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自閉症・ADHDの子の感情の語りをAIで分析して見えたこと

time 2026/02/12

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症・ADHDの子の感情の語りをAIで分析して見えたこと

この記事が含む Q&A

AIと人の分析にはどんな違いがありますか?
人の分析は語りのニュアンスを捉えやすく、AIは大量の文章から話題の組み合わせを自動抽出します。
学校と放課後の体験はAI分析でどのように分かれましたか?
AIは学校のストレスと放課後のリラックス/義務を分けて示し、場所による感情体験の変化を示唆しました。
双方の分析の役割と意味づけはどう考えられていますか?
人とAIは互いに補完的で、意味づけは最終的に人が行い、当事者の声を中心にするべきです。

自閉症やADHDのある子どもや若者は、日常のなかで強い感情を経験しやすいことが、これまで多くの研究で示されてきました。
とくに、イライラや不安、悲しみといったネガティブな感情が続くと、うつなどのメンタルヘルスの問題につながる可能性も指摘されています。

こうした感情の体験については、これまで親や支援者など大人の視点から評価されることが多く、当事者自身の言葉が十分に分析されてきたとは言えませんでした。

今回、イギリスのキングス・カレッジ・ロンドン精神医学・心理学・神経科学研究所、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、アンナ・フロイト国立児童家族センターなどの研究グループは、自閉症やADHDのある中学生年代の若者が「自分の感情」について語ったインタビュー内容をもとに、人の手による質的分析と、AIを用いた文章解析を比較する研究を行いました。

研究に参加したのは、11〜15歳の自閉症のある若者、ADHDのある若者、両方の診断をもつ若者、あわせて57人です。
研究チームは、日常生活で「何がつらいと感じるか」「つらい気持ちをどうやって乗り越えているか」といった質問を半構造化インタビューで聞き取りました。

まず、研究者はこれまで行ってきた方法と同様に、人が読み込みながら意味のまとまりを見つけていく「リフレクシブ・テーマティック・アナリシス」という手法で分析しました。
この方法では、研究者自身の視点や立場も意識しながら、語りの中にあるパターンを丁寧に整理していきます。

その結果、たとえば次のようなテーマが見いだされていました。

・感覚が強すぎる、あるいは足りないと感じる体験
・友人関係でのズレや衝突、孤立感
・本当の自分を隠して振る舞う必要を感じること
・自信のなさや恥ずかしさ、罪悪感
・つらい出来事を防ぐための工夫
・つらい最中に感情を調整する方法
・自分の強みを使って乗り越えること

今回の研究では、これとは別に、AIを用いた「トピック・モデリング」という方法も使われました。
これは、大量の文章を統計的に処理し、よく一緒に使われる言葉の組み合わせから「話題のかたまり(トピック)」を自動的に抽出する手法です。

研究チームは、インタビューの一つひとつの発言を短い文章単位に分け、前処理を行ったうえでトピック・モデリングを実施しました。


その結果、感情に関連する10個のトピックが抽出されました。

たとえば、

・感覚刺激や感覚体験
・集中や興味を保つことの難しさ
・学習や遊びへの取り組み
・放課後のリラックスや義務
・学校でのストレス状況
・感情の体験や表現
・友人関係のやりくり
・時間の経過や変化と感情
・プレッシャー下での決断の難しさ
・イライラや怒りの対処

といった内容です。

興味深いことに、これらのトピックの多くは、人が行った質的分析で見つかったテーマと重なっていました。
たとえば、「感覚刺激や感覚体験」「集中の難しさ」「プレッシャー下での決断の難しさ」といったトピックは、「感覚の過剰・不足」というテーマと強く関連していました。

一方で、AIによる分析ならではの特徴もありました。

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とくに目立ったのは、「学校でのストレス」と「放課後のリラックスや義務」というトピックがはっきり分かれた点です。
学校では対人関係の衝突や誤解、プレッシャーが語られることが多く、放課後や家庭では休息や回復、あるいは別の課題が語られていました。

これは、若者たちの感情体験が「場所」によって大きく変わることを示唆しています。
学校がとくにつらい場面になりやすい一方で、学校外には回復のきっかけも存在している可能性が示されました。

また、AIによる分析では、「本当の自分を隠すこと」や「自信のなさ」といったテーマはあまり目立ちませんでした。
研究者たちは、その理由として、こうした体験が言葉として直接表現されにくいことや、使われる表現が多様であることを挙げています。

つまり、人の解釈だからこそ拾える意味と、AIだからこそ見つけやすいパターンの両方があるということです。

さらに研究チームは、トピックの分布にもとづいて参加者をグループ分けする分析も行いました。
その結果、感情体験の傾向が似ている若者同士がいくつかのクラスターに分かれることが示されました。
ただし、この分け方はインタビューを担当した研究者の違いなどの影響も受けており、診断との関係については慎重な解釈が必要だとされています。

研究者たちは、今回の結果から次のように述べています。

人による質的分析とAIによるトピック・モデリングは、どちらか一方が優れているというものではなく、互いに補い合う関係にある可能性がある。
人の分析は体験のニュアンスや意味の深さを捉えやすく、AIの分析は設定や時間的側面など、別の視点を浮かび上がらせる。

そして重要なのは、どちらの方法でも、最終的に意味づけを行うのは人であり、当事者の声を中心に据える姿勢であると強調されています。

この研究は、自閉症やADHDのある若者の感情体験が、「個人の性格」だけで説明できるものではなく、環境や状況との相互作用の中で形づくられていることを改めて示しています。

同時に、若者自身の言葉を大切にしながら、多様な方法で理解を深めていくことの重要性を静かに伝える研究といえるでしょう。

(出典:scientific reports DOI: 10.1038/s41598-025-34570-7)(画像:たーとるうぃず)

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