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自閉症の政治家たち。リーダーに向かないという偏見を超える

time 2026/02/17

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

自閉症の政治家たち。リーダーに向かないという偏見を超える

この記事が含む Q&A

自閉症のある人は政治家になれないという考えは本当ですか?
いいえ、4名はいずれも通常の教育・職歴を積み、特別なルートではなく政治の世界に入っています。
自閉症の経験は政治活動に影響を与えるのでしょうか?
はい、3名が自閉症や障害政策を積極的に取り上げ、実質的代表につながっています。
多様性の要素は政治活動にどう影響しますか?
インターセクショナリティの視点で、性別・LGBTQ+・民族など複数属性が経験や政策関与に影響すると指摘されています。

自閉症のある人は、リーダーになれないのでしょうか。

人前で話すことが苦手。
空気を読むことが難しい。
社交的ではない。

こうしたイメージは、長い間、自閉症の人たちに向けられてきました。
そして政治の世界は、とくに「対人関係」「駆け引き」「感情表現」が重視される場だと考えられています。

では、自閉症のある人が政治家になることは、本当に難しいのでしょうか。

アメリカのニューヨーク州立大学オールバニ校ロックフェラー公共政策大学院とテキサス大学ダラス校経済・政治・政策科学スクールの研究チームは、この問いに正面から向き合いました。

研究チームは、自ら自閉症であることを公表している州議会議員4名を対象に、その経歴や政治活動を詳しく調べました。
対象となったのは、ペンシルベニア州、テキサス州、ニューヨーク州の州議会議員です。

研究の目的は大きく3つでした。

第一に、自閉症のある政治家はどのような経路で当選に至ったのか。
第二に、自閉症は政治活動にどのような影響を与えているのか。
第三に、自閉症以外の属性、つまりジェンダーや人種、性的指向などが、どのように政治活動に関わっているのか。

研究方法は、インタビューではなく、公開情報の質的分析でした。
候補者の公式サイト、新聞記事、演説、メディア報道などを広く収集し、分析しています 。

まず注目すべきは、この4人が「特別な例外」ではなく、政治学でいう「適格な候補者層(eligible pool)」にしっかり属していたことです。

全員が高学歴で、大学院修了者や博士号取得者も含まれます。
弁護士、行政職員、政策スタッフなどの専門職経験もあります。
つまり、自閉症だから特別なルートをたどったのではなく、一般的な政治家と同じように、教育や職業経験を積み、段階を踏んで政治の世界に入っています。

この点は重要です。

自閉症があることが「障壁」になる可能性はあるとしても、能力や資格が欠けていたわけではない、という事実が示されています。

次に、自閉症の経験そのものについてです。

3人の女性議員は、成人してから自閉症と診断されたと語っています。
幼少期には「変わっている」「問題のある子」と見なされても、診断には至らなかったケースです。

ある議員は、アジア系であったために、言語やコミュニケーションの違和感が文化的な問題として扱われ、自閉症の可能性が見過ごされたと述べています。
別の議員は、教師から問題児扱いされ、「社会的なルールがわからない」と感じていた経験を語っています。

一方、男性議員は、州議会議員として活動を始めてから数年後に、自閉症であることを公表しました。
演説の中で、自分がアイコンタクトを取らないことや、ボディランゲージが自然でないことについて説明し、それが失礼の意図ではないと語っています。

4人全員に共通しているのは、「自分の経験を公にすることの意味」を強く意識している点です。

自分が可視化されることで、若い世代や親たちに希望を与えたい。
政治の場に多様な人がいることを示したい。

そうした姿勢が読み取れます 。

では、実際の政治活動はどうでしょうか。

4人は、州議会議員として、幅広い政策分野に取り組んでいます。
住宅政策、医療、公共安全、税制、教育、選挙制度など、一般的な州議会議員と同様に、多様なテーマを扱っています。

つまり、「自閉症問題だけを扱う政治家」ではありません。

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しかし興味深いのは、4人のうち3人(いずれも民主党所属の女性議員)が、自閉症や障害政策を積極的に取り上げている点です。

たとえば、

・視覚障害のある人に大きな文字の請求書を義務付ける法案
・自閉症と警察の接触時の支援カードの導入
・知的障害や自閉症のある人のケア労働者の賃金改善
・州議会建物のバリアフリー化

などが挙げられています。
これは政治学でいう「実質的代表(substantive representation)」の例です。

単に「自閉症のある議員がいる」という象徴的意味(記述的代表)にとどまらず、実際に政策として自閉症や障害の問題を議題に上げているのです。

ただし、4人のうち1人、保守系の男性議員は、障害政策を前面に出すことはあまりありません。
党派性の影響も示唆されています。
論文では、近年のアメリカ政治において、党派性がジェンダーよりも行動に強く影響する傾向があることにも触れています。

さらに重要なのが「インターセクショナリティ(intersectionality)」という概念です。

これは、複数の属性が重なり合うことで、異なる経験や差別が生じるという考え方です。
今回の4人のうち、3人の女性議員はLGBTQ+であることを公表しています。
1人はアジア系アメリカ人、1人はユダヤ系であることを強調しています。

つまり、自閉症はその人のアイデンティティの一部にすぎません。
ジェンダー、性的指向、宗教、民族的背景など、さまざまな要素が政治活動に影響しています。

論文の結論は明確です。

自閉症のある政治家は、リーダーになれないという固定観念を打ち破っている。
しかも、彼らは特別扱いされる存在ではなく、通常の政治過程の中で活動している。

そして、少なくとも一部の議員においては、自閉症の経験が政策に具体的な影響を与えている。

この研究は、まだ4人という小規模なケーススタディです。
著者たち自身も、今後はより多くの政治家を対象に、インタビュー調査などを行う必要があると述べています。

それでも、この論文が示しているメッセージは重いものです。

自閉症は「政治に向かない特性」ではない。
むしろ、分析的思考や細部への注意といった特性は、政策形成にとって強みになり得る。

そして何より、自閉症のある人が政治の場にいるという事実そのものが、社会の想像力を広げます。

リーダー像は一つではありません。

目を合わせなくても、
感情表現が独特でも、
社交的でなくても、

政治はできる。

この研究は、その現実を、具体的な事例を通して静かに示しています。

(出典:Societies DOI:10.3390/soc16020067)(画像:たーとるうぃず)

力強い証明、照明、となる研究ですね。

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