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ADHDの大学生、中退のリスクを最もかかえるタイプとは?

time 2026/02/25

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

ADHDの大学生、中退のリスクを最もかかえるタイプとは?

この記事が含む Q&A

ADHDのタイプ別で大学生の困難はどのように分かれるの?
コンバインド型が非適応的先延ばし・エゴ枯渇・中退意図のリスクが高い一方、他のタイプは異なる特徴を示します。
先延ばしにはどんな種類があり、タイプごとにどう影響するの?
非適応的先延ばしは悪影響、適応的先延ばしは締切前の集中を高める戦略的手段で、コンバインド型・不注意型は適応的先延ばしが低い傾向です。
研究からの支援の示唆は何ですか?
症状スコアだけでなく先延ばしの種類・完璧主義の質・エゴ枯渇の程度を評価し、疲れを軽視せず支援を検討することが重要です。

大学生の中には、「やる気がないわけではないのに、なぜか動き出せない」「締め切り直前になるまで集中できない」「頭がすぐに疲れてしまう」と感じている人がいます。

その背景に、ADHDの特性があるかもしれない――。

今回ご紹介する研究は、ハンガリーのセゲド大学教育学博士課程および行動科学部の研究チームによって行われました。
大学生1,879人を対象に、ADHDの症状の現れ方によってどのように学業上の困難が異なるのかを詳しく調べた、大規模な研究です。

この研究が注目したのは、単なる「症状の強さ」ではありません。
どのタイプのADHD特性をもつ学生が、どのような心理的負担や行動パターンを示しているのかを、より細かく分類して分析した点にあります。

研究では、ADHD症状をもとに学生を4つのグループに分けました。

1つ目は「コンバインド型」。
不注意と多動・衝動性の両方が高いグループです。

2つ目は「不注意型」。
集中の難しさが中心です。

3つ目は「多動・衝動型」。
落ち着かなさや衝動性が中心です。

4つ目は「低症状群」。
いずれの症状も比較的低いグループです。

そして研究者たちは、この4つのグループが、次の6つの指標でどう違うかを比較しました。

  1. 非適応的先延ばし(いわゆる悪い先延ばし)
  2. 適応的先延ばし(戦略的な先延ばし)
  3. 非適応的完璧主義
  4. 適応的完璧主義
  5. エゴ枯渇(自己制御エネルギーの消耗感)
  6. 中退意図(大学をやめたいと考える頻度)

まず明らかになったのは、「コンバインド型」が最も困難を抱えていたという事実です。

コンバインド型の学生は、非適応的先延ばしが最も高く、エゴ枯渇も最も強く、中退意図も最も高い水準でした。

エゴ枯渇とは、「自己コントロールのエネルギーが使い果たされた感覚」です。
長時間集中し続ける、感情を抑える、衝動を我慢する。そうした努力を重ねると、心のエネルギーが消耗していきます。

コンバインド型の学生は、この消耗感が非常に強かったのです。

つまり彼らは、
「やらなければならないことがある」
「でも始められない」
「始めてもすぐ疲れる」
「疲れている自分を責める」
という悪循環に陥りやすい状態だったと考えられます。

さらに重要なのは、「先延ばし」にも違いがあった点です。

一般に、先延ばしは悪いものとされます。
しかし研究では、先延ばしには2種類あるとされています。

ひとつは「非適応的先延ばし」。
やるべきことを避け、結果的に悪影響を受けるタイプです。

もうひとつは「適応的先延ばし」。
あえて締め切り前のプレッシャーを利用し、集中力を高める戦略的なタイプです。

今回の研究では、コンバインド型と不注意型の学生は、適応的先延ばしが低い傾向にありました。

一方で、多動・衝動型と低症状群は、適応的先延ばしが高かったのです。

これは非常に興味深い結果です。

多動・衝動型の学生は、締め切りという外部の圧力を利用して集中を高める戦略をとっている可能性があります。
時間的プレッシャーが「外部からの刺激」として機能し、行動を引き出しているのかもしれません。

