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自閉症の子は声から感情を知るのが苦手、悲しい声はとくに。研究

time 2023/01/12

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自閉症の子は声から感情を知るのが苦手、悲しい声はとくに。研究

自閉症の子どもは、社会的情報を処理する脳領域の違いにより、声の調子から感情を識別することが困難であることが、米スタンフォード大学医学部の研究で明らかになりました。

スタンフォード大学医学部の新しい研究によれば、自閉症の子どもは脳の重要な社会的中枢の配線や機能に違いがあるため、他人の声に含まれる感情の手がかりを識別するのに苦労することが多くあることがわかりました。

この研究結果は、Biological Psychiatry:Cognitive Neuroscience and Neuroimaging誌のオンライン版で発表されました。
自閉症における重要な社会的課題の神経学的な起源を説明するものとなっています。
また、この研究結果は、どのような治療が有効であるかの手がかりも与えるものです。

この研究の共同著者であるスタンフォード大学医学部精神医学・行動科学科の臨床准教授ダニエル・エイブラムス博士は、こう述べています。

「子どもは通常、人の声の特定の音を特定の感情に対応させることを学びます。
幼い子どもたちは、ゆっくりとした低音の音声が悲しみを表していると認識することを指摘し、
お母さんやお父さんが不幸を感じていれば、言葉をすべて理解する前に、子どもはそれを認識します。

しかし、自閉症の子どもたちは、声の特徴を感情に対応させるのが苦手です。

この研究以前は、自閉症の人たちの脳が、なぜ、これらの声の合図を識別して認識することに障害を持っているのかわかりませんでした」

エイブラムス博士は、当時スタンフォード大学医学部の博士研究員だったサイモン・ライポルド博士と共同して、この研究を行いました。
ライポルド博士は現在、オランダのラドバウド大学ドンダース脳・認知・行動研究所の博士研究員です。
なお、この研究には、精神医学と行動科学の教授兼会長のレイチェル・エル、ビノド・メノン博士、ウォルター・F・ニコラス博士も参加しています。

自閉症は、54人に1人の割合で発症する発達障害です。
社会的コミュニケーションの障害、感覚の異常、定型的な行動、興味の制限などが特徴です。

自閉症の社会的コミュニケーションに関する先行研究では、自閉症の人たちが顔の表情をどのように解釈しているかに主に焦点が当てられていました。
しかし、声の韻律(声における感情の手がかり)は他者の感情を表すより重要な信号である可能性があると、研究者は述べています。
メノン博士はこう言います。

「声の韻律は、親と子、仲間や大人のパートナーとの間の最も重要な手がかりの一つです。
他人の精神的、感情的状態を解読するのに役立ち、社会的相互作用を成功させるために極めて重要です」

自閉症の人がなぜこれらの合図を認識するのに苦労するのかについて、2つの対立する理論があります。

ひとつは「感覚欠損モデル」で、脳の聴覚処理領域が、自閉症では声音を違った形で扱うとする説です。
たとえば、掃除機の音のような大きな音にだけ敏感であると考えます。

社会的認知に注目した別の説では、自閉症では声の聴覚処理は正常だが、脳の社会的な部分が神経症の人とは異なる情報を解釈しているというものです。

今回の研究は、2番目の説を支持するものとなります。

今回の研究では、22人の自閉症の子と21人の発達障害でない定型発達の子どもたちが参加しました。
その7歳から12歳の子どもたちが、声の感情を認識するための課題に取り組みました。

音声認識課題では、「カバンが部屋にある」「スプーンがテーブルの上にある」という2つのフレーズを、幸せ、悲しい、中立のイントネーションで録音し、子どもたちに聞かせました。

先行研究と同様、自閉症の子どもたちは、定型発達の子どもたちに比べて、録音音声のイントネーションから感情を識別する能力が劣っていました。

次に、MRIによる脳機能検査を受けながら、子どもたちは録音されたフレーズと、食器洗い機の運転音など音声以外の音の録音をさらに数回聴きました。
研究チームは、2つのグループの子どもたちのさまざまな脳領域の活動を比較しました。
エイブラムス博士はこう言います。

「我々は、脳のほとんどの聴覚部分が、定型発達の子どもと同じように、これらの声に反応していることを発見しました。
そして、自閉症の子どもに見られた違いは、この信号が、重要な社会的脳部位に到達までの方法でした」

重要な社会的脳部位とは、側頭頭頂接合部です。
他人が自分とは異なる考えや感情の状態を持っていることを理解する能力に重要なところです。

自閉症の子どもでは、聴覚中枢と側頭頭頂接合部が、典型的な発達の子供と比べて過剰に結合していました。

「脳の信号には適切な出力が求められます。
脳の領域間の接続が不十分でも過剰でも問題なのです」

自閉症の子どもと定型発達の子どもの脳結合の差は、嬉しい声よりも悲しい声に対してより顕著であったことが、この研究で明らかになりました。
メノン博士はこう言います。

「悲しい感情の解読が、自閉症における特定の欠陥であることを示唆しているます。
他人の悲しみを感知できることは、効果的な社会的コミュニケーションのためには重要です」

研究チームは、脳中枢間の結合性よりも、側頭頭頂接合部活動に大きな差異を示した子ども達が、社会的相互作用により困難を抱えていることも発見しました。
ライボルド博士はこう言います。

「この研究結果の最も価値ある点は、自閉症の子どもたちの社会的コミュニケーションの困難さの深刻さについて説明できたことです。
自閉症の子どもたちは、感情的な話しを聞いているときに社会脳ネットワークの活性化が抑えられていました。

また、このことは側頭頭頂接合部が、自閉症児の社会的コミュニケーション障害を改善するための有望な脳領域である可能性を示唆しています。

この発見で、効果的な治療と関連しそうな脳領域がわかりました。
自閉症の子どもの社会的スキルの構築を支援する治療法を専門家に指し示すことにつながります」

これまでにスタンフォード医科大学の他の研究では、自閉症の子供が顔の表情を識別することを学ぶためのゲーム的な方法を検討してきました。
自閉症の子どもに声の感情を処理することを教えるためにこの方法を使い、そしてそれが脳回路を変更するかどうかをfMRIで確認できるはずです。
こう、メノン博士は言います。

「側頭頭頂接合部回路を改善することで、社会的、言語的コミュニケーションが向上するかもしれません。
私は、それが非常に現実的な可能性だと思います」

今回の研究結果は、すべての子どもたちに、ニューロダイバーシティ、つまり自閉症スペクトラムを含む、異なる種類の脳の配線を持つ人たちが、異なる方法で世界を経験していること、すべての人が、他人に貢献できる価値あるものを持っているという概念について教育する機会も提供するものだとエイブラムス博士は述べています。

子どもたちが他者の感情を理解するために重要なのは、友だちとの交流です。
しかし、定型発達の子どもたちが自閉症の子どもと友人関係を築くことをためらうと、自閉症の子どもたちはこうした経験をする機会が少なくなってしまいます。
エイブラムス博士はこう言います。

「自閉症の人とのコミュニケーションを本当に改善しようと思ったら、誰もがいろいろなことを学ぶ必要があります。

『あの子は、あなたの気持ちを理解するのが難しいかもしれないけど、本当は知りたいんだよ』

そう、教えることができると思います。
それを知ってもらえれば、自閉症の人たちは会話に参加しやすくなります」

(出典:米スタンフォード大学医学部)(画像:Pixabay

友だちを作りたいと思っていても、

「相手の感情を知ることが苦手」

そんな人がいることをみんなに知って頂きたいと願います。

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(チャーリー)


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