、
だからこそ親子ともに幸せに過ごすことができているように私は感じています。
子どもの自閉症の症状だけでは説明できない、親のストレスの背景
(チャーリー)




























