この記事が含む Q&A
- 診断とラベルの違いは何ですか?
- 診断は専門家の評価を通じた理解と支援のための説明で、ラベルは言葉そのものを指し、必ずしも同じ意味ではありません。
- 著名人の発言は神経発達条件の理解にどのような影響を与えますか?
- 発言は理解を促す機会になる一方、支援が必要な人への声かけや受け止め方に影響を及ぼす懸念も指摘されています。
- 自閉症スペクトラムとADHDの用語動向はどうなっていますか?
- アスペルガー症候群は現在ASDの一部として統合され、診断は個々の支援につながる理解を目的とします。
アンソニー・ホプキンス氏は、その圧倒的な俳優人生と並んで、最近「自分がもしかすると発達障害であるかもしれない」との妻ステラ・アロヤーヴェ氏の指摘を受けつつも、医療的診断ラベルに対して強く懐疑的な見方を示し、議論を呼んでいます。
ホプキンス氏は、インタビューで「僕はナンバ―にこだわる。細かいことにこだわる。順序が好きだ」「記憶することが好きだ」と語り、その様子を見た妻ステラ氏が「これはアスペルガー症候群(現在は自閉症スペクトラムの一部とされる)かもしれない」と話したことを明かしました。
ところがホプキンス氏は、その指摘に対して「僕にはそんなもの信じられない」「結局、すべてナンセンスだ」と述べ、次のように付け加えています。
“Well, I guess I’m cynical because it’s all nonsense… ADHD, OCD, Asperger’s, blah, blah, blah… It’s called living, it’s just being a human being…”
「まあ、僕は皮肉屋なんだと思う。だって、こんなの全部ナンセンスだよ。ADHDだの、OCDだの、アスペルガーだの、ああだこうだ……そんなの“生きる”ってことさ。ただ“人間である”ってだけのことなんだ」

この発言に対して、英国の複数の支援団体・チャリティが強い懸念を示しました。
たとえば、英国の ADHD Foundation は「ホプキンス氏には意見表明の自由があるが、ADHDやその他の神経発達条件を“流行”と片づけるのは非常に有害だ。これらは生涯にわたる脳の配線の違いであって、トレンドではない」とコメントしています。
また、自閉症関連の団体である Ambitious About Autism も、同氏が取り上げた「アスペルガー症候群」という用語は現在では使われておらず、より広い「自閉症スペクトラム(ASD)」という診断カテゴリーに統合されていることを指摘しています。
このような背景から、ホプキンス氏の発言は「神経発達条件をめぐる理解と支援を後退させる可能性がある」として、当事者・支援者の間に波紋を広げています。
一方で、ホプキンス氏自身は「私が診断を受けるかどうかについては懐疑的だ」としながら、「過去に精神科医の元を勧められたが、自分には形式的な診断は合わないと感じている」とも語っています。
また、彼はかつてアルコール依存の克服に取り組み、カリフォルニアでの暗黒の時期を経て、50年にわたる節酒を達成したことも公表しています。
この報道から、神経発達条件をめぐる社会的な議論と、著名人が発信する言葉の影響について改めて考える契機となりました。
とくに、自閉症やADHDに当事者として向き合っている方々、ご家族、支援者の方々にとっては、次のような視点が重要だと思われます。
まず、「診断」と「ラベル」の違いです。
診断とは、専門家による評価を通じて、ある人の特性や困難を説明・理解し、適切な支援や対応を考えるためのものです。
「ラベル」はその言葉そのもの(例:ADHD、自閉症)を指し、時には軽んじられたり、誤解を生んだりすることもあります。
ホプキンス氏のように「ラベル=流行だ」と捉える見方は、診断を受けた当事者が「自分の神経のつくりを理解して支援につなげる」という機会を妨げる可能性があります。

次に、「当事者の声」と「社会の理解」のギャップです。
報道では、当事者の一人として「診断は自分の脳と個人のニーズを理解する助けになる」という声が紹介されています。
その一方で、著名人が「診断は不要」「ただ生きているだけだ」と発言することで、「困っているけれど診断を受けていない」「支援にアクセスできない」という人がさらに声を上げづらくなる懸念があります。
また、支援の視点からは、「神経発達条件を抱えた人=異常・欠陥」ではなく、「ただ脳の配線が一般とは少し異なる」という理解が必要です。多くの当事者が「自分なりの強み」を活かしつつ暮らしており、診断やラベルを得ることによってその探究が深まるケースもあります。
ホプキンス氏の発言を契機に、「“こうでなければならない”という枠」に縛られず、ひとりひとりの神経のありように寄り添う社会についても改めて議論していく必要があります。
今回の報道では、「著名人が神経発達条件というテーマに言及した」という点で注目を集めました。
ホプキンス氏の立場や意見そのものを否定するわけではなく、むしろその発言がもつ影響や、当事者・支援者にとってどのような意味をもつかを丁寧に考えることが大切です。
(出典:THE STANDARD IDEPENDENT Reality Tea Emegypt)(画像:wikimedia)
「ただ“人間である”ってだけのこと」
その通りです。
支援が必要とされる方に適切な支援が届くようにすることが目的の診断であり、ラベルであり、それ自体は悪いものでは決してないと私は思います。
(チャーリー)




























