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ADHDと自閉症、「診断された人」とは単に程度が重い人?

time 2026/02/26

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

ADHDと自閉症、「診断された人」とは単に程度が重い人?

この記事が含む Q&A

診断の有無はADHDと自閉症の視覚識別力にどう影響しますか?
ADHDでは斜め方向の識別が臨床診断ありで難しく、自閉症では縦方向の識別力が診断ありで高くなる場合がある。
同じ特性得点でも診断の有無で認知・感覚のあり方は変わるのでしょうか?
はい、診断を受けている群と受けていない群では識別パターンに質的な違いが生じることがある。
この研究の意味は何ですか?
診断は単なる点数やラベルではなく、生活への影響や構造を含む総合評価であり、ADHDと自閉症で異なる意味を持つ可能性を示した。

私たちは、世界をどれくらい細かく見ているのでしょうか。

まっすぐな線が、ほんの少しだけ傾いている。
縦なのか、それともわずかに右へ、あるいは左へ傾いているのか。
その違いはほんの数度、あるいはそれ以下かもしれません。
それでも私たちの視覚は、その違いを驚くほど正確に捉えています。

こうした「ごく基本的な見え方」に、ADHDや自閉症では違いがあるのではないか。
これまでにも、そうした可能性を示す研究はありました。
しかし、研究ごとに結果が食い違うことも少なくありませんでした。
ある研究では自閉症の人は視覚の識別力が高いと報告され、別の研究では差がない、あるいはむしろ低いという結果も出ていました。

なぜ、こんなにも結果が揺れるのでしょうか。

今回の研究は、その原因の一つとして「診断」という要素に注目しました。
ADHDや自閉症は、最近では連続体として理解されることが増えています。
誰もがある程度の特性を持ち、その強さが高まると診断基準を満たす、という考え方です。
もしこの考えがそのまま当てはまるなら、診断を受けている人と受けていない人の違いは「程度の差」にすぎないはずです。

しかし、本当にそうなのでしょうか。
診断とは単に「点数が高い」ことなのでしょうか。それとも、そこには質的な違いが含まれているのでしょうか。

研究には152人の成人が参加しました。
参加者は4つのグループに分けられました。
ADHDで臨床診断を受けている人、ADHD特性は高いが診断はない人、自閉症で臨床診断を受けている人、自閉症特性は高いが診断はない人です。

ここで重要なのは、診断あり・なしのペアが、質問紙で測定した特性の得点において統計的にほぼ同じになるように調整されている点です。
つまり、「特性の強さ」は揃えられています。違いは、正式な臨床診断を受けているかどうかだけです。

参加者は、視覚の「方向識別課題」を行いました。

画面に縞模様のグレーティング(縞状のパターン)が表示され、まず基準となる線が提示されます。
その後、ほんの少しだけ傾いた線が表示されます。
参加者は、それが右に傾いているか、左に傾いているかを判断します。

傾きの違いは段階的に変化し、正答が続けば差は小さくなり、誤答が出れば差は大きくなります。
最終的に、どの程度の角度差まで正確に識別できるかが測定されました。
縦(0度)と斜め(45度)の2条件があり、それぞれで識別のしやすさが調べられました。

結果は、ADHDと自閉症で異なるパターンを示しました。

ADHDでは、縦方向の識別には診断の有無で有意な差はありませんでした。
しかし斜め方向では、臨床診断を受けている人のほうが識別の感度が低く、より大きな角度差が必要でした。
つまり、特性の得点が同じであっても、診断を受けているADHDの人のほうが、斜めの微細な違いを見分ける力がやや弱かったのです。

このパターンは、診断群のほうがより強い困難を示すという意味で、連続体的な理解とある程度整合的です。
違いは主に「量」の問題のように見えます。

一方、自閉症では逆の結果が現れました。
縦方向の識別において、臨床診断を受けている人のほうが、診断のない高特性群よりも高い識別能力を示しました。
斜め方向では有意な差はありませんでした。

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特性の点数が同じでも、診断を受けている自閉症の人のほうが、縦の微細な違いをより正確に見分けていたのです。
これは単純な「重症度の差」では説明しにくい結果です。
むしろ、診断を受けている群には、特性の高さとは別の質的な構造がある可能性を示唆します。

この研究は、イギリスのシェフィールド大学(University of Sheffield)心理学部の研究チームによって行われました。
成人のADHDと自閉症を同じ枠組みで比較し、さらに特性の得点を厳密に揃えたうえで診断の影響を検証した点が大きな特徴です。

研究チームは、診断とは単に質問紙の得点が一定のラインを超えた状態ではない可能性を指摘しています。
臨床診断では、発達歴、日常生活への影響、臨床面接、観察情報などが統合されます。
質問紙では捉えきれない症状の配置や組み合わせ、生活上の困難の質が含まれています。

ADHDでは、診断群がより困難を示すという「量的」なパターンが見られました。
一方で自閉症では、診断群が一部の条件で優れた識別能力を示すという、単純な連続体では説明しにくい「質的」な違いが見られました。

この結果は、ADHDと自閉症が感覚処理のレベルで共通点を持ちながらも、同一の構造ではない可能性を示しています。
少なくとも視覚のごく基礎的な処理においては、両者は異なるパターンを描きました。

また、この研究は「自己申告の特性」と「臨床診断」は同じではないことも示唆しています。
特性の点数が同じでも、診断を受けている人と受けていない人では、認知や感覚のあり方が異なる場合があるのです。

診断とは、単なるラベルでも、単なる点数でもありません。
それは症状の強さだけでなく、構造や配置、生活への影響を含んだ総合的な評価です。

私たちはよく、「どこまでが特性で、どこからが診断なのか」と考えます。
しかし今回の研究は、問いの立て方そのものを少し変えます。
診断は連続体の端にあるだけなのか。
それとも、連続性の中に質的な転換点があるのか。

少なくとも視覚の微細な識別という非常に基本的な機能において、診断は意味を持っていました。
そしてその意味は、ADHDと自閉症で異なる形を取っていました。

世界の見え方は、人それぞれです。
その違いは、弱さとしてだけでなく、鋭さとしても現れます。
今回の研究は、その多様性を、精密な実験を通して示しています。

(出典:Frontiers in Psychiatry DOI: 10.3389/fpsyt.2026.1754032)(画像:たーとるうぃず)

たしかに、グラデーション、程度の差という認識では、「質の違い」という視点がまったくなくなってしまいます。

診断とは、そんな簡単なものではないのですね。

自閉症スペクトラム障害はさらに4種類に分けられる。研究

(チャーリー)

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