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自閉症の人の光と音。感覚過敏研究に潜んだ年齢と性別の偏り

time 2026/02/24

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自閉症の人の光と音。感覚過敏研究に潜んだ年齢と性別の偏り

この記事が含む Q&A

自閉症の人の感覚過敏はどのような刺激で起こりやすく、どれくらいの人が経験すると言われていますか?
70〜90%が音や光の過敏さを経験すると言われ、音は背景音・雑音で、光は眩しさを感じやすい刺激がつらさにつながることがあります。
研究はこれまでどんな偏りが指摘されていますか?
子ども・青年期の男性中心で、参加者の約80%が男性、光だけを扱う研究が少なく、現実環境を扱う研究が少ないと指摘されています。
環境設計の観点から、今後重視すべき点は何ですか?
環境を整えることで負担を減らせる可能性がある一方、「誰の声が研究に含まれているのか」を問い直す必要があります。

ショッピングモールのざわめき。教室の蛍光灯の白い光。エアコンの低い唸り。
まわりの人には「普通」の環境でも、自閉症のある人にとっては、体の奥まで突き刺さるような刺激になることがあります。

耳をふさぐ。目を閉じる。言葉が出なくなる。
それは甘えでも、わがままでもありません。神経のレベルで、ほんとうに強い反応が起きているのです。

自閉症のある人の70〜90%が、音や光に対して強い過敏さを経験するといわれています。
しかし、その「つらさ」は、これまでどのように研究されてきたのでしょうか。
そして、その研究は、どんな人たちを見てきたのでしょうか。

過去10年間に発表された研究を整理した今回のレビューでは、音や光に対する感覚反応を実験的に調べた29本の研究が分析されました。
そこでまず浮かび上がったのは、研究テーマの偏りです。
29本のうち、16本が音のみ、11本が音と光の組み合わせ、光だけを扱った研究はわずか2本でした。

日常生活では、LED照明のちらつきや白い強い光に苦しむ人も少なくありません。
それにもかかわらず、現代の照明環境や光過敏そのものを丁寧に扱った研究はほとんどありませんでした。

音に関する研究では、いくつか共通する特徴が見られました。
自閉症のある人は、繰り返される音に対して慣れにくい傾向があります。
多くの人が次第に気にならなくなる刺激でも、脳の反応が長く続きやすいのです。
また、不要な音をふるい分ける働き(感覚ゲーティング)に違いがあり、背景音や雑音の影響を強く受けやすいことも示されました。

一方で、すべての音が負担になるわけではありません。
滝や雨の音のような自然の音は、一般的に使われるホワイトノイズよりも穏やかな生理反応をもたらす可能性が示されました。
刺激の強さだけでなく、「どんな質の音か」が大きく関わっているのです。

視覚に関しては、瞳孔の反応の違いが報告されています。
光に対する自律神経の反応が異なり、それがまぶしさの感じやすさにつながっている可能性があります。
また、自閉症のある人は全体よりも細部に注意が向きやすい傾向があり、視覚的な錯覚に影響されにくいという結果もありました。
これは弱さというより、知覚のスタイルの違いといえるかもしれません。

さらに、音と光を同時に処理する場面では、タイミングのずれへの適応がゆっくりであることも示されています。
音声と口の動きが少しずれただけでも違和感が強くなりやすいのです。

しかし、このレビューがもっとも強く問いかけているのは、神経の仕組みだけではありません。
「誰を研究してきたのか」という問題です。

 

分析された研究の多くは、子どもや青年期の男性を中心に行われていました。
参加者の約80%が男性で、女性は平均して2割程度しか含まれていませんでした。
中高年の自閉症の人を対象にした研究もごくわずかでした。

自閉症は一生続く特性です。けれども研究は、子ども期に大きく偏っていました。
女性についても、感覚のつらさを外に出さずに「我慢する」「隠す」傾向がある可能性が指摘されていますが、その実態は十分に検討されていません。

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このレビューをまとめたのは、メキシコのバハ・カリフォルニア自治大学に所属する研究者たちです。
建築・デザイン学部と、ティフアナの医学・心理学部が協力し、医学・神経科学の視点だけでなく、「どんな環境をつくるか」という観点も含めて整理されました。
感覚過敏は、治療の問題だけでなく、環境設計の問題でもあるという立場が背景にあります。

研究の多くは、防音室の中で単純な音や光を提示する、厳密に管理された実験環境で行われていました。
しかし、現実の世界はもっと複雑です。交通騒音、教室のざわめき、LED照明のちらつき、複数の会話が重なる空間。
こうした「現実の環境」を扱った研究は、ほとんどありませんでした。

感覚過敏は「過剰反応」ではなく、刺激処理の仕組みの違いから生じるものです。
そしてその影響は、年齢や性別、環境によって変わります。

もし研究が子どもの男性だけを中心にしているとしたら、私たちは自閉症の感覚の世界のほんの一部しか見ていないことになります。

光と音の問題は、単なる感覚の話ではありません。
学校で学べるかどうか。
働き続けられるかどうか。
外出できるかどうか。

環境が変われば、負担は減らせるかもしれません。
けれども、そのためにはまず、「誰の声が研究の中に含まれているのか」を問い直す必要があります。

感覚のつらさは、目に見えにくい。
だからこそ、研究の偏りもまた、見えにくいのです。

今回の整理は、その偏りに光を当てました。
そして問いかけています。
私たちは、本当に、すべての自閉症の人の感覚の世界を見ようとしてきたでしょうか。

(出典:Frontiers in Psychiatry DOI: 10.3389/fpsyt.2026.1771956

「誰の声が研究の中に含まれているのか」を問い直す必要

むずかしい問題です。

声を出せない人たちの多くも、研究からは見過ごされてしまいがちです。

言葉のない重度知的障害の人の苦しみをひろう技術、研究。

(チャーリー)

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