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自閉症をめぐる誤情報が広がる社会で大切な「科学」と「尊重」

time 2025/11/15

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自閉症をめぐる誤情報が広がる社会で大切な「科学」と「尊重」

この記事が含む Q&A

自閉症をめぐる言葉遣いは社会にどのような影響を与えるのでしょうか?
誤解や不安を広げることがあり、特に公的な発言は強い影響を持ちます。
妊娠中のアセトアミノフェンと自閉症の因果関係についての記事は何を伝えていますか?
根拠が乏しい主張が広まると不安を生み、薬の適切な使用を妨げる可能性があると指摘しています。
自閉症の支援で重視すべき点は何ですか?
科学的事実と本人の尊厳を両立し、生活支援の充実と当事者の声を政策へ反映させることが重要です。

自閉症をめぐる言葉は、人々の理解や社会の空気を大きく左右します。
その影響は日常の中にも広がり、本人や家族の心に深く届きます。
科学に基づいた確かな情報はもちろん重要ですが、どのような語られ方をするのかによって、人々の不安が強まり、誤解が広がることもあります。
とくに、政府の発言や公の立場にある人々の言葉は、多くの人がそのまま受けとめてしまうほど大きな力を持っています。

自閉症は、コミュニケーションの特性や感じ方の違いなど、多様な神経発達のあり方を含むものです。
生まれつきの特性としての側面が強く、これまでの研究の蓄積からも、遺伝的な影響が大きいことが一貫して示されています。
環境要因の研究も進められていますが、どれか一つの原因で説明できるものではありません。
複数の要因が重なり合い、人によって異なる形であらわれる複雑な特徴を持っています。

それにもかかわらず、アメリカでは、自閉症を特定の行為や物質に結びつける主張が続いています。
幼少期に受けるワクチン、妊娠中のアセトアミノフェン(タイレノール)の使用、または包茎手術などが、自閉症の原因であるかのように語られる状況が広がっています。
科学的な裏付けが極めて不十分であるにもかかわらず、政治の中心にある人物が断定的に語ることにより、社会全体に混乱が広まりやすくなっています。

ネイチャーメディシン編集部(Nature Medicine Editorial Office)は、この問題を深刻なものとして整理しています。
科学的な合意が形成されていない内容が公的な場で断定的に語られると、誤った理解が社会へ広がり、必要な医療行動を避けてしまう可能性が生まれます。
妊娠中のアセトアミノフェンは、痛みや熱に対して使用できる薬として安全性が確立されています。
しかし、「妊娠中に使用すると自閉症の原因になる」という主張が広まった結果、多くの妊婦が不安を抱き、薬の使用をためらう可能性が出てきています。

実際、全国規模の調査では「タイレノールと自閉症の因果関係」を聞いたことがあると答えた人が77%にのぼりました。
そのうち60%が「本当かどうかわからない」と回答し、確かな根拠がないまま不安だけが社会に広がっている様子が見てとれます。
妊娠中にも使用できるとされている薬について誤った不安が広がれば、適切な治療を避ける人が増える可能性があり、その影響は本人と胎児の健康にも及びます。

また、自閉症を「治すべきもの」と語る表現や、「親が原因である」という印象を与える発言は、本人や家族の尊厳を損ないます。
自閉症は治す・治さないといった単純な枠の中にあるものではなく、その人の暮らしや感じ方の違いを尊重し、安心できる環境を整えることが大切です。
にもかかわらず、責めるような言葉や偏見を強めるような語り方が広まると、当事者や家族が日常の中で感じる生きづらさはさらに大きなものになります。

自閉症の成り立ちを調べる研究は重要であり、価値があります。
しかし、アメリカの研究費の使われ方をみると、原因の追究に比べて、生活の質や支援の拡充に関わる領域が大きく後回しにされている現状があります。
全体のうち、生活支援や医療体制、教育、就労、老年期の変化など“生涯にわたる支援”に関連する研究は13%ほどしかありません。
原因の研究ばかりが進み、すでに暮らしの中で困難を抱えている人々への支援が不足し続ける状況が生まれています。

生涯にわたる支援は、自閉症のある人の生活に直結する大切な領域です。
子どものころだけでなく、大人になり仕事をし、年齢を重ねるなかで必要になる支援は常に変化します。
医療、教育、働く場、住む場所、人との関わり方など、その一つひとつに自閉症のある人ならではのニーズがあります。
にもかかわらず、研究費の偏りによって、必要な支援が十分に整えられないまま時間だけが過ぎていく課題が続いています。

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さらに、自閉症に関する政策をつくる際に、当事者が意見を述べる場がほとんど設けられていない問題があります。
政策を決める場が開かれず、当事者の声が反映されない状況では、実際の生活の困りごとに寄り添った政策をつくることはできません。
支援のあり方が「誰のためにあるのか」という最も重要な視点が欠けてしまい、本人に合わない制度や研究が進む危険があります。

当事者団体や医療専門家による誤情報への対策は続いていますが、その努力だけでは追いつけないほど、誤った情報は急速に社会へ広がります。
科学に基づいた理解を広めるためには、研究者、医療者、政策担当者、当事者、家族が連携し、同じ方向を向くことが欠かせません。
それぞれの立場が協力し、科学的根拠と尊厳を守る姿勢を軸に社会へ発信していく必要があります。

自閉症のある人が安心して暮らせる社会をつくるためには、原因探しだけが中心になってはいけません。
生活に必要な支援を整え、尊重されながら生きられる環境をつくることが欠かせません。
そのためには、科学的な事実を土台にしながら、本人の声に耳を傾け、人としての尊厳を守る姿勢をもつことが必要です。
自閉症のある人の健康、生活、希望を中心に置く取り組みが進むとき、社会全体がより豊かでやさしいものへ変わっていきます。

自閉症をめぐる議論は、しばしば「何が原因か」という問いに引き寄せられてしまいます。
しかし、本当に必要なのは、正確な情報にもとづいた理解と、人としての尊厳を大切にする姿勢です。
科学と尊重の両方を大切にするとき、自閉症のある人が自分らしく生きやすい社会が生まれます。
ネイチャーメディシン編集部のまとめた内容が示しているのは、まさにその大切な土台です。
科学にもとづき、そして人を尊重する姿勢の両方がそろってこそ、未来に向けてより良い支援と政策が築かれていきます。

(出典:nature medicine DOI: 10.1038/s41591-025-04082-y)(画像:たーとるうぃず)

「科学と尊重の両方を大切にするとき、自閉症のある人が自分らしく生きやすい社会が生まれます」

その通りだと思います。

繰り返される自閉症の誤解。冷蔵庫マザーからアセトアミノフェン

(チャーリー)

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