しかしコンバインド型では、その「ラストスパート」がうまく機能しない可能性があります。
不注意と衝動性が同時に強いと、締め切り直前の集中も断片化しやすいのです。

完璧主義についても違いがありました。

コンバインド型は、非適応的完璧主義が最も高いだけでなく、適応的完璧主義も高い傾向がありました。

つまり「理想は高い」「でも思うようにできない」「その結果、自分を強く責める」という状態が起きやすいのです。

これは、「やる気がない」どころか、むしろ「理想が高すぎる」状態とも言えます。

しかしその理想は、自己批判と結びつきやすい。
そしてその自己批判がエネルギーを消耗させ、さらに行動を難しくする。

こうして、エゴ枯渇が進みます。

研究では、エゴ枯渇の差が最も大きな効果量を示しました。
コンバインド型は、低症状群よりもはるかに強い消耗感を報告しています。

そして、この心理的疲労は「中退意図」とも強く関連していました。

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中退意図とは、実際に退学する前段階のサインです。
「休学を考えた」「やめようかと思った」という気持ちです。

コンバインド型は、この中退意図が最も高く、低症状群との差は明確でした。

ここで重要なのは、年齢差はほとんど見られなかったという点です。

18〜24歳の学生と25歳以上の学生の間で、大きな違いはありませんでした。

一方で、性差は小さいながら存在しました。
女性は完璧主義とエゴ枯渇がやや高い傾向にありましたが、その効果は小規模でした。

この研究が伝えているのは、「ADHD=ひとつの顔ではない」ということです。

特にコンバインド型は、
・非適応的先延ばし
・完璧主義による自己批判
・強いエゴ枯渇
・高い中退意図

という組み合わせを示しました。

これは、単なる「集中力の問題」ではありません。
自己制御のエネルギーが常に消耗しやすい状態なのです。

研究者たちは、支援のあり方にも示唆を与えています。

症状スコアだけを見るのではなく、
・どのタイプの先延ばしか
・完璧主義はどの質か
・どれだけ消耗しているか

を評価することが重要だと述べています。

すべての先延ばしを「悪」と決めつけるのではなく、戦略的な先延ばしを見極めること。
すべての完璧主義を問題視するのではなく、自己批判と結びついているかを確認すること。

そして何より、「疲れている」という感覚を軽視しないこと。

ADHDの困難は、目に見えにくい自己制御のコストとして現れることがあります。

「怠けている」のではない。
「努力していない」のでもない。
むしろ、人一倍エネルギーを使っている可能性があります。

今回の研究は、大学生という具体的な文脈の中で、その構造を丁寧に示しました。

ADHDは単なるラベルではありません。
症状の組み合わせによって、心理的負担の質が変わります。

コンバインド型は、最も強い遅延・消耗・離脱リスクを抱えていました。

しかし同時に、他のタイプには戦略的な強みも見られました。

重要なのは、「何が弱いか」だけでなく、「どの仕組みがどう働いているか」を理解することです。

大学生活は、自己管理の連続です。
その連続の中で、どこに負荷が集中しているのか。

この研究は、その負荷の地図を描いたと言えるかもしれません。

そしてその地図は、「支援のタイミング」を示す手がかりにもなります。

中退を考える前に。
完全に燃え尽きる前に。

違いを、構造として理解すること。

それが、ADHDのある学生の学びを支える第一歩なのかもしれません。

(出典:scientific reports DOI: 10.1038/s41598-026-41256-1)(画像:たーとるうぃず)

つまり、

「集中が続かない」「落ち着きにくい、衝動的」の両方が同時に強い場合には、
やるべきことを避け、結果的に悪影響を受ける先延ばしを行い、完璧主義による自己批判も行い、
自己コントロールのエネルギーが使い果たされてしまい、中退のリスクが高くなる。

とのこと。

せっかく苦労して入ったのですから、中退しないように、自己理解、まわりの理解、支援が進むことを願います。

ARと生成AIで支えるADHD大学生の学習支援の可能性

(チャーリー)

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