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ADHDの注意と衝動の困難に。刑務所でヨガが示した可能性

time 2025/12/29

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

ADHDの注意と衝動の困難に。刑務所でヨガが示した可能性

この記事が含む Q&A

ヨガは刑務所内のストレスや衝動の抑制に有効ですか?
回答: 一定期間のヨガ介入で心理的ストレスや感情の不安定さが軽減し、衝動の抑制や注意力の改善が報告されています。
ADHDを持つ人に対するヨガの役割は治療法ですか?
回答: 治療法ではなく補助的な手段で、注意や衝動の問題を整えるための体の状態を整える介入として位置づけられています。
女性や若年層に対するヨガプログラムの効果は何ですか?
回答: トラウマに配慮したプログラムで不安・抑うつの軽減と自分の感情・体の状態に気づく力の向上が報告されています。

刑務所や拘置施設に収容されている人たちは、一般の社会で暮らす人に比べて、強いストレスや心のつらさを抱えている割合が高いことが知られています。
自由を制限される環境そのものに加え、幼少期からの逆境体験や社会的な孤立、衝動的な行動によって困難が重なってきた人生の経過が、収容後の心身の状態に影響を与えています。

こうした環境では、不安や抑うつ、怒りや衝動性が強まりやすくなります。
一方で、刑務所内で行われる支援は、規律や管理が優先されやすく、感情や行動の土台にある状態そのものを整える機会は限られています。

この研究は、ギリシャの国立カポディストリアス大学アテネ校(医学部)を中心に複数の組織が協力してまとめられました。
対象となったのは、世界各地の刑務所や拘置施設、少年施設で行われてきたヨガの実践です。
これまでに行われた「刑務所内ヨガプログラム」に関する研究を集めて整理しました。
あらかじめ決められた手順に沿って、複数の学術データベースから論文を探し、条件に合う研究だけを選び出しています。

対象とされたのは、2012年5月以降に発表された英語の査読付き論文で、刑務所・拘置施設・少年施設など、収容中の人を対象にヨガを中心とした介入を行い、心理面や行動面、施設内での変化を報告している研究です。
ヨガの実施期間についても基準があり、原則として8週間以上行われていることが求められました。
呼吸や注意の要素を含まない単なる体操だけのものや、8週間未満の短期プログラム、薬物治療が中心で心理社会的な結果を示していないものは除かれています。
採用された研究については、研究としての信頼性や妥当性も、決められた評価方法を用いて点検されています。

その結果、分析の対象となったのは10の研究で、12本の論文として報告されていました。
対象となった受刑者・収容者は合計1815人で、研究はイギリス、スウェーデン、アメリカ、イスラエル、インド、オーストラリアなど複数の国で行われています。
成人の刑務所だけでなく、若年層の施設も含まれていました。

収容施設の人口を考えるうえで重要なのは、注意や衝動のコントロールが難しい人が非常に多いという点です。
注意欠如・多動症(ADHD)は、一般の社会よりもはるかに高い割合で収容施設内に見られ、成人の受刑者では約4人に1人、若年の収容者では約3人に1人に達するとされています。

ADHDの特性として知られる、衝動的な行動、感情の揺れやすさ、注意の持続の難しさは、緊張の高い収容環境ではさらに強まりやすくなります。
怒りや不安が高まり、トラブルにつながりやすくなる一方で、頭で考え直すことを中心とした支援だけでは、十分に効果が出にくい場面もあります。

こうした状況の中で、体の状態そのものに働きかける介入として、ヨガが取り入れられてきました。
ヨガは、姿勢、呼吸、注意の向け方を組み合わせた実践で、体の緊張や過度な興奮状態を落ち着かせることを目的としています。

一定期間ヨガに取り組んだ受刑者では、心理的なストレスや気分の不安定さが軽減し、感情のコントロールや衝動の抑制に改善が見られたと報告されています。
イギリスやスウェーデンの刑務所で行われた研究では、通常の運動プログラムと比べても、ヨガに参加した人の方が、注意力や行動の抑制が高まる傾向が示されていました。

これらの変化は、考え方が急に前向きになったというようなものではありません。
呼吸や動きを通して体の緊張がゆるみ、感情や行動の土台となる調整力が支えられることで、反応の仕方に余地が生まれていく過程が示されています。

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怒りや攻撃性に関する結果も報告されています。
ヨガに参加した受刑者では、怒りや衝動的な反応が減少し、対人トラブルが起きにくくなったことが示されました。
刑務所内での規律違反が増えるといった悪影響は見られず、安全に実施できる支援であることも確認されています。

女性や若年層を対象とした研究では、トラウマに配慮したヨガプログラムによって、不安や抑うつが軽減し、自分の感情や体の状態に気づく力が高まったと報告されています。
感情が一気にあふれてしまう感覚や、衝動的に反応してしまう状態に対して、体を通した落ち着きの経験が支えになる可能性が示されています。

社会復帰との関係については、研究の数は限られていますが、イスラエルで行われた大規模な調査では、ヨガに参加した受刑者の方が、再び刑務所に戻る割合が低かったことが報告されています。
感情や衝動のコントロールが改善することが、長期的な行動の選択に関わる可能性がうかがえます。

ここで扱われているヨガは、ADHDの治療法として位置づけられているわけではありません。
薬物療法や心理支援に代わるものでもありません。
ただし、注意や衝動の問題を抱える人が、自分の状態を整えるための補助的な手段として、現実的に機能しうることが、収容施設という制約の強い環境の中で示されています。

ADHDに関わる人にとって重要なのは、できなかった行動を責めることではなく、行動が起きる前の状態をどう整えるかです。
体の状態からアプローチする支援が、衝動や感情のコントロールを支える可能性があることが、ここでは静かに描かれています。

ヨガは特別な能力や精神性を求めるものではなく、呼吸し、動き、今の体の感覚に気づくという、ごく基本的な実践です。
刑務所という過酷な環境でも実施できたという事実は、日常生活の中でADHDと向き合う人にとっても、多くの示唆を与えているのかもしれません。

(出典:healthcare DOI:10.3390/healthcare14010070)(画像:たーとるうぃず)

ヨガが、困難を軽減するものになりそうです。

うまく、取り入れていきたいですね。

自閉症、知的障害の子の「多動・注意欠如」などを「ヨガ」が改善

(チャーリー)

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