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自閉症と孤独のあいだでAIは何ができるのか。希望と危うさ

time 2026/02/05

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

自閉症と孤独のあいだでAIは何ができるのか。希望と危うさ

この記事が含む Q&A

自閉症のある人は孤独をどんな側面で感じやすいですか?
孤独は社会的・感情的・実存的の三つの側面を複合的に経験することが多いとされています。
チャットボット型AIは孤独の解消に有効ですか?
一時的な安らぎや気持ちの整理には役立つことがありますが、長期的な解決にはならず人との関係の代替にはならないとされます。
AI設計で特に配慮すべき点は何ですか?
神経多様性を尊重する設計と、AIを人とのつながりへ向かう足場として位置づけることが重要です。

自閉症のある大人は、社会の中で強い孤独感を感じやすいことが、これまで多くの研究で指摘されてきました。
この孤独感は、「人と関わりたくないから」生じるものではなく、「関わりたい気持ちはあるのに、環境やコミュニケーションの壁によってうまくつながれない」ことから生まれる場合が多いとされています。

近年、こうした孤独への対処として、「会話できるAI」、いわゆるチャットボット型のデジタルコンパニオンが注目されています。
人の話を聞き、共感的な言葉を返し、まるで友だちのように振る舞うAIです。

今回紹介する研究は、イギリスのクイーンズ大学ベルファストの研究チームによって行われました。
この研究は、「自閉症のある人にとって、チャットボット型のAIコンパニオンは孤独を和らげる存在になりうるのか」を、心理学、ヒューマン・コンピュータ・インタラクション、障害学などの知見をもとに多角的に検討したレビュー論文です。

研究者たちはまず、「孤独」そのものが一つの形ではないことを整理しています。
一般に、孤独には少なくとも三つの側面があると考えられています。

一つ目は、社会的孤独です。
これは、友だちや仲間の集団に属していない、つながりのネットワークがないと感じる状態です。

二つ目は、感情的孤独です。
誰かと一緒にいても、「本当に分かり合えている」「心を通わせている」と感じられないときに生じます。

三つ目は、実存的孤独です。
これは、「自分はこの世界に居場所がない」「根本的にひとりだ」という感覚に近い、より深い孤独です。

研究によると、自閉症のある人は、これら三つの孤独を複合的に経験しやすいとされています。
たとえば、子どものころからいじめや排除を経験し、友人関係が築きにくい人もいます。
大人になってからも、職場や地域でうまくなじめず、社会的孤独を感じることがあります。

同時に、「周囲に人はいるけれど、気持ちが通じていない」と感じ、感情的孤独を抱える人も少なくありません。
さらに、自分の感じ方や考え方が周囲と大きく違うと感じ続けることで、「どこにも属せない」という実存的孤独に近い感覚を持つこともあります。


こうした背景の中で、チャットボット型のAIが「話し相手」として利用され始めています。

近年のAIは、大規模言語モデルと呼ばれる技術を使い、人間らしい文章を生成します。
共感的な言葉を返したり、ユーザーの気持ちを受け止めるような応答をしたりする設計になっています。
実際に、世界中で何百万人もの人が、こうしたAIコンパニオンを利用していると報告されています。
研究者たちは、この現象を「一時的な流行」ではなく、「人がつながりを求める方法そのものが変化している可能性」として捉えています。
では、こうしたAIは、自閉症のある人の孤独を和らげるのでしょうか。

研究では、まず「短期的な効果」が示唆されています。
いくつかの先行研究では、チャットボットと会話することで、気分が落ち着いたり、孤独感が一時的に減ったりする人がいることが報告されています。
中には、自殺念慮の低下と関連したという報告もあります。
チャットボットの特徴として、

・いつでも利用できる
・否定されない
・自分のペースで話せる

といった点が挙げられます。
対面での会話が苦手な人にとって、これらは大きな安心材料になります。
相手の表情を読む必要がなく、沈黙を気にする必要もありません。
自閉症のある人の中には、こうした「予測しやすさ」や「安全さ」を特に重視する人もいます。
そのため、チャットボットとの会話が、感情的孤独を一時的に和らげる可能性があると研究者たちは考えています。

しかし、研究は同時に、重要な懸念も指摘しています。
それは、「長期的に見ると、かえって孤独が強まる可能性がある」という点です。
頻繁にチャットボットを使う人の中には、

・人との交流が減った
・AIへの依存が強まった
・以前より孤独を感じるようになった

と報告する人もいることが示されています。
チャットボットは、どれだけ人間らしく見えても、「本当の意味での相互理解」はできません。
感情を持たず、相手の人生を共に生きることもできません。
それにもかかわらず、「理解されているように感じる体験」が強くなると、人はAIに強い愛着を持つことがあります。

研究者たちは、この状態を「見かけ上の共感」と表現しています。
共感しているように見えるが、実際にはアルゴリズムによる模倣である、という意味です。
自閉症のある人は、他者の気持ちに敏感な人も多いとされています。
そのため、AIの返答が「表面的」「ずれている」と感じたとき、強い失望を覚える可能性もあります。

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さらに、この研究では、「共感の定義」そのものにも問題があると指摘されています。
多くのAIは、「定型発達の人のコミュニケーション」を基準に学習されています。
つまり、「定型発達の人にとって自然な共感の形」が前提になっています。

一方、自閉症のある人と定型発達の人の間では、感じ方や伝え方が異なることがあります。
どちらかが「欠けている」のではなく、「お互いに分かりにくい」関係である、という考え方が近年広がっています。
この視点から見ると、AIが定型発達的な共感だけを再現している場合、自閉症のある人にとっては「分かってもらえない存在」になってしまう可能性があります。

研究者たちは、チャットボットを「孤独の解決策」として扱うことには慎重であるべきだと述べています。
チャットボットは、

・一時的な支え
・気持ちを整理する道具
・練習の場

として役立つ可能性はあります。
しかし、

・人との関係の代わり
・居場所の完全な代替

にはならないと考えられます。

また、データの問題も重要です。
多くのチャットボットは、会話内容をサーバーに保存し、分析や学習に利用しています。
ユーザーは「誰にも見られていない」と感じながら、非常に個人的な内容を打ち込むことがあります。

研究者たちは、こうした状況が、プライバシーの観点から大きなリスクをはらんでいると指摘します。
とくに、自閉症のある人は、制度や組織からの不信感を抱きやすい経験をしてきた人も多く、裏切られたと感じたときの心理的ダメージが大きくなる可能性があります。

この研究が最終的に伝えているメッセージは、次のようなものです。

チャットボット型AIは、自閉症のある人の孤独に対して、「補助的な支え」にはなりうる。
しかし、それが本当に役立つためには、「神経多様性を尊重する設計」、つまり自閉症の感じ方や伝え方を前提にした設計が必要である。
そして、AIは「人の代わり」ではなく、「人とのつながりへ向かうための足場」として位置づけるべきである。

孤独は、個人の欠陥ではなく、社会や環境との関係の中で生まれるものです。
だからこそ、技術だけで解決しようとするのではなく、

・理解される場
・安心できる関係
・多様な在り方が許される社会

を同時に作っていく必要があります。
この研究は、チャットボットを否定も礼賛もせず、「慎重に、しかし現実的に向き合う」姿勢の重要性を示しています。
孤独を感じることには、理由があります。
そして、その理由に目を向けることが、支援の出発点になるのだと、この研究は伝えています。

(出典:AI & SOCIETY DOI: 10.1007/s00146-026-02877-2)(画像:たーとるうぃず)

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(チャーリー)

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