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子どもたちがADHD・自閉症をネットで知り診断を求める時代

time 2025/04/24

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子どもたちがADHD・自閉症をネットで知り診断を求める時代

この記事が含む Q&A

子どもやティーンエイジャーが自分から精神的な評価を望む理由は何ですか?
自身の症状や生活への影響について理解を深め、支援を求める意欲が高まっているからです。
なぜ今の子どもたちは自己認識や診断を積極的に求める傾向があるのですか?
インターネットやSNSを通じて情報収集や自己理解がしやすくなり、偏見やスティグマも減少しているためです。

近年、私の診療現場では、子どもやティーンエイジャーたちの間で、神経心理学的な評価を自ら希望するケースが目立って増えてきました。

以前は主に親が主導して行っていたこれらの評価ですが、今では本人たちが自分の注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症、学習障害、うつ、不安などの症状と、それがどれほど自分の生活に影響を及ぼしているかを詳しく説明しながらやって来ます。
かつては思春期の子どもたちがこうした評価を嫌がることが多かったのに対し、今では逆に、本人たちが積極的に助けを求め、学校生活や人間関係、感情の問題について親に説明し、支援を訴えることが増えています。

この傾向は私の診療所だけにとどまりません。
アメリカ児童・青年精神医学会の年次総会に参加した100人以上の精神科医を対象に行われた調査では、74%の医師が「インターネットで見たことがきっかけで、自分が精神的・神経的な問題を抱えていると信じて受診する若者」を“やや頻繁に”または“非常に頻繁に”診察していると答えました。

SNSの影響はもちろんありますが、10代やそれ以下の子どもたちが「自分はニューロダイバージェント(神経の多様性をもつ)」と自覚するようになってきた背景には、それ以外にもさまざまな要因が関係しています。

とくに大きいのは、情報へのアクセスが格段に増えたことと、精神的な問題に対する偏見(スティグマ)が減ってきたことです。
TikTokなどのSNSの影響は確かに大きく、これは別個に語るべき話題ではありますが、インターネット全体を通じて精神医学的な情報が子どもたちに届きやすくなっているのは間違いありません。
それらの情報の中には正確なものもあれば、誤解を招くものもありますが、いずれにしても心や身体の状態に対する自覚は深まっているようです。
しかも、今の子どもたちは精神の健康だけでなく、世界中の出来事や紛争といった情報にも日常的に触れており、それが心の負担となることもあります。

こうした情報環境と、精神的な問題について語ることが以前よりも許される社会的な雰囲気が合わさって、子どもたちは自分の悩みに気づき、言葉にしやすくなっているのです。

実際、私のもとにはADHDやディスレクシア(読字障害)、不安障害などの症状をスマートフォンにリストアップして持ってくる子どもたちが増えています。
自分の必要性を親に説得して連れてきてもらうのです。
診察では、子ども自身と保護者の双方に対し、不安、注意欠如、実行機能(物事を計画・遂行する力)、うつなどについての質問票を用いることが多いのですが、以前であれば「自分は問題なんてない」と答えていた子たちも、最近では保護者以上に強い悩みを訴えることすらあります。
とくにコロナ以降、その傾向は顕著です。

こうした背景には、社会全体での意識の変化があります。

精神的な問題や学習の特性に対する理解が広がり、大人も教師も専門家も、以前よりも気づきやすくなっています。
SNSや商業的なウェブサイトにある情報の中には疑わしいものもありますが、ADHDや自閉スペクトラム症、ディスレクシア、精神障害などについて、正確で信頼できる情報も以前よりずっと手に入りやすくなりました。

加えて、学校内外を問わず、支援を行う専門家の数も増えています。
アメリカでは現在、心理士、精神科医、ソーシャルワーカー、カウンセラーなど100万人以上が精神的な支援に従事しており、この分野の雇用は他業種よりもはるかに速いペースで拡大しています。
これは、精神的な健康に対する意識の高まりや、保険によるカバーの広がり、助けを求めることへの偏見の低下などが後押ししています。

また、「社会的感染」と呼ばれる現象も影響しています。

SNSなどで見聞きした内容によって、本来は該当しない症状に自分が当てはまると誤って信じてしまうことがあるのです。
さらに、診断基準そのものも変化しており、たとえばDSM-5では「自閉スペクトラム症」として診断範囲が広がりました。
こうした変化や、精神的な問題を抱えること自体が「特別なステータス」として受け取られるケースもあります。
セラピストに通っている、診断を受けているという事実が「自分らしさ」として感じられることもあるのです。

思春期はもともと、気分の浮き沈みやイライラ、反抗心といった不安定さを伴う時期です。
うまくいかないことや不満の理由を探す中で、「診断」というわかりやすいラベルは納得できる答えになります。
とくに学業成績に強いプレッシャーがかかるような環境では、その傾向がさらに強まります。
親にとっても、「子どもができないのは怠けているからではなく、理由があるのだ」と納得できる材料になります。

また、診断を受けることで、学校生活において配慮や支援を受けやすくなるという現実的なメリットもあります。
試験時間の延長や個別支援、学校のカウンセラーへのアクセスなどが得られるため、「診断」が子どもたちにとって魅力的な選択肢となるのです。

思春期は「自分とは何者か」を模索する時期です。さまざまな役割を試し、他者からの反応を探る中で、「ニューロダイバージェント」というアイデンティティを受け入れることは、居場所を得ることでもあり、自分の体験を説明する手段にもなります。
ときには責任を回避する手段になってしまうこともありますが、それは一面的な捉え方にすぎません。

さらに、思春期は抽象的な思考や仮説構築、情報の体系的分析といった認知能力が発達する時期でもあります。

このタイミングで、世界の出来事や精神障害に関する大量の情報に触れると、自分自身を分析し、理論を立て、「自分はこれに当てはまる」と思い込んでしまうことがあります。
しかし、本当に大切なのは、単なる症状の有無ではなく、それがどれだけ日常生活に支障をきたしているか、他の要因とどう関係しているか、発達段階との兼ね合いなど、より複雑な全体像の理解です。

「自分はニューロダイバージェントかもしれない」という自己認識は、思春期の子どもたちにとって、自信や安心をもたらすこともあります。
ただし、それが本当に役立つものであるためには、正確な診断と適切な支援が必要です。

親や専門家、教育者は、「子どもが単に不満を病気にしているだけだ」と決めつけず、共感的に話を聞く姿勢を持つことが重要です。
その上で、彼らの本当の困難を理解し、必要なサポートにつなげていくことが、今の社会に求められています。

ランディ・クルマン博士
児童臨床心理学者

(出典:米Psychology Today)(画像:たーとるうぃず)

本当に支援が必要な人に、適切な支援がなされる。

それが維持できている限りであれば。

自閉症スペクトラムの曖昧な境界。社会規範の強制や逃避の温床に

(チャーリー)


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